ドクターヘリを調査する高崎進県議
 5月22日、井手よしひろ県議と高崎進県議は、国立病院機構水戸医療センターを訪ね、山口高史院長、安田貢救急医療部長より、ドクターヘリの現状についてお話を伺い意見交換を行いました。
 茨城にドクターヘリが誕生して8年。現在、水戸医療センターが行っている医師2人による出動体制は、全国からも注目を浴びています。格納庫の整備や県民へのドクターヘリの啓発など貴重なご意見を伺いました。

ドクターヘリ2010年に就航し8年目、県議会公明党が強力に推進
 茨城県のドクターヘリは、2010年7月1日に運航がスタートしました。基地病院は、水戸医療センター(500床)と水戸済生会病院(500床)の輪番制(土日月曜日と火水木金曜日の輪番制)です。主な使用機体は、川崎重工製のBK117C−2、巡航速度は250km/h、最高速度270km/h、定員7名(患者含)、装備は双発ターボジェットエンジン、オートパイロット・GPSなどを搭載しています。20分以内でほぼ茨城県全域が出動可能で、渋滞もない時速200km以上のスピードがヘリ救急の特徴です。
 茨城県ドクターヘリの運航を担当しているのは、朝日航洋株式会社。朝日航洋は1955年に創業し、富士山レーダードームの輸送や黒部第四ダムの建設支援を行うなど、ヘリコプターとビジネスジェット機を活用して社会と産業の発達に貢献をしている企業です。航空医療搬送の現場では多くの運航実績を築き、モーターレース、国際会議開催地での救急ヘリコプターとしてのスタンバイ、さらには2地点間の患者搬送を目的とした個人チャーターなど、幅広く航空医療事業を展開しています。その他、地上からの接近が困難な山間地や海上への物資輸送、航空撮影や報道取材・旅客輸送といったフィールドで幅広い航空サービスを展開しているほか、業界で初めて認定操縦訓練生制度を開始し、将来を担う操縦士の育成にも力を入れています。これまでの運航で養ったノウハウで茨城県ドクターヘリ運航におきましても、運行開始以来、安全運航を続けています。茨城県のドクターヘリの運行費用は年間約2億円です。
 
全国的にも注目を浴びるフライトドクター2人体制
 現在、水戸医療センターでは、フライトドクターが12名、フライトナースが6名の体制でドクターヘリを運用しています。フライトドクターのうち救命救急センター所属が6名、他は、救急に関わりたいと、フライトドクターを希望する循環器内科、麻酔科、小児内科、外科、脳神経外科など、様々な診療科の医師がわざわざフライトドクターの資格を取得して乗務しています。心臓や循環器専門の医師も、病院に収容される前に救える命があるのを痛感し、ドクターヘリに乗って、あらゆるところに初期治療に出動しています。若いうちにフライトドクターを経験し、病院前救護がいかに大事かを知る、そんな志の高い医師が水戸医療センターに集まっているとのことです。
 水戸医療センターでは、全国でも珍しい2フライトドクター制(原則、内科系1名外科系1名)で運用しています。重複要請時には、患者さんの状況によって1人のドクターを最初の現場に降ろし、ドクターカーでの陸送として、もう1人のドクターが次の事案に飛ぶという戦略も可能です。また、フライトナースは、多数傷病者事案にナース2名で現場出動できるように、セカンドナースも地上待機しています。
 茨城県では、限られた医療資源を有効的に使うために、水戸医療センターと済生会病院の2つの病院で1週に半分ずつの2基地病院の運航体制をとっています。運航会社(朝日航洋)がヘリの移動などの大変ですが、導入から8年近くがたちますので、システムは定着してきました。500床クラスの2基地病院で運航しているので、Uターンベッドが1000床あるのと同じ認識が持てると考えられます。関係部署でコミュニケーションをとらなければなりませんが、定期的に済生会病院、茨城県担当部局である医療政策課、運航会社の4者で定期的にドクターヘリ運営会議を開くことになっています。ドクターヘリ開始当初は2か月に1回、最近は運航が順調になったので、3か月にI回程度開催し、連携を図っています。 
 2年前に県内24消防本部中20消防本部の指令業務を統合した共同指令センターが、県のほぼ中央部水戸市内原にできました。このことによって、ドクターヘリを呼ぶ事案なのか、他の対応を考えるべきなのか、オペレーションが均等化され、ドクターヘリの運行にはプラスに働いています。

ドクターヘリの運航実績
累計出動件数が5,000件を超える
 2017年度(平成29年度)のドクターヘリの運行状況は、運航開始からの総要請件数が7,000件を超え、5,000件目の出動を今年1月28日に達成しました。当然、この間に事故は一件もありません。
 2012年度1,090件をピークに減少していた総要請件数は2015年度から再び増加に転じ、昨年度は総要請件数1,147件と過去最高となりました。地域別運航件数と合わせてみると、県北地域は前年並、県央が減少、鹿行前年並み、県南は増加、県西は増加となり、5地域中2地域で要請、出動とも増加、2地域でほぼ同様、1地域で減少しています。これは、いばらき消防指令センターが運用開始から2年が経過し、全県を網羅するドクターヘリにとっては要請元である指令業務が安定・均一化してきた結果と考えられます。
 また、従来から指摘されていたドクターヘリ近隣地域利用の比率が変化し、本来の意味での全県利用の傾向でてきました。
 総出動数は、要請件数同様に2012年度852件をピークに減少していましたが、2015年度をボトムに増加がみられ、昨年度は728件(歴代2番目)となりました。出動内容内訳は現場出動676件(92.9%)、施設間搬送52件でほぼ年間50件程度は同様でした。
 要請があったものの出動できなかった未出動は、天候不良と重複要請が2大理由でした。昨年10月は極度の天候不良が続き要請件数95件に対し、未出動54件、出動41件と唯一、未出動件数が出動件数を上回りました。
 年間を通じても天候不良144件は前年60件、前々年73件とくらべると約2倍で、天候不良により現場出動がかなわなかった無念な時期があった年といえます。
 次に重複要請は2015年の3倍近くの156件に増加し、大きな問題です。従来からの北関東3県連合や千葉県北総病院、福島ドクターヘリとの連携ほか、2015年から県や関係者で検討されている重複要請対策が近々実働することに期待されます。
 一方、機体不具合による未出動は2年前の半分以下で年々減少しています。運航会社である朝日航洋関係者の日頃の整備や機体配置、安全運航に対する努力の成果と考えられます。