9月27日に行われた公明党全国大会をオンラインで視聴して、一番驚いたのは石井啓一幹事長の「ベーシック・サービス」に関する幹事長報告でした。
公明党の掲げる福祉政策の柱として「ベーシック・サービス」を検討するという画期的な内容です。ベーシック・サービスに関する検討を行う部門を党内に正式に設けること、給付と財源の両面にわたって検討すること、この2つを政調会長マターではなく、幹事長マターとして具体的に進めることに注目すべきです。
■「ベーシック・サービス」論を検討
公明党は結党以来、全民衆の最大幸福をめざす「大衆福祉」の旗を掲げてきました。社会保障制度の安定と充実に向けた2012年の「社会保障と税の一体改革」では、公明党が主導して民主、自民との3党合意を実現。これをスタートラインにして、従来の年金、医療、介護に教育無償化など子育て支援を加え、老若男女、誰もが安心して暮らせる画期的な全世代型社会保障へと踏み出しました。
2025年以降、団塊の世代全員が75歳以上となり、医療・介護ニーズの急増が予想される一方、社会保障の支え手の減少にも直結する少子化も危機的状況にあります。さらに今回のコロナ禍では、生活保護の申請が急増するとともに、多くの世帯が生活に困窮していることが判明。低所得層だけでなく中間層も含む全ての人を受益者とし、社会に「分断」をもたらさないようにする新たなセーフティーネット(安全網)の整備を求める声が高まっています。
具体策の一つとして注目されているのが、全世代型社会保障の考え方をさらに推し進めた「ベーシック・サービス」論です。これは、医療や介護、育児、教育、障がい者福祉、住まいなど人間が生きていく上で不可欠な基本的サービスを無償化し、「弱者を助ける制度」から「弱者を生まない社会」へと福祉の裾野を大きく広げるものです。ベーシック・サービスに似た手法として、全ての個人に一定額の現金を継続的に給付するベーシック・インカムがありますが、給付の中身がサービスと現金では、決定的に異なります。
公明党はこれまで、全ての消費者の痛税感を緩和する軽減税率の実施、さらに教育無償化や未婚のひとり親への支援など、経済的、社会的理由による分断や格差を生み出さないように、“防波堤”として社会の安定を担う役割を果たしてきました。
誰も置き去りにしない包摂社会を築くためには、従来の枠組みにとらわれず思い切った発想で改革を推進していかねばなりません。三つの視点に言及した中で、包摂社会に「創造的」と冠したのは、不断の改革を断行するという意味を込めたものです。こうした観点からポストコロナ時代における新たなセーフティーネットを構築するため、ベーシック・サービス論を本格的に検討する場を党内に設け、給付と負担の両面から積極的に議論を行っていきたい。
「べージック・サービス」論の提唱者は、慶応大学の井手英策教授。その著書『幸福の増税論〜財政は誰のために~』(岩波新書)で、大要次のように述べています。
安心して生きるには、教育、医療、介護、子育て、障害者福祉など誰もが必要とするサービスが欠かせない。これらのサービスを「ベーシックサービス」と名付け、所得制限を外してみんなに提供していく。これによって、貯蓄がなくても誰もが安心して暮らせる社会、弱者を生まない社会を作ることができる 。
その財源の中心となるのは消費税。これに所得税の累進度を高めたり相続税を引き上げたりして体全体の公平性を担保する。「ベーシックサービス」の実現には1%の税で2.8兆円と、担税能力が高い消費税の引き上げが不可欠。
中高所得層も負担者から受益者に代わる、貧しい人たちも税を負担する。受益の喜びと負担の痛みを分かち合うことで、生活保護の利用者に対するバッシングのような憤りや妬みがなくなり、社会の分断を防げる。
旧民進党の前原代表のブレーンとして知られ脚光を浴びた井手教授。しかし、2017年秋の民進党分裂劇で、その政策の是非を議論・検討する事もなくなってしまいました。
今、公明党は、その「ベーシックサービス」論に光を当てて、冷静に検討し、具体的な議論を進める決断をしました。
本来「ベーシックサービス」という考え方は、公明党の考え方に近いものがあると思っています。
教科書の無償配布、子どもの医療費の無償化、そしてコロナ対策としての10万円の国民全員への給付などなど。ただ、公明党はその財源論に踏み込んで、しっかりと議論した経験がなかったことも事実です。公明党は、ベーシックサービスの何たるかを学び、その具体的な実現策を模索して、勇気をもって国民に提案していってもらいたいと願っています。
参考:誰も置き去りにしない社会保障/慶応大学・井手英策教授インタビュー
公明党はこれまで、全ての消費者の痛税感を緩和する軽減税率の実施、さらに教育無償化や未婚のひとり親への支援など、経済的、社会的理由による分断や格差を生み出さないように、“防波堤”として社会の安定を担う役割を果たしてきました。
誰も置き去りにしない包摂社会を築くためには、従来の枠組みにとらわれず思い切った発想で改革を推進していかねばなりません。三つの視点に言及した中で、包摂社会に「創造的」と冠したのは、不断の改革を断行するという意味を込めたものです。こうした観点からポストコロナ時代における新たなセーフティーネットを構築するため、ベーシック・サービス論を本格的に検討する場を党内に設け、給付と負担の両面から積極的に議論を行っていきたい。
「べージック・サービス」論の提唱者は、慶応大学の井手英策教授。その著書『幸福の増税論〜財政は誰のために~』(岩波新書)で、大要次のように述べています。
安心して生きるには、教育、医療、介護、子育て、障害者福祉など誰もが必要とするサービスが欠かせない。これらのサービスを「ベーシックサービス」と名付け、所得制限を外してみんなに提供していく。これによって、貯蓄がなくても誰もが安心して暮らせる社会、弱者を生まない社会を作ることができる 。
その財源の中心となるのは消費税。これに所得税の累進度を高めたり相続税を引き上げたりして体全体の公平性を担保する。「ベーシックサービス」の実現には1%の税で2.8兆円と、担税能力が高い消費税の引き上げが不可欠。
中高所得層も負担者から受益者に代わる、貧しい人たちも税を負担する。受益の喜びと負担の痛みを分かち合うことで、生活保護の利用者に対するバッシングのような憤りや妬みがなくなり、社会の分断を防げる。
旧民進党の前原代表のブレーンとして知られ脚光を浴びた井手教授。しかし、2017年秋の民進党分裂劇で、その政策の是非を議論・検討する事もなくなってしまいました。
今、公明党は、その「ベーシックサービス」論に光を当てて、冷静に検討し、具体的な議論を進める決断をしました。
本来「ベーシックサービス」という考え方は、公明党の考え方に近いものがあると思っています。
教科書の無償配布、子どもの医療費の無償化、そしてコロナ対策としての10万円の国民全員への給付などなど。ただ、公明党はその財源論に踏み込んで、しっかりと議論した経験がなかったことも事実です。公明党は、ベーシックサービスの何たるかを学び、その具体的な実現策を模索して、勇気をもって国民に提案していってもらいたいと願っています。
参考:誰も置き去りにしない社会保障/慶応大学・井手英策教授インタビュー