6月6日、「所有者不明土地」を有効利用するための特別措置法が、参議院本会議で、自民、公明などの賛成多数で可決、成立しました。
公園や広場、駐車場など公共目的での利用を最長10年間認める新制度の創設などが柱です。来年(2019年)6月までに施行されることになっています。
「所有者不明土地」は、人口減少や高齢化に伴い年々増加していて、その広がりは、民間の研究会の推計で、すでに全国で九州の面積を超えているとされています。現行の法律では、こうした土地であっても自治体などが買収するには、所有者全員の了解が必要なため、公共事業がストップしたり、荒れた土地が増えるなどの問題が各地で起きています。
新制度では、市町村や民間企業、NPOなどが所有者の分からない土地の使用を希望する場合、一定の公共性が認められれば、都道府県知事が最長10年間の使用権を設定できることになります。所有者が現れて明け渡しを求めた場合は、使用権の期間終了後に原状回復して返還します。所有者からの異議がなければ延長も可能としました。
土地が申請通りに使われない場合は、知事が原状回復を命じ、従わなければ1年以下の懲役か30万円以下の罰金を科すことができます。
特措法では、国や自治体が公共事業を行うに当たり、不明地の所有権を強制的に取得する収用手続きの簡素化も盛り込みました。
法案を審議した衆参の国土交通委員会は、不明地の発生抑制に向け、相続登記を促す仕組みの検討などを政府に求める付帯決議を採択。政府は今後、相続登記の義務化や所有権を手放せる制度などを議論し、2020年までに関連制度を改正する方針です。
公明党は、所有者不明土地の解決に向けた取り組みを一貫して推進。対策プロジェクトチームが司法書士団体などと意見交換を重ね、所有者探索の仕組みの拡充などを訴えてきました。
この特措法によって、これまで手がつけられなかった所有者不明土地の利用が、一定程度進むと評価する意見があります。一方、さらなる抜本的な対策が必要だと指摘する意見が専門家の間にはあります。
民間の研究会は、このまま対策が進まなければ2040年には、その面積が今より1.75倍の720万ヘクタールに広がり、経済的な損失も年間3100億円まで膨らむと試算しています。
政府は相続の際の登記の義務化や、所有者が見つからない場合、所有権が放棄されたと見なし、活用可能とする制度改正を検討しています。憲法が保障する個人の「財産権」を侵害するおそれもあり、慎重な検討を求める意見もあります。
所有者不明土地とは?
「所有者不明土地」とは、登記簿に記された所有者が死亡したあとも所有権を相続した人が登記簿の所有者を更新しないまま放置することによって生じます。日本では登記が義務化されていないため、こうしたことがたびたび起きるとされています。
この状態が2代、3代と繰り返されると、所有権を持つ相続人がねずみ算のように増えていきます。建物の建て替えや土地の売却には相続人全員の承諾が必要なため、一部でも連絡が取れなくなるとそれができなくなるのです。