
4月24日、国の原子力規制委員会は定例会で、再稼働している原子力発電所でテロ対策の施設が期限までに設置できない見通しになっていることについて、期限の延長は認めず、間に合わなかった原発は原則として運転の停止を命じることを決めました。鹿児島県にある川内原発はすでに期限まで1年を切っていて、九州電力は施設の設置が間に合わないとしていることから運転が停止される可能性が出てきました。
原子力発電所のテロ対策の施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれています。航空機によるテロ対策などのため予備の制御室などを備えた施設で、再稼働に必要な原発の工事計画の認可から5年以内に設置することが義務づけられています。原子炉から100m以上離れた場所に予備の制御室や電源、ポンプなどを備え、遠隔で原子炉を冷却することができ、施設がある場所はテロ対策上、明らかにされていません。当初は平成25年の新規制基準の施行から5年、平成30年7月までに設置することとされていました。しかし多くの原発で審査が長期化したことから、平成27年に、再稼働に必要な原発の工事計画の認可から5年以内に設置すると方針を見直し、期限を結果的に延長していました。
しかし、「特定重大事故等対処施設」設置には多大な時間と費用がかかり、九州電力、関西電力、四国電力の5原発10基では期限より1年から2年半遅れる見通しで、原子力規制委員会に延長を求めていました。
特に、もっとも早く再稼働した鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機は来年3月が期限であり、対処施設の完成までにはあと2年ほどかかる見通しです。
会議後の記者会見で、更田豊志委員長は「基準を満たしていない状態になった施設の運転を看過することはできない」と述べました。また「工事に対する見通しが甘かったし、規制当局への出方も甘かった。何とかなると思われたとしたら大間違いだ」と述べ、期限が迫る中で間に合わないと訴え始めた事業者の姿勢を厳しく批判しました。
そのうえで「運転中の原発がテロ対策施設の設置期限を仮にきょう迎えたとしても、きのうときょうではリスクは変わらない。しかし、設置に手間取るとか、もう少し時間がかかるとかということを繰り返していたら、これは新しい規制の精神では安全の向上につながらず、いつか来た道に戻るかどうかの分かれ目だ」と述べ、事業者の事情を考慮して規制の在り方を変えたら福島第一原発の事故の教訓から学んでいないことになるとの見解を示しました。
こうした原子力規制委員会の見解に対して、九州電力は「安全性をさらに高めようと設計の見直しを重ねた結果、施設の配置場所を確保するのに必要な固い岩盤の掘削などの土木工事が、想定より大規模で難しいものになってしまった」と説明しています。そのうえで「今後の対応についてはしっかりと検討して参りたいと考えています。テロ対策の施設はさらなる安全向上のために必須のものとして認識しているので、早期の完成に向けて引き続き最大限の努力を続けて参ります」とするコメントをマスコミに発表しました。
電力各社は4月17日、「特定重大事故等対処施設」について、工事が大規模で時間がかかっているとして完了時期が遅れる見通しを明らかにしています。
それによりますと、最も早く再稼働した鹿児島県にある九州電力の、川内原発1号機では来年3月の期限をおよそ1年超え、2号機は来年5月が期限で同じくおよそ1年遅れるとしています。
福井県にある関西電力の高浜原発では、3号機と4号機がそれぞれ来年8月と10月が期限でおよそ1年遅れるとし、1号機と2号機は再来年6月の期限からおよそ2年半遅れる、としています。
また、大飯原発の3号機と4号機はいずれも3年後が期限でおよそ1年遅れる見通し、美浜原発3号機は再来年が期限でおよそ1年半遅れる見通しです。
愛媛県にある四国電力の伊方原発3号機は再来年が期限で、およそ1年遅れるとしています。
佐賀県にある九州電力の玄海原発3号機と4号機も3年後の期限には間に合わない見通しで、
茨城県にある日本原電の東海第二原発は4年後が期限ですが着工のめども立っていないということです。
期限に間に合わないか、めどが立っていない原発が7原発13基に上っています。このうち高浜原発の1号機と2号機、美浜原発3号機、東海第二原発を除く、5原発9基がすでに再稼働しています。
東海第2原発の再稼働問題にも「特定重大事故等対処施設」は重要な影響
東海第2原発は、昨年11月に再稼働に必要な工事計画の認可が下ろされました。つまり5年以内(2023年11月まで)に「特定重大事故等対処施設」を完成させなくてはなりません。日本原電は「着工のめども立っていない」と説明しているように、「特定重大事故等対処施設」の完成の可能性はありません。工事に要する時間的な問題でだけではなく、実は大きな課題はその費用です。
再稼働に至る追加工事の費用は1740億円といわれてきましたが、当ブログ「東海第2原発、安全対策費が3000憶円に膨張/東電が1900億円を支援?」(http://blog.hitachi-net.jp/archives/51702397.html)の記事で紹介したように、その費用は倍近くに膨れ上がっています。ここでいう3000億円に「特定重大事故等対処施設」の設置費用が含まれているかどうかは確認できませんが、安全対策費が膨大になっていることは事実です。まお、専門家の間では、東海第2原発の「特定重大事故等対処施設」設置には1500億円以上かかるともいわれています。
