消防団スマート情報システム
 自治体が災害時の被災状況や防災情報を的確に素早く伝える手段の一つとして、SNS(LINE)の活用が広まっています。台風15号で広範囲に被害を受けた千葉県でも、復旧支援の手段として、SNSの有用性が再確認されました。

■消防団が被災状況共有/LINEで全体像迅速に把握/神戸市
 神戸市は2019年9月から、災害発生時に消防団員が、無料通信アプリ「LINE」を活用して被災情報を共有する「消防団スマート情報システム」を導入しています。
 このシステムは、LINEアプリ内にある自動対話プログラム「防災チャットボット」を使用。災害発生時には、市消防局がチャットボットを通じて事前に登録を済ませた消防団員に周辺の被害状況を報告するよう一斉にメッセージを送信。連絡を受けた団員は、位置情報や被害状況を写真や文章で報告します。被災状況はアプリ上で順次集約され、地図上に表示される仕組みです。地図情報は、市消防局や団員全員が確認できます。
 神戸市消防局警防部の菊地勝治消防団支援課長は「これまでの情報共有の手段は、無線や電話でのやりとりだけだった。LINEを活用することで効率的に災害の全体像を把握することができる」と期待を込め語ります。このシステムを使えば、被災現場から付近の団員に応援要請ができるほか、想定以上に被害が大きい場合は団員に対して迅速に待避指示をすることも可能になります。
 神戸市によると、市内の消防団員3772人に対し、10月1日現在で登録者数が1000人を超えました。阪神・淡路大震災から25年の2020年には、市民向けシステムの導入も計画され、1月17日に実証実験を行う予定です。
■現在地から避難所案内/来春、本格運用へ/福岡市
 福岡市では9月から、地震や豪雨の発生時に、避難時の注意点や近くの避難所を案内するサービスのデモ運用を始めました。LINEの市公式アカウントに機能を追加する。本格運用は来年4月を予定しています。
 福岡市アカウントの画面上にある「デモ体験」機能では、震度6強の地震が発生したと想定し、チャット形式でやりとりを進めることができる。「屋内」「屋外」「乗り物内」のどこで被災しているかを選択した後、「職場」「山・丘陵地」など細かい場所を再度、選択すると、選んだ場所に応じた注意点が提示されます。
 また、自身の位置情報を送信すると、近くの避難所と経路が案内されるほか、家族に避難を知らせる機能もあります。
 市防災・危機管理課の担当者は、「ホームページなどで被災時の対応や避難所を紹介しているが周知が難しい。新たな機能で災害時にいち早く適切な情報をつかんでもらえれば」と話しています。

■ツイッター使い物資確保/千葉県各地で
 台風15号による大規模停電で甚大な被害を受けた千葉県各地でも、SNSを活用し復旧に役立てる動きがありました。
 千葉市は9月12日、ネット通販大手アマゾンの「ほしいものリスト」に必要な物資を登録して公開。その後、市や市長のツイッターなどでブルーシートの募集を拡散すると、一日で946枚が集まりました。追加で募ったLEDランタン、ヘッドライトも翌日には募集分を確保しました。千葉市防災対策課の担当者は「今後も活用していきたい」としています。
 また、同県山武市でも同じ方法を活用し救援物資を要請したところ、ブルーシートや水、乾電池などが翌日には集まりました。