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 10月8日、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「1.5度の地球温暖化」と題した特別報告書を公表しました。IPCCの李会晟議長によると「IPCCがこれまで出してきた報告書の中で、最も重要な報告書」です。
 この報告書の科学的知見を重視し、国際社会は地球温暖化対策を強化すべきです。
 報告書は、なぜ「1.5度」を強調しているのか。2016年11月に発効した地球温暖化の防止をめざす国際的な枠組み「パリ協定」は、世界の平均気温の上昇を、18世紀後半から19世紀にかけて起こった産業革命の前と比べて2度未満、可能であれば1.5度に抑えるという目標を掲げています。
 しかし、報告書は、2度未満ではなく、1.5度の上昇に抑えることが望ましいと結論付けました。温暖化の影響は1.5度の気温上昇でも大きく、2度だとさらに深刻になるためです。
 報告書によると、例えば、海水面の上昇について、1.5度の気温上昇のケースと比較すると、2度の気温上昇の場合、海水面は10センチ以上高くなり、沿岸地では洪水や高潮の頻発などにより、住まいを失うなどの被災者も、1000万人増加すると予測しています。気温上昇を1.5度に抑えるためには、人為的な二酸化炭素(CO2)の排出量を10年比で30年には45%減らし、50年ごろには実質ゼロにする「脱炭素化」の必要性を強く指摘した。
 また、報告書は、世界の平均気温の上昇が、予測を上回るペースで進んでいることも懸念。産業革命前から既に1度上昇しているが、2030年には1.5度上昇し、猛暑や豪雨などの「極端気候」が増え続けると警告しています。
 日本では「異常気象」という語がよく使われるが、これは「30年に1度のまれな事態」を意味し、誤解を招きます。
 今夏、西日本を襲い、200人を超える死者と行方不明者を出したような豪雨は、近年、毎年のように日本だけでなく、世界各地で多発しています。だからこそIPCCは、「極端気候」という用語をあえて用いて、その発生頻度の深刻さを強調しています。
 地球温暖化の防止には、二酸化炭素など温室効果ガスの排出を削減することが重要ですが、これが遅々として進んでいないから、気温上昇を抑えられないでいます。国際社会の取り組みを加速させなければりません。
 一方、個人が変わることなしに世界は目標を達成できないとも報告書は付け加えており、下記の内容を呼び掛けています。
●肉、牛乳、チーズ、バターの購入を控え、地元で採れた旬のものを購入し、これらを無駄にしない
●電気自動車を運転する。ただし、短い距離は徒歩で行くか自転車を利用する
●飛行機の代わりに電車やバスを使う
●出張の代わりにビデオ会議を活用する
●洗濯物を乾かす際には、回転式衣類乾燥機でなく物干しを使う
●住宅を断熱処理する
●消費財すべてに低炭素を求める
 自然災害が甚大化、頻発化する日本。IPCCの訴えを冷静に受けとめ、行動に移したい。