東海第2原発
 11月7日、「原則40年」の運転期限が迫る東海第二原発について、原子力規制委員会が20年の運転延長を認めました。これで、日本原子力発電(原電)がめざす再稼働に必要な国の技術審査は、ほぼ完了したことになります。規制委員会に提出したとおりの追加の安全対策を完了すれば、再稼働への要件を満たすことになります。
 しかし、東海第二の再稼働には同意できません。人口が密集し、過酷事故発生時の避難が難しい首都圏の原発を、原則を超えて長く動かす正当な理由は理解できません。
 運転期間の「40年ルール」は、設計が古い原発の退場を促すためのルールです。東京電力福島第一原発の事故後に強化された安全対策の柱です。規制委が認めれば20年の延長も可能ですが、政府は「極めて限定的なケース」と制度導入時には説明していました。こうした説明に反して、申請通り延長が認められた原発は、今回の東海第二で計4基目となりました。例外が既成事実として積み重ねられれば、ルールの形骸化が進みかねません。
 井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党は、一貫して東海第二原発の再稼働に反対してきました。原発から30キロ圏の人口は、全国の原発で最多の96万人に上ります。お年寄りや障害者を運ぶ手段の確保など難題が多く、自治体の計画づくりは遅れています。と、いうよりも実効性のある避難計画の立案は不可能でしょう。
 このさき焦点となる地元同意のハードルも高くなっています。再稼働に対しては、茨城県や立地自治体の東海村とは別に、周辺5市(日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市、水戸市)も実質的な事前了解権を持っています。そのうち水戸市議会と那珂市の市長が反対を明示的に表明しています。
 9日、新たな安全協定を結んだ6市村長は、東海村役場で会合を開き、1市村でも了解しなければ再稼働に進まないとの認識で一致しました。

東海第2原発の追加安全対策
 また、1740億円以上と見込まれる安全対策工事費の問題も見過ごせません。経営難の原電は自力で資金を調達できず、株主で電気の販売先でもある東電と東北電力に支援してもらう方針です。しかし、東電は福島の事故後、実質国有化で救済され、巨額の国民負担によって延命されています。他社を助ける資格があるのか、極めて疑問です。
 このまま使いの安全施設工事を進めても、地元同意を得られなければ、巨額の投資は無駄になっていまします。原電はまず、地元との対話に注力すべきだ。東電も支援のリスクや合理性を見極め、説明を尽くさねばなりません。
 一方、関係自治体は、住民の安全確保に重い責任を負っています。再稼働の是非の判断のために、住民の意思をどのように集約するのか、真剣に検討すべきです。少なくても首長が独断で判断できる内容ではありません。
 6市村の首長が、1市村でも了解しなければ再稼働を認めないと一致したからには、茨城県知事も1自治体でも反対すれば、再稼働を認めないとの原則を確立すべきです。