ハリケーンサンディのタイムライン
 電車の運転を取りやめることを鉄道会社が事前に発表する「計画運休」が、9月から10月にかけて日本列島を襲った台風24号の接近に伴って、首都圏で初めて実施されました。
 利用者に対する周知のタイミングや運転再開時の混乱など課題は残ったものの、乗客の安全を確保し鉄道施設を保全するためには、非常に有効であったと評価します。
 災害による被害を最小限に抑える取り組みに「タイムライン」があります。これは、台風などあらかじめ予測できる災害に備え、行政や企業などが「いつ、誰が、何をするか」を事前に整理しておく仕組みのことです。今回の計画運休についても、鉄道会社が自社で策定したタイムラインに基づいて実施したものです。
 タイムラインの最も大きな利点は、先を見越した早めの行動が可能になることです。
 3年前の関東・東北豪雨の際、氾濫危険水位を超えた河川沿いで避難勧告や指示を出した市町村は、タイムラインを策定したところで72%だったのに対し、未策定では33%にとどまりました。近年、自然災害は激甚化しつつあるだけに、タイムラインの一層の普及が求められます。
 タイムラインの好事例としては、2012年10月に米東海岸を襲ったハリケーン・サンディへの対応が有名です。
 特にニューヨーク市では、利用者に事前通知した上で、ハリケーン上陸1日前に地下鉄を運休。線路のポイント切り換えの電源部分を地上に運ぶなど浸水対策を施しました。
 結果、都市部に大規模な高潮が押し寄せ、地下鉄8駅に浸水被害が生じたものの、最短2日で一部運行を再開するなど、早期復旧につながりました。こうした諸外国の例にも学びながら、タイムラインの実効性を高めていくべきです。
 「防災の党」を掲げる公明党は、自治体や企業によるタイムラインの導入を強力に推進。さらに、住民一人一人が災害時に自らが取るべき行動を時系列でまとめた「マイ・タイムライン」の普及にも取り組んでいます。
 忘れてならないのは、人命の安全確保が最優先であることです。タイムラインの運用に当たっては、「空振りを恐れない」との原則を改めて確認すべきです。