日立オートモティブ電動機システムズ
 茨城県は、国が地方創生の柱として位置付けている本社機能移転の推進に、最大50億円の補助金を用意して、総力を挙げています。この1月までにすでに5社の本社機能誘致が実現しています。
 今年度、本社機能の移転・拡充に関して、国税の優遇措置等(地方拠点強化税制)に加えて、全国トップクラスとなる県税の特別措置(法人事業税・不動産取得税の減免)を独自に設けました。また、他県から茨城県へ本社機能を移転する場合は、移転の経費(移転費用や社屋建設費等)について、補助率50%で最大1億円となる補助制度を創設しました。
 ちなみに国の地方拠点強化税制では、県南西地域の一部の近郊整備地帯が対象外とされているが、県の優遇措置ではこの地域もカバーし、対象地域を県内全域に拡大しています。
 これらの優遇制度を利用すると、例えば東京に本社機能がある企業が、設備に5億円投資して30人が転勤、茨城県で20人新規雇用した場合、地方拠点強化税制で9200万円、県税の特別措置で1330万円の減税が実現します。
 こうした本社移転の推進はすでに成果を出し始めており、1都3県の本社移転企業調査(2016年、帝国データバンク調べ)によれば、16年に東京圏から移転した企業の転出先のうち、茨城県が24社(構成比11.1%)で国内最多となっています。
参考:本社機能移転に関わる優遇制度:https://www.indus.pref.ibaraki.jp/pdf/honsyaiten_yugu.pdf

 「本社機能移転強化促進補助金」の第1号は、「日立オートモティブ電動機システムズ」(ひたちなか市)と「クレハエクストロン」(東京都)の2社です。
 日立オートモティブ電動機システムズは、約100億円を投じて、日立製作所佐和事業所内に「グローバル技術開発センター」を整備する計画です。一方、クレハエクストロンはかすみがうら市の天神工業団地内に新工場を建設し、あわせて本社や研究開発機能を都内から茨城県内に全面移転する計画です。
 日立オートモティブ電動機システムズは、日立オートモティブシステムズと本田技研工業が設立した合弁会社で、電動車両用モーターの開発、製造および販売を事業として行っています。本社はひたちなか市にある日立オートモティブシステムズの敷地内に置かれ、資本金は49億5000万円で、出資比率は日立オートモティブシステムズが51%、本田技研工業が49%です。補助対象の事業計画は、国際競争力の高い電動車両(EV、PHEV、HEV)用モーターの研究開発を行う「グローバル技術開発センター」を新設し、現在、日立オートモティブシステムズや本田技研工業の各事業所に分散している電動車両用モーターの技術開発機能を、ひたちなか市内に集約するものとなります。ここでは約140人を雇用する見込みで、供用開始時期は2019年4月の予定。事業費には、設備投資や人件費などを含む費用全体として約100億円を見込んでいます。茨城県はこのうち約5億6000万円を補助する予定です。

 一方のクレハエクストロンは化学メーカー「クレハ」の100%子会社で、合成樹脂成型品の開発、製造、販売を手掛け資本金は8500万円。今回は高機能プラスチック素材などの生産能力を強化するため新工場を建設するとともに、本社および研究開発機能を東京都大田区からかすみがうら市に全面移転します。
 クレハエクストロン社の事業計画によると、設置場所はかすみがうら市宍倉地内で、天神工業団地に立地する関連会社「クレハエクステック」の敷地の余剰部分を活用する。ここに約20億円を投じて工場や本社機能を移転し、2019年10月の供用開始を目指しています。同社の雇用見込みは約15人となっており、県はこのうち本社・研究開発機能分として約2000万円を補助します。また工場分についても、従来からある県の各種優遇策を適用していく考えです。

 さらに、1月22日「本社機能移転強化促進補助金」の第3号に、設備工事大手の高砂熱学工業(東京)と、フランスに本社を置く自動車部品メーカーの日本法人、ヴァレオジャパン(東京)、大手化学メーカーの積水化学工業(大阪)の3社の計画を認定しました。
 高砂熱学工業は同社技術研究所(神奈川県厚木市)と本社機能のうち開発企画・開発部門(新技術開発部、新規事業開発部、IoT・AI開発部など)を、つくばみらい市のつくばエクスプレスみらい平駅近くに新築する「イノベーションセンター」(仮称)に移転します。空調工事最大手の高砂熱学工業は、空調工事を軸とした総合的なシステムエンジニアリングを手掛けて資本金131億円、売上高2899億円の事業規模を誇ります。イノベーションセンターは、TXみらい平駅に近いつくばみらい市富士見ヶ丘の2.3haに地上2階建て、延べ約1万1600平方mの規模でオフィスと研究施設を整備します。事業費には、設備投資予定額と土地代、人件費などをあわせて概算で約90億円を見込み、県からの補助額は約4億9000万円を見込んでいます。補助対象雇用数は約120人で計画し、2020年3月の供用開始を目指します。

 ヴァレオジャパンは、行方市芹沢に「茨城先進運転支援システム開発評価センター」を設置します。また、ヴァレオジャパンは自動車関連システムおよび部品の研究開発・製造・販売を手掛ける、フランスのヴァレオ社の100%子会社。資本金91億円、売上高840億円で、世界全体では33カ国に展開し売上高は2兆4300億円の巨大企業です。今回は行方市芹沢地内の遊休地に先進運転支援システム開発部門を移転し、「茨城先進運転支援システム開発評価センター」として2020年12月にも供用を開始します。概算事業費は約25億円で、県からの補助額は約1億3000万円の見込み。同社のアリ・オードバディ社長は「自動運転システムの技術開発のため、テストコースを含む研究開発拠点の候補地選定を進める中、県から補助金の活用を提案いただいたことが行方市内に設置する決め手の一つとなった」とコメントしています。

 積水化学工業はリチウムイオン電池事業強化へ向け、約20億円かけて筑波北部工業団地(つくば市)内に新たな研究開発施設を整備します。補助金額は1億円で、2019年9月に供用開始です。積水化学工業の上ノ山智史取締役は「今後、需要拡大が見込まれるスマートハウスや次世代車載向けのリチウムイオン電池事業の企画、研究開発機能の強化が必要となる中、県補助金を活用して拠点整備することができ、大変ありがたい。今回の拠点整備で開発体制を強化し、さらなる事業拡大につなげたいと考えている」と話しました。