日本原電への財政支援のスキム 東海第2原発の再稼働に関わり東京電力などの財政支援のスキムについて、3月2日付けの朝日新聞が記事を掲載しました。
東電、東海第二に支援1900億円 安全対策費が膨張
朝日新聞(2019/3/2)
 原発専業会社の日本原子力発電が再稼働をめざす東海第二原発(茨城県)をめぐり、電力各社による資金支援の計画案が明らかになった。安全対策工事費が従来想定の2倍近い約3千億円に膨らむとし、東海第二から電気を受け取る東京電力ホールディングス(HD)が3分の2に当たる約1900億円を支援する。これに東北電力のほか、中部電力、関西電力、北陸電力の3社も支援することが柱だ。
 再稼働時期は2023年1月を想定しているが、周辺自治体から再稼働の了解を得るめどは立っていない。自治体の同意を得られずに廃炉になった場合、東電などは巨額の損失を被る可能性がある。福島第一原発事故を起こした東電は、国費投入で実質国有化された。にもかかわらず、再稼働が見通せない他社の原発を支援することに批判が出るのは必至だ。

 原電は、昨年4月5日に再稼働に向けて安全対策費1740億円の調達のめどがついたことを原子力規制委員会に報告しました。しかし、この記事では安全対策費が倍近くの3000億円に膨らむとしています。
 安全対策費は、再稼働前と再稼働後の2段階で必要となります。まず再稼働前の今年(2019年)4月から22年末までに約1200億円が必要となります。この分の負担として、受電割合に沿って東京電力が8割の約960億円、東北電力が2割の約240億円を負担します。東電は、東海第二から将来得る電気の料金の「前払い」と位置づけ、銀行からの借り入れで賄う見通しです。一方、東北電は前払いか、原電の銀行借り入れへの債務保証の形で支援します。
 再稼働時期を4年後の2023年1月と想定し、稼働後の安全対策費は、2023年1月〜24年3月に、約1800億円が必要としました。
 原電は、みずほ銀行等の銀行団から借り入れるとしており、この借り入れに対して東電が約960億円、東北電が約240億円、中部電など3社が計約600億円を債務保証するとしています。
 東海第2原発から受電しない関電、中部電、北陸電も、原電の敦賀原発2号機から受電していたことを理由として支援団に加わわります。
 原電は保有する原発4基のうち、すでに2基が廃炉作業中で、再稼働を見込める原発は東海第二しかありません。東海第二が稼動できなければ、原電は収入源がなくなり、経営が破たんします。電力各社は、原電の株主でもあることから、原電が破綻すると巨額の損失を被る可能性があります。そのため、横並びの支援体制を検討しています。

実稼働16年間で3000憶円の安全対策費を償還できるのか?
 そもそも、原電は2012年以降、全く発電を行っていません。東電、関電、中部電、北陸電、東北電から、毎年1000億円以上の電気料金収入を得て延命している状況です。その総額は、2017年度までに7350億円にものぼっています。逆に言えば、電力各社は、すでに8年もの間、日本原電に対して巨額の電気料金を払い続けていることになります。これは総括原価方式により国民の負担する電気料金に上乗せされています。すなわち、原電の延命のための資金を、全国の電力ユーザーが少しずつ負担していることとなります。なかでも最も高額の基本料金を支払っているのは東電であり、2011年度〜2017年度で累計3228億円を支出しています。
 敦賀原発第1、第2、東海第2原発が動いていた2003〜2010年の純利益の平均は17億円です。2011年〜2017年の平均は25億円の赤字です。
 東海第2原発を再稼働できたとしても、敦賀1号機、東海原発の2つの廃炉費用を捻出しつつ、2010年以前の経営状態に戻すことは難しいでしょう。
 一方、今回見積もられた安全対策費3000億円を、延長が認められた20年で回収するためには、単純計算で年間150億円の収益を上げる必要があります。正確には2023年の再稼働予定では、16年間で回収しなくてはならず、年間187憶円必要となります。ちなみに原電の東日本大震災の前年、2010年度の売上げは1751憶円、利益は124億円です。素人目にも、この数字から3000憶円もの借り入れをどのように返済していくのか、その難しさがうかがわれます。

 こうした状況を見ると、金融機関の立場も厳しく問われます。原電には日本政策投資銀行をはじめ、民間銀行では、みずほ銀行が主導する形で11行が資金供給をしています。今回の安全対策費用への融資は電力各社の債務保証があるとはいえ、融資を決める段階で、借り手企業の将来性に疑義が浮上している点をどう評価するかは、大いに注目されます。