7月20日、常陸太田で知人に会い高萩に向かう途中、広域農道に入る交差点に看板を見つけました。「カメラ→」という目立たない小さなサインボードです。その看板に導かれ、細い脇道に入り急な坂を上っていきました。
そしてたどり着いたのが、「谷間のカメラ資料ハウス」です。玄関に付いたドアホンを押すと、この資料館のご主人・和田三蔵さんの息子さん勝美さんが温かく迎えてくれました。「看板をみてやってきました。中を拝見できますか?」「どうぞ、どうぞ、中で父は作業中です」と、初対面の私に丁寧に資料館の中を案内して下さいました。
この資料館は、2018年6月、常陸太田市町屋町の和田さんの自宅を改造して開館されました。1840年に作られた銀板写真のカメラから、昭和末期に製造された一眼レフカメラまで、カメラの歴史と変遷が分かる貴重な名機が、300台以上並んでいました。19世紀に活躍した写真技術の先駆者たちの資料なども展示し、カメラのルーツに触れることができます。
100年以上前のフランス製の幻灯機と、写真が立体的に見えるステレオカメラ。伝説の1925年製のライカ、太平洋戦争中の日米の軍用機搭載カメラなど、マニア垂ぜんのコレクションが並んでいます。私が、写真に興味を持ちだした頃のペンタックスやニコンFなども並んでおり、当時の思い出が蘇ってきました。
映画「ある町の高い煙突」で再評価が高まっている、入四間村の青年リーダー・関右馬之丞氏が愛用したカメラも、同型のものがそのままコレクションされており驚かされます。
カメラだけではなく、写真のプリント(引き延ばし)に使う引き伸ばし機や35ミリの映写機まで所蔵されています。入り口付近には、鉱石ラジオや真空管ラジオの貴重なコレクションも展示されています。
和田三蔵さんは、日立市内で鉄工所を経営していました。小学生のとき、当時絶大な人気があった「トーゴーカメラ」を母親に買ってもらい、以来、80年以上にわたって写真撮影やカメラの製造、そしてコレクションに熱心に携わってきました。
2007年には、つくば市内の愛好家とともに、19世紀に作られたダゲレオタイプ(銀板写真)のカメラを復元するなど、歴史的なカメラの殿堂ともいえる日本カメラ博物館も、和田さんのコレクションと技術には注目しています。
こんな素晴らしいコレクションが、ひっそりとこんな場所に展示されているのかと、写真ファンならずとも是非訪れてみてほしい場所です。