2015年に採択された国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2030年の目標達成年次までを「行動の10年」として、取り組みを加速させています。今後のSDGsの展望などについて国連広報センター所長の根本かおる氏のインタビュー記事を掲載します。(2020年3月6日公明新聞より)
国連広報センター所長の根本かおる氏

――SDGsの採択から5年。現状の認識を。
根本かおる所長 いろいろ良い取り組みは生まれているが、2030年までに達成できるめどが立っておらず、国連が発破を掛けているのが端的な現状だ。この5年は、いわば助走期間。認知度をある程度高め、取り組みを広げているところだ。
 今年1月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は会合で、国連創設75周年の今年、四つの脅威として核競争を含めた国際の平和と安全への危機や気候危機、政治のリーダーシップに対する信頼の喪失、デジタル技術の負の側面の四つを挙げた。SDGsは、30年に向けたロードマップ(行程表)を示した世界の“羅針盤”であり、このような国際の平和と安全、開発、人権といった分野を全てつなげて考え、包括的に解決へ取り組む必要がある。
 そうした背景を踏まえ、今年は、もう一段も二段もギアを上げて取り組みを拡大・加速する本格実施の段階に突入していかねばならない。

――グテーレス事務総長が提唱した「行動の10年」で重要な課題は。
根本所長 グローバル(国際)、ローカル(各国や自治体、企業など)、インディビジュアル(個人)という三つのレベルからのアクション(行動)が重要だ。
 まず世界的に方向を決める。そして、国や地域などで政策的な誘導を行う。それが呼び水になって大胆な取り組みが数多く生まれ、潮流になる。同時に、一人一人が思いを持って自分にできることを最大限に実践する。この三つが合わさった時に大きな力を発揮できるのではないか。
 その意味では、日本では、20年度から小学校の学習指導要領にSDGsが盛り込まれる。子どもの頃から世界の課題と自分の身の回りの課題をつなげて考える思考力を持ち、「自分に何ができるのか」と意見を出し合いながら行動の一歩を進めることは特に重要だ。教育での推進は一番の希望だ。
 「行動の10年」で、人類にとって最大の脅威であり、切迫感を持つべき課題は気候変動だ。これに手をつけないと、私たちが積み上げた経済活動や日々の暮らしが気候災害で吹っ飛んでしまう。昨年の台風19号は、19年に起きた世界の気候災害で最も経済的損失が大きかった。今や日本は気候災害の影響を受けやすくなっており、他人事ではない。
 もう一つ、格差も優先課題だ。格差の拡大は、日本を含む先進国共通の課題になっている。格差は不平等感を生み、権威を持つ存在に対する不信感を増幅させ、デモや暴動を引き起こしてしまう。

■地方と国、世界をつなぐ重要な柱に
――さらなるSDGs推進に向け公明党への期待は。

根本所長 教育分野で公明党は政府に対して強く提言してくださった。期待しているのは、声なき声に耳を傾ける姿勢だ。さまざまな制度から取り残されがちな人たちに寄り添った制度設計を提言し続けてもらいたい。
 SDGsという共通言語に乗せると、地域の課題を取りまとめた施策は、同じような課題に取り組む世界の仲間と経験や教訓を共有できる。そういう意味でも、公明党には地方と国、世界をつなぐ重要な柱になってほしい。