
8月7日、8日の両日、井手よしひろ県議は岡山県倉敷市を訪れ、西日本豪雨災害の被災状況を調査しました。特に、今回初めて建設型仮設住宅として認められた、モバイルハウス「スマートモデューロ」について、開発したアーキビジョン21の丹野正則社長より説明を受け、実際にモデルハウスとして公開される予定の住宅内も視察せていただきました。
この「スマートモデューロ」は、一般的なトレーラーハウスと同じと誤って認識されているようです。自由に移動できるのは魅力だけど、夏は暑く、冬は寒そう。内部も狭く、仮設住宅としての居住性が確保できていないのではないか、といった先入観を持たれているようです。すでに、倉敷市では被災した住民から建設仮設住宅の入居希望をとっていますが、約50戸提供されるモバイルハウスは、立地の不便さもあり希望倍率も一番低いとのことです。
モバイルハウスの仮設住宅として活用することのメリットは、何よりも短時間に設置でき、被災した住民にいち早く生活再建の拠点を提供できるということです。その上、設置費用もいわゆるプレハブ住宅や木造仮設住宅よりも廉価であり、撤去費用が掛からないという点や、繰り返しの利用が可能ということを考えるとコストパフォーマンスは非常に高くなります。
さらにその居住性も魅力です。「スマートモデューロ」は、海上コンテナと同規格なので、トレーラーに乗せてどこにでも運ぶことができます。しかし、設置場所に着くとクレーンで基礎の上に降ろされ、一般の住宅と同じように建てられます。車輪のついた家ではありません。トレーラーハウスの枠を超えた、新しい発想の「移動できる家」なのです。

本体は北海道の工場で生産されています。厳しい自然環境でも快適に暮らせる家を30年以上つくり続けてきたノウハウを活かして、夏の暑さも冬の寒さも気にしなくていい、快適な住空間ができあがります。
土地を確保して、基礎工事をした上にユニット(スマートモデューロの本体)を施工します。基礎の上にユニットをクレーンで移動させ、給排水管などの連結を行うだけなので外観は1日で完成します。土地と給排水、電気が確保できれば、発災から約1カ月以内で入居が可能です。
ひとつのユニットのサイズは幅2.4m、長さ12m、高さ2.89m。延床面積は28.80m2。住宅としては小さなサイズですが、空間を効率的に使うことで、寝室とダイニングキッチン、トイレ、シャワー室、洗面室を確保することができます。
8月8日、実際に仮設住宅敷地に搬入されたモデル棟を視察してみましたが、外観の印象よりも、中は広々としていて、非常に機能的でした。
モデルハウスは2人向け。寝室にはベットが2台が並べられ、エアコンが設置されています。スマートモデューロは機密性が高く、この小型のエアコンを常時使用することで、快適な空間を生みます。今年のような酷暑の夏に、常時エアコンを稼働させても電気代はさほど気になる金額ではないとのことです。
リビングダイニングには、大きなシンクのシステムキッチンが組み込まれ、IHクッキングヒーターが導入されています。

開口部(窓)は、特殊な気体を封印した3重ガラス構造。大きく回転する窓は開放的な空間を演出しています。

水回りは、洗濯機スペース、バスタブがあるシャワールーム、シャワーレット仕様の水洗トイレ、そして洗面台、大型の給湯器がコンパクトに収まっています。この水回りはスライドドアによって区切られていますので、プライバシーも守られます。

今までの仮設住宅のイメージを大きく変える、被災者のQOLを最大限に高めることができる仕様です。
そもそも「スマートモデューロ」開発のきっかけは東日本大震災でした。2011年5月上旬、アーキビジョン21の住宅商品で移動可能なユニット住宅「モデューロ」6棟を宮城県の被災地に移設したところ、一日で設置が完了し、上下水道と電気の接続が終われば、その日から生活ができる住宅は被災者の方々に非常に喜ばれました。

丹野社長は開発の動機を「被災地で使われている仮設住宅は使い捨て。建設費や補修費、解体費、廃棄処分費などで多くのコストがかかります。それなのに住み心地は決して良くありません。『モデューロ』なら高気密・高断熱で快適なうえに、再利用も可能。ただ、工期に2カ月程度かかること、輸送費がかかることがネックでした。そこで試行錯誤を繰り返し、工期が短く、コストも既存の仮設住宅より安く、トレーラーハウスとして輸送もしやすい『スマートモデューロ』を開発したのです」と、語ってくれました。
井手県議は、入居者の希望によって、畳仕様の部屋とかもっと大きなバスタブとか、様々な改良を加えて欲しいと要望しました。このスマートモデューロが、建設型仮設住宅として認められたことで、日本の自然災害への対応は大きな一歩を記したと評価できます。