7月10日、井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党議員会は、東海村の「いばらき中性子医療研究センター」を訪ね、茨城県が筑波大学、高エネ研などと一体となって開発を進めているBNCTを視察しました。筑波大学陽子線医学利用研究センター中性子医学研究開発室・熊田博明室長、高エネ研(KEK)J−PARCセンター加速器ディビジョン・内藤富士雄副ディビジョン長らから説明を受け、今後の展開について意見交換しました。
BNCT(ホウ素中性子捕捉療法:Boron Neutron Capture Therapy)は、手術や従来の放射線では治療することが難しいがんに対して有効な新しいがん治療として注目を集めています。
また、体への負担が少なく、細胞単位にピンポイントで効果があることも従来のがん治療とは異なる大きな特徴です。
この次世代がん治療・BNCTの開発実用化は、茨城県、つくば市及び筑波大学、高エネ研が取り組んでいる「つくば国際戦略総合特区」の先導的プロジェクトの1つとして行われています。
iBNCTの特徴と今後の展開
X線や陽子線、重粒子線などの一般的な放射線治療では、放射線が直接がん細胞を攻撃することでがん細胞を死滅させます。これに対してBNCTは、放射線(中性子)と薬剤(ホウ素)の組み合わせで効果を発揮することが大きな特徴です。
ホウ素薬剤はがん細胞に集積する性質を持っていて、この薬剤を投与した患者のがん患部に中性子を照射することで発生するα(アルファ)線とリチウム粒子が、がん細胞だけを破壊します。
BNCTは、手術や従来の放射線治療では難しいがんに非常に効果が高く、体への負担も少ないためQOLも高い治療法です。
現在、加速器の装置がほぼできあがり、中性子ビームを安定して発生させることができるようにってきました。細胞実験や動物実験での安全性確認が進んでいます。2019年中に患者さんの治療(第1相治験)を行えるよう開発を進めています。
BNCTが得意とするがんの中でも悪性脳腫瘍は、外科手術や他の放射線療法では治療が難しい場合が多いので、完成したら治療を受けたいと思っている患者はたくさんいます。すでに京都大学、福島県総合南東北病院、大阪医科大学関西BNCT研究センターの3施設が稼動しています。
茨城県が開発しているBNCTは、直線型の加速装置(リニアック)を使っていることが大きな特長です。
BNCTの研究は、東海村の実験原子炉JRR−4を使って1999年から臨床研究が続けられていました。しかし、原子炉だと場所も限られ、世界でBNCT用に稼働している原子炉は数カ所しかありません。JRR−4は、東日本大震災の際に被災し復旧されていません。また、日本では新たな原子炉の設置は難しくて、治療効果があることが実証されているのにもかかわらず、BNCTを行うことができません。
そこで、加速器で高速の陽子ビームを発生させ、ベリリウムやリチウムなどの標的材に当てて、中性子を発生させる形式のBNCTが、現在世界的にも開発の中心となっています。
加速器型のBNCTは、わざわざ原子炉のある場所に行かなくても、医療機関の中で治療ができるようになり、患者とってBNCT治療を受けやすい環境ができます。そのことによって、先進医療から保険医療へと進化することが可能となりました。
茨城県が開発している直線型加速器型のBNCTは、病院に併設することを前提に作られています。先行している京大、福島南東北病院、関西BNCTセンターは、住友重工が開発した小型のサイクロトロン(円形加速器)を使っています。サイクロトロンの製造技術は、直線型加速器に比べてすでに熟成されてものです。コスト的にも、安定性も、一歩先を行っています。
しかし、直線加速装置によるBNCTには、“低放射化”という大きなアドバンスがあります。サイクロトロンを使ったBNCTの場合、陽子線のエネルギーが高いため、機器自体や施設(建物)が放射線を発するようになってしまいます。例えば、京大のBNCTはビーム照射終了直後、500mSV/hの残留ガンマ線量ありますが、茨城県が開発ししているBNCTの計算値は、0.59mSV/h程度です。“低放射化”によって、患者や医療従事者の被爆リスクを低減でき、照射直後に速やかに照射室に入所できることから、治療の回転率が上がり、不測の事態にも対応できるようになります。さらに、建物の放射線防護費用(デコミッショニング費用)の削減や、廃棄手続きや作業期間を大幅に短縮することが出来ます。結果的に、医療施設としての設備投資やランニングコストを引き下げることにつながります。
