地域猫の避妊去勢手術
茨城の動物愛護に新たな扉開く、初日の手術は51匹
 10月11日、鹿嶋市のけいせつ基金(角新一代表)が、新たに設置した「いながき動物病院鹿嶋分院」が開院し、稲垣将治獣医師を中心に第1回目の猫の集中不妊去勢手術が行われました。井手よしひろ県議は、茨城県内での動物愛護活動を支援し、特に地域猫活動をバックアップする視点から、現地を視察・調査し、角代表やボランティアの皆さん、稲垣先生から様々ご意見、ご要望を伺いました。
 「いながき動物病院鹿嶋分院」は、飼い主のいない猫の不妊去勢手術専門病院の病院です。けいせつ基金の角代表が、多くの支援者の物心両面にわたる支援をもとに設立しました。TNR専門病院の獣医師の協力を得て、毎月第2木曜日に集中的に猫の不妊去勢手術を行います。当面は月1回の開院となりますが、飼育動物診療施設として正式に認められた動物病院です。
地域猫の避妊去勢手術
TNRと地域猫活動
 そもそもTNRとは、飼い主が定かでない猫を「Trap(捕獲)して、Neuter(不妊去勢)し、Return(元の場所に戻す)する」ことです。そうすることにより、その場所にいる猫達が子猫を産むことなく一代限りの命を全うし、最終的には野良猫がいなくなるようにするための活動です。
 このTNRを基本に、その猫達がその場所で短い生涯(野良猫の平均寿命は5歳前後)を全うするための手助けとして、餌やりや健康チェック、酷いケガや病気になっている子を見つけた時には獣医に連れていくこと。食べ残した餌の処分や排泄の後始末などの活動。さらに、地域住民にこうした活動の理解と協力をいただく取り組み。地域の住環境を守るために、市町村や県などの行政も様々な協力・啓発・支援などを行うことなど、動物愛護の当事者、地域住民、市町村などの行政が一体となった取り組みを「地域猫」活動と言っています。
 野良猫による環境被害をなくし、また殺処分ゼロを目指すためには、一番重要な取り組みとされており、茨城県でもその推進に重点的に取り組んでいます。
 茨城県では、昨年度より地域で取り組む地域猫活動に対し、市町村を通して、不妊去勢手術費を支援しています。市町村に地域猫活動を届け出た団体に、不妊去勢手術のチケットを発行し、地元の獣医師に手術を行ってもらうという仕組みです。結果的に、不妊去勢手術の費用は無料になります。
 こうした努力もあり、猫の殺処分頭数は2017年度、前年度と比べ約7割減の375頭となりました。
 ただ、こうした助成策も予算的には限りがあり、地域猫活動が広がるにつれてその費用の確保が大きな問題となってきました。井手県議は、今年3月の予算特別委員会で、この点に触れて、「地域猫活動における、不妊去勢手術頭数を拡大することが重要だと考えます。不妊去勢費用の単価を引き下げても予定頭数を倍増させるくらいの取り組みを期待します」と、大井川知事に直接訴えました。

地域猫の避妊去勢手術
毎月第2木曜日に、6480円で不妊去勢手術を実施
 こうした現状に、全く新しい視点で市民レベルの挑戦を行ったのがけいせつ基金です。鉾田市内の空き物件を購入し、空調機器や水回りなどを整備し「いながき動物病院鹿嶋分院」の開院に至りました。この取り組みに強化した個人や団体からの寄付金も寄せられました。
 毎月第2木曜日に、事前に予約した猫の不妊去勢手術を6480円(手術代5400円、ワクチン費1080円、いずれも税込み)で行います。一般の獣医師が行う施術費の2分の1から3分の1の金額です。手術依頼者から受け取った手術費用は、全額、獣医さんに施術料、薬品代、消耗品費などとしてお渡します。病院の水道光熱費などの運営費用は、全額ご寄付で運営されます。
 10月11日の開院初日は、午前8:30から受付開始。9:00には手術開始。60匹の予約がありましたが、最終的には51匹の処置を行いました。井手県議が訪れた3時頃には、この日最後のメス猫の手術が始まるところでした。このペースで進めると、この病院で年間600頭もの不妊去勢ができることになります。
 2名の獣医師をはじめ、多くのボランティアの皆さまが献身的なお手伝いをされていました。比較的広い治療室ですが、50匹以上の猫を入れたケージが並ぶと、さすがに立錐の余地もないという表現となります。綺麗に清掃され、糞尿の管理や消毒等も徹底していますので、嫌な臭いなどは全くありませんでした。
 手術終了後、稲垣獣医師からお話を聴取しました。「この施設はとても素晴らしい。使いやすい。これまで手術したどこよりも素晴らしい思う。行政もこうした取り組みをあることを、もっと県民の方々にお知らせしてもらいたい。地域猫を進めることは、単に動物愛護を進めるだけではなく、地域住民の生活環境向上のためにも役立つことを知ってもらいたいと思います」と、優しく語って下さいました。

告知用シート
 なお、詳しい連絡先は、けいせつ基金(角代表):080-5191-9634、ikeisetsugakusya@ezweb.ne.jp。