発電コストの比較(エ現エネルギー庁)
 原子力発電の建設費が高騰しています。先のブログ「日立製作所、英の原発建設中断視野に検討、2000億円規模の特別損失計上も」http://blog.hitachi-net.jp/archives/51699762.htmlで取り上げたように、原発の建設コスト、安全性を確保するための費用が嵩み、原子力発電が事業として成立しずらくなっています。
 日立製作所のイギリスの原発子会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」が手がける原発は、安全対策の強化などで事業費が当初予定の2兆円から1.5倍の3兆円規模に膨んでしまいました。この計画は、グレートブリテン島中西部のアングルシー島にある130万キロワットクラスの改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を2基建設するものです。2020年代前半の運転開始を目指しています。
 このタイプは、東京電力の新潟県にある柏崎6号機、7号機とほぼ同規模です。柏崎6号機の総事業費は4182憶円、7号機が3666憶円と公表されていますので、合計で7800憶円強。この20年間でその導入コストは4倍程度に膨らんだことになります。
原発の発電コストは10.1円/Kwhといわれているが
 一方、原発は発電コストが低いとされています。資源エネルギー庁の資料によると、原発の発電コストは1kWh当たり10.1円とされています。
 原発のコストは「発電原価」と「社会的費用」に分けることができます。発電原価とは、発電施設の建設と運用に関わるコストのことで、具体的には施設の建設費、燃料費、運転維持費、また使用済みの核燃料を加工して再度燃料として利用する核燃料サイクル費や、廃炉措置をとった場合にかかるコストなどを含みます。また、2013年に定められた新規制基準にもとづく追加の安全対策費などもここに含みます。
 社会的費用とは、賠償費用などの事故リスク対応費用と原発建設地への立地交付金など(税金)のことで、原発の運用に間接的に関わるコストです。
 試算では、設備容量120万kWの原子力発電所が、設備利用率60%・70%・80%で、40年あるいは60年稼働した場合という複数のケースを想定して計算しました。事故リスク対応費用は、福島第一原発での事故対応費用を参考に、120万kWの原発1基が事故を起こした場合を想定して、約9.1兆円と想定しています。
 これに対して、他の発電方法のコストは、火力発電のコストは、石炭を使った場合が12.3円、天然ガスを使った場合が13.7円、石油を使った場合が30.6〜43.4円です。コストの内訳を見ると、火力発電は燃料費(石炭、天然ガス、石油)が高く、さらに原発ではかからないコストであるCO2対策費が、社会的費用としてかかっている点が特徴です。
 再生エネルギーを使った発電のコストは、風力(陸上に設置した風力発電の場合)は21.6円、太陽光(メガソーラーの場合)は24.2円です。内訳の特徴としては、燃料費がかからないという大きなメリットがあるいっぽう、原発や火力発電と比べて発電コストに占める建設費や工事費などの資本費が高くなっています。
 しかし、こうした試算は、建設費が4倍にも高騰している現状や廃炉費用の増高、核燃料サイクルシステムの構築などの費用を正確に反映しているのでしょうか?