東海第2原発再稼働の課題として「特定重大事故等対処施設」の建設計画を注視していきたいと思います。
特に、もっとも早く再稼働した鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機は来年3月が期限であり、対処施設の完成までにはあと2年ほどかかる見通しです。
会議後の記者会見で、更田豊志委員長は「基準を満たしていない状態になった施設の運転を看過することはできない」と述べました。また「工事に対する見通しが甘かったし、規制当局への出方も甘かった。何とかなると思われたとしたら大間違いだ」と述べ、期限が迫る中で間に合わないと訴え始めた事業者の姿勢を厳しく批判しました。
そのうえで「運転中の原発がテロ対策施設の設置期限を仮にきょう迎えたとしても、きのうときょうではリスクは変わらない。しかし、設置に手間取るとか、もう少し時間がかかるとかということを繰り返していたら、これは新しい規制の精神では安全の向上につながらず、いつか来た道に戻るかどうかの分かれ目だ」と述べ、事業者の事情を考慮して規制の在り方を変えたら福島第一原発の事故の教訓から学んでいないことになるとの見解を示しました。
こうした原子力規制委員会の見解に対して、九州電力は「安全性をさらに高めようと設計の見直しを重ねた結果、施設の配置場所を確保するのに必要な固い岩盤の掘削などの土木工事が、想定より大規模で難しいものになってしまった」と説明しています。そのうえで「今後の対応についてはしっかりと検討して参りたいと考えています。テロ対策の施設はさらなる安全向上のために必須のものとして認識しているので、早期の完成に向けて引き続き最大限の努力を続けて参ります」とするコメントをマスコミに発表しました。
電力各社は4月17日、「特定重大事故等対処施設」について、工事が大規模で時間がかかっているとして完了時期が遅れる見通しを明らかにしています。
それによりますと、最も早く再稼働した鹿児島県にある九州電力の、川内原発1号機では来年3月の期限をおよそ1年超え、2号機は来年5月が期限で同じくおよそ1年遅れるとしています。
福井県にある関西電力の高浜原発では、3号機と4号機がそれぞれ来年8月と10月が期限でおよそ1年遅れるとし、1号機と2号機は再来年6月の期限からおよそ2年半遅れる、としています。
また、大飯原発の3号機と4号機はいずれも3年後が期限でおよそ1年遅れる見通し、美浜原発3号機は再来年が期限でおよそ1年半遅れる見通しです。
愛媛県にある四国電力の伊方原発3号機は再来年が期限で、およそ1年遅れるとしています。
佐賀県にある九州電力の玄海原発3号機と4号機も3年後の期限には間に合わない見通しで、
茨城県にある日本原電の東海第二原発は4年後が期限ですが着工のめども立っていないということです。
期限に間に合わないか、めどが立っていない原発が7原発13基に上っています。このうち高浜原発の1号機と2号機、美浜原発3号機、東海第二原発を除く、5原発9基がすでに再稼働しています。
東海第2原発の再稼働問題にも「特定重大事故等対処施設」は重要な影響
東海第2原発は、昨年11月に再稼働に必要な工事計画の認可が下ろされました。つまり5年以内(2023年11月まで)に「特定重大事故等対処施設」を完成させなくてはなりません。日本原電は「着工のめども立っていない」と説明しているように、「特定重大事故等対処施設」の完成の可能性はありません。工事に要する時間的な問題でだけではなく、実は大きな課題はその費用です。
再稼働に至る追加工事の費用は1740億円といわれてきましたが、当ブログ「東海第2原発、安全対策費が3000憶円に膨張/東電が1900億円を支援?」(http://blog.hitachi-net.jp/archives/51702397.html)の記事で紹介したように、その費用は倍近くに膨れ上がっています。ここでいう3000億円に「特定重大事故等対処施設」の設置費用が含まれているかどうかは確認できませんが、安全対策費が膨大になっていることは事実です。まお、専門家の間では、東海第2原発の「特定重大事故等対処施設」設置には1500億円以上かかるともいわれています。
東海第2原発再稼働の課題として「特定重大事故等対処施設」の建設計画を注視していきたいと思います。
「特定重大事故等対処施設」は、どんなもの?日本原子力文化財団
故意による大型航空機の衝突やその他のテロリズムなどを想定して、原子力発電所の安全を確保するための施設です。
「特定重大事故等対処施設」は、大型航空機の衝突やその他のテロリズムなどがあっても、放射性物質の異常な放出を抑えるために必要な設備を備えます。
新規制基準では、テロリズムによって原子炉を冷やせなくなり、炉心の著しい損傷が発生するおそれがある場合、または発生した場合でも、この施設で原子炉格納容器の破損による外部への放射性物質の異常な放出を抑制することを求めています。
施設には、事故時に放射性物質を減らしたうえで排気を行い、格納容器の圧力を下げる「フィルタ付きベント」が備えられます。また、原子炉内の圧力を遠隔操作で下げる設備、緊急時の制御室、炉心や格納容器への注水ポンプ、発電機などが整えられます。
さらに、施設を設置する場所は、原子炉建屋と同時に破損することを防ぐために必要な離隔距離(例えば100m以上)を確保すること等とされ、外部からの支援が受けられるまで少なくとも7日間は、機能を保持することが求められています。
この施設は、送水車などの可搬型設備による安全対策をバックアップする施設であることから、設置計画は工事計画認可から5年以内とされています。