5月8日付けの朝日新聞の社説に、「東海第二原発『茨城方式』が問われる」が掲載されました。
東海第2原発を運営する日本原電と周辺の6市村(東海村、日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市、水戸市)とは、昨年(2018年)新たな原子力安全協定を結びました。東海第2原発の再稼働について、6市村の「事前協議で実質的に事前了解を得る」と規定しています。6市村側は当然、「協定を結んだ1つの市、村が再稼働に反対すれば、再稼働させることはできない」と理解しするのは当然です。これは、事前了解というよりも拒否権と表現すべき内容です。
しかしもう一方の当事者である、日本原電は「とことん協議する」などと、あいまいな態度を続けています。こうした基本的な確認もないままに、多額の安全工事費の支出などはけしからんと朝日新聞は主張しています。
この事実認識には、全く異論がありません。しかし、社説までにするのならば、2点不満が残ります。
その第1は、「少なくとも1740億円と見込まれる費用」と朝日新聞は記載していますが、別の朝日新聞の記事では、原電と支援を行う電力会社は3000億円規模の資金を調達するといわれています。再稼働に必要な「特定重大事故等対処施設」の建設に1500億円以上が必要だとされているためだと推測されますが、この記事と社説との整合性が感じられません。
参考:東海第2原発、安全対策費が3000憶円に膨張/東電が1900億円を支援?/http://blog.hitachi-net.jp/archives/51702397.html
参考:原発再稼働問題:テロ対策の施設「特定重大事故等対処施設」の設置ができなければ運転停止/http://blog.hitachi-net.jp/archives/51705811.html
第2に、なぜこのような巨額の投資をしてまで日本原電は再稼働を目指すのかという視点が、全く欠落しています。再稼働しても運転できるのは15年程度。仮に3000億円を15年で償還するとすると、毎年金利を除いても200億円を返さなければなりません。こうした経済的合理性のない再稼働を、日本原電が選ぶ理由を明確にしなければなりません。再稼働反対を叫ぶだけではなく、しっかりと掘り下げた報道を望みます。
東海第2原発を運営する日本原電と周辺の6市村(東海村、日立市、常陸太田市、那珂市、ひたちなか市、水戸市)とは、昨年(2018年)新たな原子力安全協定を結びました。東海第2原発の再稼働について、6市村の「事前協議で実質的に事前了解を得る」と規定しています。6市村側は当然、「協定を結んだ1つの市、村が再稼働に反対すれば、再稼働させることはできない」と理解しするのは当然です。これは、事前了解というよりも拒否権と表現すべき内容です。
しかしもう一方の当事者である、日本原電は「とことん協議する」などと、あいまいな態度を続けています。こうした基本的な確認もないままに、多額の安全工事費の支出などはけしからんと朝日新聞は主張しています。
この事実認識には、全く異論がありません。しかし、社説までにするのならば、2点不満が残ります。
その第1は、「少なくとも1740億円と見込まれる費用」と朝日新聞は記載していますが、別の朝日新聞の記事では、原電と支援を行う電力会社は3000億円規模の資金を調達するといわれています。再稼働に必要な「特定重大事故等対処施設」の建設に1500億円以上が必要だとされているためだと推測されますが、この記事と社説との整合性が感じられません。
参考:東海第2原発、安全対策費が3000憶円に膨張/東電が1900億円を支援?/http://blog.hitachi-net.jp/archives/51702397.html
参考:原発再稼働問題:テロ対策の施設「特定重大事故等対処施設」の設置ができなければ運転停止/http://blog.hitachi-net.jp/archives/51705811.html
第2に、なぜこのような巨額の投資をしてまで日本原電は再稼働を目指すのかという視点が、全く欠落しています。再稼働しても運転できるのは15年程度。仮に3000億円を15年で償還するとすると、毎年金利を除いても200億円を返さなければなりません。こうした経済的合理性のない再稼働を、日本原電が選ぶ理由を明確にしなければなりません。再稼働反対を叫ぶだけではなく、しっかりと掘り下げた報道を望みます。
東海第二原発「茨城方式」が問われる
(朝日新聞社説2019/5/8)
相手の同意を得るめどがたたないのに、「見切り発車」で原発を動かす準備を進め、外堀を埋めていく。そんなやり方では、地元の不安や疑問は深まるばかりではないか。
東海第二原発(茨城県)の再稼働をめざす日本原子力発電(原電)が、地元で住民説明会を始めた。原子力規制委員会の審査結果や、新規制基準に対応する安全対策工事について説明し、理解を広げるねらいだ。
原電は昨年、地元6市村と安全協定を結んだ。再稼働について、協定は「事前協議で実質的に事前了解を得る」と定める。ただ、6市村すべての同意が必要なのか、肝心の点がはっきりせず、原電と6市村の間で解釈の食い違いが表面化している。
地元側には「1市村でも納得しなければ再稼働に進めない」との受け止めが多い。しかし、原電は「とことん協議する」などと、あいまいな態度を続け、不信を招いている。
事実上の同意権を、県と立地市町村だけでなく、周辺まで広げた「茨城方式」は、今の再稼働手続きの欠陥を正すうえで、意義が大きい。事故のリスクや避難対策を負わされる周辺市町村が、関与を望むのは当然のことだ。原発がある他の地域も茨城の動向を注視する。
原電が新協定を結んだのは、広く地元の信頼を得るためだったはずだ。6市村の意向に沿って運用しなければならない。
新協定で同意のハードルは大幅に上がり、6市村との協議をどう進めるかも見えない。それでも原電は今後、安全対策工事を本格化させる構えだ。再稼働に向けて既成事実を積み重ねるような姿勢は、地元に対し不誠実だと言わざるを得ない。
東海第二は東日本大震災で被災した古い原発で、住民らの不安は根強い。県内市町村の半数以上で、議会が再稼働に反対する趣旨の意見書などを可決した。30キロ圏内の人口は全国の原発で最多の94万人にのぼり、市町村の避難計画づくりは難航している。県も独自に安全性の検証作業を続けている。
原電は地元の不安や要望に真摯(しんし)に向き合い、自治体や住民らとの対話に注力すべきだ。
工事を進めると経営上のリスクや責任も生じる。
少なくとも1740億円と見込まれる費用を、経営難の原電は自力で調達できず、株主の東京電力などに支援してもらう方針だ。福島の原発事故を起こして実質国有化された東電には、とりわけ重い説明責任がある。
地元同意を得られなければ、この巨額の資金は無駄になる。その場合、関係各社の経営陣は、結果責任を厳しく問われることも忘れてはならない。