1月26日、つくばみらい市の屋外型ロケ施設「ワープステーション江戸」で、昨年6月に完成した「近現代エリア」の一般公開が始まりました。
 ワープステーション江戸は、時代劇オープンセットが建ち並ぶ国内でも数少ない屋外型ロケ施設。江戸時代はもちろんのこと、戦国から昭和までを幅広くカバー。お堀の太鼓橋や周囲の家々が当時の風情を演出、城郭や武家屋敷の佇まいが、来場者を時代劇の世界へと誘います。
 他にも長屋、旅籠街、明治の下町通りなど、豊富な場面を整備。施設内は一般公開されているので、誰でも手軽に時代劇撮影の雰囲気を楽しむことができます。関東地方で時代劇の撮影が出来る、貴重な施設です。
 今回公開された「近現代エリア」は、大正から昭和の東京の町並みなどを再現したエリアで、NHK大河ドラマ「いだてん 東京オリムピック噺」のロケ拠点施設になっていることから、NHK関係者や出演者の阿部サダヲさん、大井川和彦知事らが出席して記念セレモニーが行われました。
 ワープステーション江戸のロケセットは、これまで江戸時代が中心でした。新エリアには当時の東京・銀座や新橋を模した9棟の鉄筋ビル群や、ノスタルジックな雰囲気が漂う木造建築群22棟が「路地裏通り」や「看板建築通り」などとして立ち並んでいます。ビル群を一周する路面電車も導入されました。
 一般公開時間は午前9時半〜午後4時(最終入場は午後3時半ます)。月曜日定休。実際の撮影が行われている際は、見学が出来ません。入場料は大人500円です。
ワープステーション江戸“近現代エリア”
ワープステーション江戸には、当初県の第3セクターが運営。県民の税金12億円超が投入されるも破綻。2012年にNHKエンターテイメントに売却
 「ワープステーション江戸」は、4万8500平方メートルの敷地に江戸時代の街並みを再現した歴史公園で、2000年4月21日に、茨城県や地元市町村、民間企業が設立した第三セクター「メディアパークつくば」が創設しました。総事業費約37億円で、時代劇のロケを立体映像で楽しむ「3Dドラマシアター」などが売り物でした。
 しかし、計画では年間70万人を見込んだ入場者は、初年度でも37万1000人と採算ラインの40万人を割り込みました。
 しかしその後も、入場者数が増加せず、わずか3年で2002年に経営破綻しました。02年10月から、県開発公社が経営を引き継ぎましたが、05年度で6万5748人と低迷が続いていました。この時点で、累積損失は3億円を超えており、低迷する入場料収入をカバーするためロケの誘致に力を入れ、NHKの大河ドラマ「功名が辻」、映画「座頭市」「武士の一分」などでも利用されました。しかし、ロケ事業の年間収入は2450万円程度で、毎年1億円前後の赤字が出ていました。
 アトラクション施設があるため、建物内部の撮影ができる場所が少ないことや、開発公社が映画やテレビ関係には全く無縁であるため、期待したようにはロケ誘致に結びつきませんでした。
 その後、茨城県は当時「日光江戸村」を運営していた大新東グループに、年間3億8000万円で経営を委託しました。大新東は江戸の下町の雰囲気作りの意識を徹底させたり、都内から直行バスを走らせたりました。
 2007年4月に、県開発公社はNHKエンタープライズに同施設を貸与。貸与金額は年間4000万円でした。また、入場料を値下げしアトラクションの休止や売店の縮小、軽食・喫茶を無人化(自動販売機)するなどの合理化を行い、4万人の入場者でも収支が合うよう抜本的な改革を行いました。
 県開発公社が保有していた「ワープステーション江戸」は、2012年3月にNHKエンタープライズに売却されました。この際に、県開発公社は約3億円の売却損を計上しました。また、この清算により、県の出資金5億円は185万円しか戻りませんでした。
 「ワープステーション江戸」に関する一連の対応は、2017年の茨城県知事選でも争点の一つとなりました。当時の橋本昌知事に対して、いばらき自民党所属の地元県議が、議会で厳しい質問を行い注目されました。