鬼城山(鬼ノ城)岡山県
 2020年の東京五輪・パラリンピック開幕まで、あと2年。文化庁は、増加する訪日外国人観光客が日本を周遊し、地域の活性化に結び付くようにするため、「日本遺産」を認定しています。2015年度の創設以来、現在まで43道府県で67件が認定されました。このうち2018年度に追加されたのは13件。20年までに100件程度の認定をめざします。
 日本遺産は、自治体が地域の城や遺跡、伝統芸能、文化といった歴史的魅力や特色を一つの“ストーリー”としています。世界遺産登録や文化財指定がそれぞれの保護を目的としているのに対し、日本遺産は地域の文化財や遺産を物語として一体的にブランド化し、国内外への発信を強化することが狙いなのです。
 例えば、おとぎ話「桃太郎」の伝承が多数存在する岡山県の岡山、倉敷、総社、赤磐の4市は今年、「『桃太郎伝説』の生まれたまち」として認定を受けました。桃太郎のモデルとされる吉備津彦命に退治された鬼の居城と伝えられる史跡「鬼城山」(総社市)や、名産の「岡山の桃」「きびだんご」などでストーリーを構成しています。
 また、江戸時代に各地の繁栄をもたらした北前船の寄港地・船主集落からなる「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間」(昨年認定)は、今年5月に認定自治体が15道府県38市町まで拡大し、地域活性化や自治体間交流の取り組みがさらに深まっています。
 認定された地域に対しては、文化庁が「日本遺産魅力発信推進事業」として支援を行います。多言語ホームページの作成やトイレ、ベンチ、説明板の設置、ガイドの育成などについて、認定後3年間をめどに財政支援されます。
「ある町の高い煙突」の舞台・日立市
 日本遺産の創設については、公明党文化芸術振興会議が2014年、東京五輪を「日本各地の多様、多彩な文化芸術の基盤を計画的、着実に強化する機会」と位置付け、政府に提言。公明党は、地方創生の取り組みと、多彩な文化芸術の行事を行う「文化プログラム」も積極的に推進しています。
 井手よしひろ県議ら県議会公明党は、この「日本遺産」に、「ある町の高い煙突」をメインストリーとして日立市の登録を目指すべきと提案しています。

■公明の提案受け創設/党文科部会長 浮島智子衆院議員
 日本各地には、地元の人ですら気付いていない魅力がたくさんあります。
 私は2013年、東京五輪・パラリンピックの招致が決定した直後に、安倍晋三首相に対して「世界遺産があるなら、日本の素晴らしい文化や伝統を日本遺産として認定してはどうか」と提案しました。
 訪日観光客も増加する中、20年に向けて日本遺産を通して各地の素晴らしい伝統や文化を世界に発信し、盛り上げたいです。
平成30年度の「日本遺産登録地」
◎上川町、旭川市、富良野市、愛別町、上士幌町、上富良野町、鹿追町、士幌町、新得町、当麻町、東川町、比布町
カムイと共に生きる上川アイヌ〜大雪山のふところに伝承される神々の世界〜
◎山形県(山形市、寒河江市、天童市、尾花沢市、山辺町、中山町、河北町)
山寺が支えた紅花文化
◎宇都宮市
地下迷宮の秘密を探る旅〜大谷石文化が息づくまち宇都宮〜
◎那須塩原市、矢板市、大田原市、那須町
明治貴族が描いた未来〜那須野が原開拓浪漫譚〜
◎南砺市
宮大工の鑿一丁から生まれた木彫刻美術館・井波
◎山梨県(山梨市、笛吹市、甲州市)
葡萄畑が織りなす風景−山梨県峡東地域−
◎長野県(茅野市、富士見町、原村、諏訪市、岡谷市、下諏訪町、長和町、川上村)、山梨県(甲府市、北杜市、韮崎市、南アルプス市、笛吹市、甲州市)
星降る中部高地の縄文世界―数千年を遡る黒曜石鉱山と縄文人に出会う旅─
静岡県(◎三島市、函南町)、神奈川県(小田原市、箱根町)
旅人たちの足跡残る悠久の石畳道 ―箱根八里で辿る遥かな江戸の旅路
◎広川町
「百世の安堵」〜津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産〜
◎岡山市、倉敷市、総社市、赤磐市
「桃太郎伝説」の生まれたまち おかやま 〜古代吉備の遺産が誘う鬼退治の物語〜
◎福山市
瀬戸の夕凪が包む 国内随一の近世港町〜セピア色の港町に日常が溶け込む鞆の浦〜
◎豊後高田市、国東市
鬼が仏になった里「くにさき」
◎西都市、宮崎市、新富町
古代人のモニュメント −台地に絵を描く 南国宮崎の古墳景観