山口那津男代表の代表質問
 1月24日、参議院は安倍晋三首相の施政方針演説などに対する各党代表質問を行いました。公明党の山口那津男代表は、2020年代の幕開けとなる今年が「日本の未来を開く重要な一年」と力説。10年後の30年が目標達成年次である国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」や、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の実現をめざし、日本が国際社会をリードする役割を担うよう主張しました。また、全世代型社会保障や防災・減災・復興、経済対策などの具体策を盛り込んだ今年度補正予算案と来年度予算案の早期成立も訴えました。
 このブログでは、SDGsの推進、子育て支援の充実、防災減災の取り組み推進の3つの項目の質問を紹介します。

■SDGs、行動の10年
 はじめに、30年に向けて、本年から「行動の10年」がスタートするSDGsについて伺います。
 昨年末に改定された日本の実施指針には、「ビジネスとイノベーション(技術革新)」「地方創生」「次世代・女性のエンパワーメント(内発的な力の開花)」の3本柱を中核とする「日本のSDGsモデル」展開の加速化が掲げられています。
 地方自治体や民間企業など多様な担い手が一体となったオールジャパンでの取り組みが必須であるとして、「公共と民間の垣根を超えた連携の推進」が重要と指摘しています。
 これまでSDGs推進に向けて民間団体などと交流を重ねてきた公明党も同様に考えます。
山口那津男代表の代表質問
■少子化対策/教育費負担軽減さらに
 人生100年時代に対応し、誰もが安心して暮らすことのできる全世代型社会保障制度の構築に向け、年金、医療、介護などの制度改革を着実に進める必要があります。
 今国会では、年金、介護、雇用などの法案提出が予定されていますが、順次、改革を進め、若者から高齢者まで、お一人お一人の活躍を最大限に後押ししていくべきです。
 とりわけ、少子高齢化と人口減少が同時に進む日本では、子育て世代への支援は最優先の課題です。
 少子化の問題は、教育費など経済的な負担や、仕事と子育ての両立の難しさ、子育て中の孤立感や負担感、出会いの機会の減少、年齢や健康上の理由など、さまざまな要因が挙げられます。重要なことは、こうした要因を着実に解決して、希望する女性や若い世代が安心して子どもを産み育てられる社会をつくることです。
 政府が夏までにまとめる全世代型社会保障の最終報告では、少子化対策を柱としてしっかりと位置付け、抜本的な強化に取り組むべきです。

■保育の質の向上
 少子化が進むさまざまな要因がある中で、多くの方が教育費の負担軽減を望んでいます。
 昨年10月から幼児教育・保育の無償化が始まり、喜びの声が多数寄せられる一方、保育の質や保育士不足などの課題も指摘されました。そこでわが党は昨年末までに「幼児教育・保育の無償化に関する実態調査」を行いました。
 この調査の中間報告では、利用者の約9割が無償化を評価し、今後取り組んでほしい一番の政策について、約5割の方が「保育の質の向上」を挙げています。また、保育の質を高めるために、「処遇改善」が必要と答えた事業者が約8割に上りました。
 この結果を踏まえ、政府においては、保育士などの処遇改善や職員配置の改善に必要な安定的な財源確保などに取り組んでいただきたい。
 さらに、共働き世帯が増える中、夜間の保育ニーズが高いことも分かりました。夜間保育所に加え、小学校に上がってからも預け先が確保できるよう、受け皿整備を進めていくべきです。

■高等教育の無償化
 幼児教育に加え、本年4月からは、わが党が推進した「私立高校授業料の実質無償化」「高等教育の無償化」も実現します。これまで自治体独自で実施してきた私立高校授業料の支援は、国からの補助が加わることで、自治体におけるさらなる拡充に向けた環境が整います。東京都のように、子ども3人以上の世帯は、収入に関係なく授業料の負担軽減を行うなど、多子世帯への支援も期待できます。
 高等教育無償化についても、多子世帯や中間所得世帯の負担に配慮した取り組みが求められています。高校などの専攻科についても、4月から教育費の負担軽減が実施されますが、今後さらなる拡充を検討していくべきです。

■命守る防災・減災/自助・共助の取り組み促進を
 昨年は台風災害が相次ぎ、各地で甚大な被害をもたらしました。
 被災地では、今も損壊したままの自宅や仮設住宅で暮らす方々が数多くいます。農林漁業者や中小事業者の方々は厳しい状況の中、将来不安を抱えながら奮闘しています。一昨年、発生した豪雨、地震被害などの被災地もいまだ復興途上にあります。
 被災現場のニーズや課題は常に変化し多様化しており、こうした状況にきめ細かく対応しながら、被災者が希望をもって、安心した生活を取り戻せるよう全力を挙げるべきです。
 昨年の台風災害において公明党の議員は、被災現場を奔走し、そこで寄せられた数多くの声を、国と地方の議員ネットワークを生かして直接、政府に届けてきました。
 こうした現場の声を踏まえ、被災地の早期復旧・復興や、次の台風襲来に備えた「風水害対策」を促進するための施策が、今年度補正予算案と来年度予算案に盛り込まれています。両予算案の早期成立と円滑な執行が重要です。
 首都直下地震や南海トラフ地震など大規模地震による広域災害も常に懸念されており、さまざまな緊急事態を想定した万全な危機管理体制の構築とともに、防災・減災、インフラ老朽化対策を強力に進めなければなりません。

■女性の視点を生かす防災対策
 被災自治体のこれまでの災害対応の経験や教訓を、被災経験の少ない自治体など全国の自治体と共有し、今後の防災対策に生かすことが重要です。
 例えば、ハザードマップ(災害予測地図)の住民への周知と避難につながる活用、避難情報の発令と伝達、避難所の適正配置、災害弱者の個別避難計画の策定など「災害対応力の強化」に向け、徹底した検証と対策を進めなければなりません。
 私は昨年、台風19号の被災地に女性議員とともに行った際、一人の女性被災者から「避難所に女性スタッフがおらず、女性ならではの相談がしにくい」との声を聞きました。すぐにその声を市長に届け、速やかに市内全ての避難所に女性スタッフが配置されました。
 防災対策に「女性の視点を生かす」ことは、子どもや高齢者、障がい者など「災害弱者の視点を生かす」ことにもつながります。防災計画などへの反映とともに、避難所における現場でも着実に実行すべきです。

■災害を「わがこと」に
 災害に強い社会を構築する上で、産業界や学術研究機関などとの連携も重要です。近年、防災・減災に役立つ技術や製品の開発が活発化しています。
 防災関連産業や研究開発などの振興は、国民の防災意識を啓発し、自助・共助を促し、発災時には国民の命と暮らしを守るとともに、早期の復旧・復興にもつながります。
 災害から命を守るために最も重要な視点は、「防災・減災・復興」を社会の主流に押し上げ、災害を「わがこと」として捉える当事者意識を国民一人一人が持つことです。それは、災害に強い社会の構築に向けた大きな土台となります。
 そのためには、防災教育をはじめ、住民の避難行動につながるマイ・タイムライン(自分の防災行動計画)や災害避難カードなどの活用、地域における自主防災組織、地区防災計画などの自助・共助の取り組みを全国各地で促進すべきです。