茨城県産婦人科医会などが市民公開講座を開催
村中璃子「10万個の子宮」 5月20日、日本産婦人科医会、茨城県産婦人科医会、「守れる命を守る会」の共催による市民公開講座「子宮頸がんをなくそう・子宮頸がんとHPVワクチンの正しい知識」が開催されました。井手よしひろ県議も茨城県議会公明党を代表して出席しました。この公開講座には、昨年世界的に権威あるジョン・マドックス賞を受賞した村中璃子さんが「ワクチンで防げる『10万個の子宮』」とのテーマで講演したのを始め、参議院議員三原じゅん子さん(演題「守ってあげたいいのちを懸けて」)、日本産婦人科医会常務理事鈴木光明氏(演題「子宮頸がんの現状と予防に向けて」)が登壇しました。
 子宮順がんはHPV(ヒト乳頭腫ウイルス)の感染によって発症します。毎年約3000人の女性が命を落とし、1万人の女性が子宮を摘出されています。しかも、年々、罹患率も増加し、低年齢化しています。罹患者の年齢と妊娠適期の年齢がほぼ同じになってきたため“マザー・キラー”とも言われています。
 HPVは、子宮頸がんばかりでなく、腔がん、肛門がん、直腸がん、咽頭がん等の原因にもなっています。従って、外国では女性ばかりでなく男性にも接種され始めています。
 これらの癌を予防するHPVワクチンの有効性と安全性については、世界中から科学的なエビデンスが多数発表され、WHOや世界各国の子宮頸がん予防ガイドラインでは必須の手段とされています。
 日本では、2013年4月に小学6年生から高校1年生の女子を対象に、公費(無料)で打てる定期接種となりましたが、注射後に痛みやけいれんなど多様な症状を訴える声が相次ぎ、わずか3カ月後の6月に国は積極的に国民に勧めること(積極的な勧奨)を停止しました。
 この頃からマスメディアは、けいれんや痛みを訴える女の子の写真や動画を積極的に取り上げ、「怖いワクチン」というイメージが世の中に広く浸透。一時、7割近くまであった接種率は、現在1%を割り込み、接種する人はほとんどいなくなってしまいました。反面、罹患率も増加しています。
 公開講座では、3人の発表者が、医師、政治家(子宮頸がんサバイバー)、ジャーナリストという異なった視点から、日本におけるHPVワクチン問題の本質について語りました。
 国は科学的エビデンスに基づき、この問題を国民にわかりやすく説明すべきです。また、今でも定期接種として接種を希望されている12歳〜15歳の対象女性は、無料で受けることを再確認しなくてはなりません。茨城県内のすべての市町村で、対象者は無料で接種できるのです。
 HPVワクチン接種により多くの子宮頸がんは予防できます。守れる命を守るために、ワクチンや子宮頸がん検診について、正しい知識と正確な情報を発信していく必要を改めて実感しました。
 写真は、村中璃子さんの近著「10万個の子宮」です。少しショッキングなタイトルの本ですが、その「はじめに」を引用します。
 最初に日本だけで毎年、3000の命と1万の子宮が失われていると述べた。日本では国家賠償請求訴訟が終わるまでには10年を要すると言われる。国賠が終わるまでは、接種再開を決断できる首相や官僚は出ないだろうとも言われている。よって、日本政府の言う「一時」差し控えがもし10年であるならば、日本の産婦人科医たちは、あと10年、あと10万個の子宮を掘り続けることになる。ひょっとすると若い産婦人科医は、ただ「子宮をとり続ける」と言っただけなのかもしれない。しかし、私には柔らかな女性たちの体から「掘り」出され、持ち主を失って、ただの「もの」となってしまった無数の子宮が見えた。 掘り出した10万個の子宮を想像してほしい。そして、その持ち主である女性、そこから生まれ母を失った子どもたち、そこから生まれてくるはずだった子どもたちを。さらに想像してほしい。日本から世界へと広がったワクチン不安、その結果、世界中で失われることになった、守ることのできたはずの命と子宮を。