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 中央官庁や地方自治体による障がい者雇用の水増し事案。障がいのある人たちはもちろん、法律をきちんと守り障がい者の雇用に努めている人たちを裏切る行為であり、断じて許されない行為です。
 複数の中央省庁で、雇用している障がい者の数を水増ししていた問題が発覚し、大きな波紋を広げている。2017年6月時点で、1000人を超える規模との報道もある。自治体でも同様のケースが次々と判明している。残念ながら茨城県でも、340人の障がい者雇用の内、118人について、障害者手帳や産業医の診断書の確認をしていなかった事実が判明しています。
 障がい者の働く機会が失われたという事実を、国や自治体は重く受け止めるべきです。ハンディキャップを乗り越え、持てる能力を行政の場で発揮したいと願う障がい者は沢山いらっしゃいます。そうした人たちの思いを踏みにじったと言っても過言ではありません。
 厚生労働省は8月28日にも、関係省庁の調査結果を公表する方針です。まずは事実関係を徹底的に調査し、全容の解明を急ぐべきです。
 行政機関や企業は、一定割合で障がい者を雇うことが障害者雇用促進法で義務付けられています。具体的には、国や自治体が2.5%、教育委員会は2.4%、企業2.2%となっています。いずれも、この4月から0.2ポイント引き上げられました。これには、国を挙げて健常者と障がい者の「共生社会」を進めていくとの決意が込められています。
 ところが、その旗振り役となるべき中央省庁や自治体が、障害者手帳の所持者であることを確認するなどの指針に反した職員も含めて、障害者雇用率に算入していていました。厚労省の発表によれば、行政機関は2017年当時の目標雇用率2.3%を達成していたことになっているが、現実には未達であったと見られれます。
 障がい者雇用について、企業には、目標値を下回れば、一人当たり月額5万円の納付金を徴収されるというペナルティーもあります。障がい者の受け入れに知恵を絞り、相当な工夫を講じているところも少なくありません。
 この問題は、法定雇用率の対象障がい者を身体障がい者から知的障がい、そして精神障がいと拡大する中で、特に障がい者団体から、プライバシーに十分配慮してもらいたい、障がい者の掘り起こしなどにならないように注意してもらいたいとの要請もあり、特に、配慮が必要との思いから、今回のような事態も生まれたのではないかと推察されます。また、新規の雇用の場合は、手帳や診断書の確認が徹底されたようですが、職員が後天的に障がいを負った場合には、手帳の提出などを義務づけてはいなかったようです。
 まずは全体像を正確に把握し、速やかに障がい者手帳、診断書の提出を求めるべきです。手帳等の提出は障がい者の人権擁護のため強制できませんので、確認にいたらなかった場合は、速やかに法定雇用率の達成のために、雇用拡大に努めるべきです。行政機関においては、前例踏襲を廃し、働き方改革を進めるべきです。