6月27日午後、茨城県は筑波山麓の太陽光発電設備の設置許可申請の不許可を取り消し、許可するよう求めた訴訟について、東京高裁に控訴しました。地元住民や茨城県議会公明党は、県に対して控訴を強く求めていました。
6月15日水戸地裁は、原告の建設業者の訴えを認める判決を下し、茨城県が敗訴。6月29日の控訴期限を前に、県は控訴を決断しました。
筑波山の景観保護エリア「水郷筑波国定公園」内への太陽光発電所の建設計画を巡り、つくば市の建設業者が県に対し、太陽光発電設備の設置許可申請の不許可を取り消し、許可するよう求めたものです。この裁判は、太陽光発電所設置予定の民有地が筑波山山頂などから展望する場合、眺望の妨げになるか否かが最大の争点となっていました。水戸地裁の岡田伸太裁判長は「眺望に著しい支障を及ぼすとは認められない」として業者側の請求通り、県の処分を取り消し、設置を許可するよう判決を下しました。
岡田裁判長は、周辺には複数の建物が存在しており、民有地が眺望に占める割合はわずかだとして、「影響は部分的なものにとどまる」と判断。また、業者が樹木の一部温存や植樹をしたり、太陽光パネルの高さを一定程度に抑えたりするなど、景観への影響を軽減する措置を予定していることも考慮した判決なりました。その上で、岡田裁判長は県が業者の申請を許可しないことについて「裁量権の範囲を超え、濫用となると認められる」と結論付けました。
この水戸地裁の判断に対して、地元住民や温泉組合などは、6月26日、県に控訴するよう求める要望書を小野寺俊副知事に提出しました。
要望書を提出したのは、筑波山麓区長会、筑波山神社、筑波山温泉旅館協同組合、筑波山宮前振興会、NPO法人つくば環境フォーラムの5団体です。
5団体は太陽光発電施設の設置で、「景観が損なわれることによる観光客の減少、土砂災害の危険性が高まる恐れがある」などと、あらためて訴え、県に控訴するよう要望しました。
さらに、6月27日午前、井手よしひろ県議、田村けい子県議ら茨城県議会公明党議員会は、「筑波山麓の太陽光発電施設の建設差止訴訟の控訴を求める要望書」を、茨城県県民生活環境部の斉藤章部長に提出しました。
要望書の内容は以下の通りです。
筑波山麓の太陽光発電施設の建設差止訴訟の筑波山麓の太陽光発電設備の設置許可申請の不許可を取り消し、許可するよう求めた訴訟の、水戸地裁の判決に対し、上級裁への控訴を強く求めます。
控訴を求める要望書
「水郷筑波国定公園」内への太陽光発電施設の建設に関し、地域住民は、「観光地としての景観」や「土砂災害の危険」等に対し、大きな危惧を抱いております。
3年前、筑波山麓の自然公園法の特別区域外で、太陽光発電施設が設置された周辺地域では、設置後、大雨時に濁流の鉄砲水が発生し、一般家庭にも土砂が流れ込み、道路が長時間、使用不能になるなど被害が発生しました。
茨城意県民の宝である筑波山の貴重な自然環境を守り、美しい景観を維持するため、また、土砂災害や浸水被害を防止するためにも、今回の判決に対し、控訴していただきますよう要望いたします。