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 災害救助法の「応急修理制度」は、地震や風水害などの大規模自然災害により被災した住宅について、日常生活に欠くことのできない部分の応急的な修理を実施するための法律です。仮設住宅やみなし仮設住宅(民間賃貸住宅)等の提供を受けずに元の被災した住宅に住み続ける被災者の生活再建を支援することを目的とする制度です。半壊または大規模半壊でも、その住宅に住み続けようとする被災者には、59万5000円以内の現物給付による応急修理が受けられます。また、台風15号の被災以来、一部損壊であっても(準半壊)、30万円以内の修理が受けられるようになりました。(現物支給とは、修理それ自体を自治体が指定する業者が行うことです。現金支給はありません)
 しかし、応急修理制度は中越地震の被災者支援のために制度設計されたという経緯もあり、今回のような水害には使いづらい制度でした。その適用範囲は「屋根等の基本部分、ドア等の開口部、上下水道等の配管・配線、トイレ等の衛生設備の日常生活に必要欠くことのできない部分」と規定されており、水害での主な被害である「畳の交換(畳をフローリングに替える)、床の修理、壁紙の張り替え、石膏ボードや断熱材の交換など」には使用できないという欠点があります。これら浸水部材は、交換しないとカビによる健康被害の恐れや臭いによる居住困難、更には、寒冷地では断熱性の喪失による寒さが深刻になります。また、畳の交換(フローリング含む)は生活そのものを維持するためには非常に重要な修理箇所です。
 応急修理制度の運用の見直しを従前より重ねて提案していた茨城県議会公明党は、11月19日、大規模災害時の生活再建策に造詣が深い長岡科学技術大学・木村悟隆准教授(工学部生物機能工学専攻生物材料工学講座)の助言もあり、公明党災害対策・防災・減災・復興推進本部(本部長=石井啓一幹事長代行)あてに提案書「応急修理制度の運用変更について−【内壁や断熱材の入れ替えにも使える様に】」を提出しました。これを受け、石井幹事長代行(前国土交通大臣)、平木大作参議院議員が、政府(内閣府)に申し入れを行いました。
同様の見直しに対する要望は各所から寄せられていたものと思慮され、11月21日付で具体的に応急修理制度の適用範囲を拡大する「災害救助法による住宅の応急修理に関するQ&A」が作成され、翌22日に各被災自治体に明示されました。その変更内容は、いち早く11月25日付けの福島県いわき市のHP(http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1571293068487/index.html)にも掲載されました。そのポイントを以下に示します。
◎台風の被害と直接関係のある修理のみが対象です。
◎内装に関するものは原則として対象外ですが、次の場合が応急修理制度の適用対象となりました。
・壊れた床(下地)と合わせて畳等の補修を実施する場合は、必要最小限の範囲を限度として、壊れた外壁とともに壁紙の補修を実施する場合は、当該壁の部分に限り対象。
・床は6畳相当を限度とした制限がなくなりました。
・悪臭や汚れがひどく、日常生活に支障がある等の理由で、畳や内壁、断熱材、石膏ボード等を修理する場合。
・修理が早い、価格が安い等の理由で、畳をフローリングに仕様変更する場合。
・ふすま、障子、内部ドア等の枠組みが破損によって、日常生活に支障がある場合(ただし、ふすま、障子の張替えだけで済む修理は対象となりません)。
◎応急修理により発生する産業廃棄物の運搬・処分費が対象となりました。
◎システムキッチンとして一体となった調理器具(ガスコンロ、IHクッキングヒーター)の修理・交換が対象となりました。
 今回の応急修理制度の運用見直しは、水害対応としては画期的な内容です。準半壊(30万円支援)の導入と相まって、政府の被災者支援の本気度を占める結果になったと思います。
 実際の運用は、市町村が行いますので、市町村支援窓口と十分話し合って応急修理制度を積極的に活用していただきたいと思います。
 資料として、自治体に配布された「Q&A」を転載します。
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