こうした特徴を持った茨城型のBNCTを、いばらきBNCTとイメージ付けするために“iBNCT”と呼んでいます。
BNCT施設の需要は、日本国内に50施設以上あるといわれています。少なくとも各都道府県のがん拠点病院には導入されていくのではないかと推計されます。
先行するBNCT施設は住友重工が開発のイニシアティブを取ってきました。企業の販売戦略が、早期の立ち上がりを推進してきました。iBNCTは高エネ研、筑波大学、自治体という官制のプロジェクトで進められてきました。開発の途中で、リニアックを製造した三菱重工が医療分野から徹底するという出来事もありました。
今後も、装置を作るのには非常に膨大なコストがかかります。開発資金を確保するのも大変ですが、開発後に全国、全世界にこのiBNCTを販売展開するという、大きなミッションが待ち受けています。
県民の命と健康を守るという使命と、新たな産業創造という使命が、iBNCTにはあることを改めて確認しました。
茨城県が開発しているBNCTは、直線型の加速装置(リニアック)を使っていることが大きな特長です。
BNCTの研究は、東海村の実験原子炉JRR−4を使って1999年から臨床研究が続けられていました。しかし、原子炉だと場所も限られ、世界でBNCT用に稼働している原子炉は数カ所しかありません。JRR−4は、東日本大震災の際に被災し復旧されていません。また、日本では新たな原子炉の設置は難しくて、治療効果があることが実証されているのにもかかわらず、BNCTを行うことができません。
そこで、加速器で高速の陽子ビームを発生させ、ベリリウムやリチウムなどの標的材に当てて、中性子を発生させる形式のBNCTが、現在世界的にも開発の中心となっています。
加速器型のBNCTは、わざわざ原子炉のある場所に行かなくても、医療機関の中で治療ができるようになり、患者とってBNCT治療を受けやすい環境ができます。そのことによって、先進医療から保険医療へと進化することが可能となりました。
茨城県が開発している直線型加速器型のBNCTは、病院に併設することを前提に作られています。先行している京大、福島南東北病院、関西BNCTセンターは、住友重工が開発した小型のサイクロトロン(円形加速器)を使っています。サイクロトロンの製造技術は、直線型加速器に比べてすでに熟成されてものです。コスト的にも、安定性も、一歩先を行っています。
しかし、直線加速装置によるBNCTには、“低放射化”という大きなアドバンスがあります。サイクロトロンを使ったBNCTの場合、陽子線のエネルギーが高いため、機器自体や施設(建物)が放射線を発するようになってしまいます。例えば、京大のBNCTはビーム照射終了直後、500mSV/hの残留ガンマ線量ありますが、茨城県が開発ししているBNCTの計算値は、0.59mSV/h程度です。“低放射化”によって、患者や医療従事者の被爆リスクを低減でき、照射直後に速やかに照射室に入所できることから、治療の回転率が上がり、不測の事態にも対応できるようになります。さらに、建物の放射線防護費用(デコミッショニング費用)の削減や、廃棄手続きや作業期間を大幅に短縮することが出来ます。結果的に、医療施設としての設備投資やランニングコストを引き下げることにつながります。
こうした特徴を持った茨城型のBNCTを、いばらきBNCTとイメージ付けするために“iBNCT”と呼んでいます。
BNCT施設の需要は、日本国内に50施設以上あるといわれています。少なくとも各都道府県のがん拠点病院には導入されていくのではないかと推計されます。
先行するBNCT施設は住友重工が開発のイニシアティブを取ってきました。企業の販売戦略が、早期の立ち上がりを推進してきました。iBNCTは高エネ研、筑波大学、自治体という官制のプロジェクトで進められてきました。開発の途中で、リニアックを製造した三菱重工が医療分野から徹底するという出来事もありました。
今後も、装置を作るのには非常に膨大なコストがかかります。開発資金を確保するのも大変ですが、開発後に全国、全世界にこのiBNCTを販売展開するという、大きなミッションが待ち受けています。
県民の命と健康を守るという使命と、新たな産業創造という使命が、iBNCTにはあることを改めて確認しました。