東海第2原発の安全協定 東海村の日本原電東海第2原発は、今年11月28日に運転開始から20年の節目を迎えます。ここにきて、運転延長、再稼働をめぐり、県民の関心が高まるとともにマスコミの報道も活発になってきました。
 今年3月、原電と東海村を含む日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市、水戸市の6市村が東海第2原発の再稼働にかかわる新たな協定を締結しました。従来、再稼働には立地自治体の東海村と茨城県の同意だけでよかったのですが、新協定では、東海村に隣接する4市と県庁所在地の水戸市の計5市にも広げた画期的な協定です。他の原発立地地域にはない、茨城だけの仕組みです。この独自の取り組みは「茨城方式」と呼ばれ、全国の関係自治体から注目を浴びています。
 福島第1原発の事故をみても、原発事故の影響は広範囲に及びます。再稼働などの前提となる地元了解を得る対象を、立地市町村だけでなく周辺自治体まで広げた茨城方式は、ある意味では当然すぎる結論ともいえます。
 新協定では、原電が東海第2原発の再稼働を求めた場合、東海村を含む6市村は原電と事前協議の場を設けて議論します。原電は「納得いただけるまでとことん協議させていただく」と表明しており、再稼働に当たって6市村の動向が注目されています。
 特に、6市村のうち1つでも再稼働に同意しなかった場合、この協定ではどのように扱うのかが議論の中心となっています。
 井手よしひろ県議はこの議論の口火を切る形で、9月県議会代表質問で「6市村のうち、1つでも納得しなければ再稼働しないということであり、『6市村は事前了解権を持った』という表現より、私は『6市村は再稼働への拒否権を持った』と表現するのが正しいと主張しました。
 
那珂市の海野市長:再稼働反対を明言
 そもそも新たな安全協定を結んだ6市村の認識も、統一されたものがあるわけではありません。
 10月24日、那珂市の海野徹市長は、東海第2原発の再稼働に反対する考えを公の場で初めて明らかにて物議を読んでいます。
 海野市長は、原発の再稼働に反対する市民グループとの面会の中で、「周辺に96万人が住む地域で避難計画は到底できるものではなく、再稼働にはノーと言わざるを得ない」と述べて、再稼働に反対する考えを公の場で初めて明らかにしました。
 また22日には、「協定を結んだ自治体のうち1つでも反対すれば再稼働できないかどうかは協定の中では明確に決まっていないので、今後、事業者に回答を求めていきたい」と話しています。
 那珂市の海野市長の意向について、日本原電は「これまで原発の審査状況や安全対策などについて、那珂市をはじめとした周辺自治体などに説明の場を設けるとともに、避難計画の策定に向けても事業者として最大限協力させていただいている。いずれにしても、引き続き丁寧に対応させていただきたい」とコメントしています。

東海村山田村長:新協定は最終的に再稼働に結びつく“判断の場”
 一方、東海村の山田修村長は、NHKの取材に対し「最終的に再稼働に結びつく判断の場だ」と述べ協定は再稼働を拒否するためのものではないという認識を初めて示しました。新たな安全協定締結で中心的な役割を果たした東海村の山田村長は、「自治体が了解しなければ議論が進まない側面はあるが、最終的に再稼働に結びつく判断をする場だ」と述べたものです。
 山田村長は「安全対策などの課題に対して、事業者との合意が得られるように進めていくのが役割だ」と述べました。
 一方で再稼働については住民の意見や避難計画の策定などを踏まえなければ判断できず、協定に基づく事前了解は再稼働の前提のひとつだという考えを示しました。

小川日立市長:『一市村でも反対すれば、再稼働しない』という合意はない、原電の曖昧な姿勢が問題
 さらに、日立市の小川春樹日立市長は、新たな安全協定の文言にある「6市村それぞれが納得するまで、とことん協議を継続する」という部分に対して、「6市村が最終的に『分かった』としないと、次に進まないと思う」と述べ、一自治体でも反対すれば再稼働できないという考えを示しました。
 その上で「原電と『一市村でも反対すれば、再稼働しない』という合意をしているわけではない。質問しても、原電ははっきり言わないから曖昧さが残る」と原電の姿勢に対して疑問を呈しました。
 その上で、市民の意思をくみ取るため、市民代表でつくる組織を設置する考えを表明しました。再稼働の是非を表明する際、「市議会やコミュニティー、市内の団体、企業も含め、いろいろなところから意見を聞き総合的に判断をする」と強調。その上で、市民の代表者でつくる組織を設置したい考えも明らかにしたものです。