ネウボラのイメージ
 地域社会から孤立し、妊娠や育児に不安を抱える子育て家庭が増える中、妊娠・出産から子育て期にわたって親子を切れ目なく支援する「子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)」が全国に広がっています。公明党がネットワークの力で推進し、2018年4月時点で、市区町村の4割超で設置が進んでいます。地域の実情に応じ工夫を凝らす自治体の取り組みを、公明新聞の記事から紹介します。

 ネウボラとは、フィンランドの母子支援制度のことで、「助言の場」という意味があります。各家庭に専属の保健師が付き、妊娠期から就学前までの健康診断・相談支援を行う子育て支援拠点です。一方、日本では、妊産婦や乳幼児らの支援機関や制度は多いものの、バラバラに対応しがちで、必要な支援が届いていない状況も見られました。
 このため、日本版ネウボラは、あらゆるサービスを一体的に提供する仕組みとして、2014年から試行的に導入されました。現在では、既存の子育て施設などを生かし、地域の実情に合わせて整備が進められています。日本版ネウボラは、自治体によって相談・支援の「場」であったり、「仕組み」全体を指す場合もあります。
関係機関との調整担い 母子の孤立防ぐ体制築く
 日本版ネウボラの主な業務は(1)妊産婦や乳幼児らの状況の継続的な把握(2)保健師らによる相談・情報提供・助言(3)課題やニーズに的確に対応する「支援プラン」の作成(4)関係機関との連絡調整――の四つです。これらを通じてきめ細かな支援を切れ目なく行うことが目的です。
 厚生労働省によると、2016年度に虐待で死亡した子どものうち、0歳児が半数以上を占めています。加害者は実母が最も多く、親の孤立化などさまざまな要因が考えられることから、児童虐待を防ぐ役割も期待されています。
 政府は2000年度末までの全国展開をめざしています。2018年4月現在の設置状況は、全市区町村の約44%に当たる761自治体で計1436カ所。中でも鳥取県は、全市町村で設置が完了しています。現在、2019年度政府予算案に200カ所分の新規開設を後押しする費用を計上しており、設置を促していきます。
 公明党は、2014年に発表した「結党50年ビジョン」で“日本版”の整備を他党に先駆けて提言したほか、国会質問や要望の中で強く訴えてきました。また、地方議員も各自治体での設置を強力に推進してきました。

産後ケア重視、細やかに対応 新潟県長岡市
新潟県長岡市「ままリラ」
 「ままリラ」で保健師らに子育てに関する相談をしたり、情報交換する母親=新潟・長岡市
 「不安なことを何でも相談できるので、本当に助かります」。新潟県長岡市のマンションの一室でベビーマッサージを終え、生後5カ月の男の子を連れた40歳の母親が笑顔を見せました。ここは、産後の母親の悩みに寄り添う「産後デイケアる〜む ままリラ」。2015年6月の開設以来、予想を上回る利用者で好評を博しています。
 長岡市は、2015年4月にネウボラを導入。以前からある、保育士が常駐する子育て支援施設「子育ての駅」など計24カ所を、子育て世代包括支援センターに位置付けました。
 大矢芳彦・市子ども家庭課課長は、「多くの窓口を用意したのが特色の一つ。悩みを抱えた方が気軽に足を運べる場所をつくることで、1人でも多くの母親に寄り添えるようにした」と強調します。
 さらに、産後ケアを重視する観点から「ままリラ」を開設。育児への強い不安や体調不良を抱える母親がいれば、子育ての駅などから産後ケアコーディネーター(助産師と保健師の2人)に情報が集約され、個々の子育て支援プランを作成します。情報を一元化する仕組みにしたことで、必要な支援を地区の担当保健師や市の委嘱を受けた母子保健推進員と継続的に実施できる体制を築いています。

病院と密な連携可能に 千葉県松戸市
 千葉県松戸市は、2016年4月から市内3カ所に「親子すこやかセンター」(子育て世代包括支援センター)を設置。保健師や助産師、社会福祉士の3職種が勤務し、妊産婦の個々の状況に応じた支援を心掛けています。
 松戸市では、母子健康手帳の交付時に保健師が原則、全ての妊婦と面談します。健康チェックや保健・福祉制度の情報を伝える中で、支援を必要とする場合は同センターにつなぎ、個々の支援プランを作成。家庭訪問や通院に同行するなどを通じて、母親が抱える悩みに寄り添っていく体制を整えました。
 妊娠期の支援に力を入れることで、育児においても密接に関わることができ、切れ目のない支援を可能にしました。
 松戸市子ども家庭相談課母子保健担当室の渡辺節子室長は、「すこやかセンターを設置したことで、医療機関との連携が密になった。顔の見える関係ができたことで、一歩踏み込んだ支援につながっている」と語っています。