自動運転で公道を走るバスの定時運行が、昨年(2020年)11月26日より、茨城県境町でスタートしました。
 全国レベルで公共交通の維持が課題となっている中で、自動運転によって地域住民の足を確保するのが狙い。自治体が自動運転バスを公道で走らせて定時運行するのは、全国初の事例です。
 高齢化や人口減の地域では公共交通網の維持が困難となる中、新たな“生活の足”としてモデルケースとなるか、全国から注目が集まっています。
 境町が購入した自動運転バスは、フランス製「NAVYA ARMA」の3台。町の中心部にある勤労青少年ホームと複合施設「河岸の駅さかい」を結ぶ片道約2.5キロを最高時速18キロで走行します。10分程度の区間を1台1日4往復でスタートし、1月7日からは2台で8往復に倍増させました。
 運賃は無料。衛星利用測位システム(GPS)を利用し登録済みのルートを走り、歩行者などを検知すれば自動で停止します。バスには緊急操作などを担う「オペレーター」と客の乗降などを支援する「保安要員」の2人が同乗しています。定員は11人ですが、コロナ禍の影響で密を避けるため、現在は6人に抑えています。
茨城県境町/全国初の自動運転バスの定時運行
■ふるさと納税を活用
 境町は運行に関する経費予算として5年間で5億2000万円を確保しました。この予算を下支えしているのが、ふるさと納税による寄付金です。2019年度は30億6600万円で、関東地方1都6県の自治体では17、18年度に続き3年連続1位。こうした収入を自動運転バスなどの地域振興に充てています。
 町内に住むお年寄りは、「最初は不安だったが、乗り心地は快適」と語っています。日常の移動では子育て世帯にも好評。3人の子育てをする主婦は、「スーパーや病院の出入り口、農村地域へも路線を広げてもらえれば」と期待しています。

■年内中の路線拡大も計画
 橋本正裕町長は、町民のニーズを踏まえ、「年内には現行路線の便数をさらに増やすことや、新路線の運行も決めている。誰もが快適に移動できる町へ、自動運転バスを町民と共に育てていきたい」と意気込んでいます。
 1月8日、橋本町長とともに推進を訴えてきた公明党の田山文雄町議と茨城県議会公明党議員会の田村けい子県議、八島功男県議が現地調査。
 バスの乗降口は広く、電気自動車で車内は静か。遅いスピードも快適です。進路に人が進入した際、バスは余裕をもって自動停止します。その際は、オペレーターが周囲の安全を確認し、手元のコントローラーで再出発を指示。有人バスと変わらない安全運行を実感でききました。

■地域の“足”確保へ公明が支援訴え
 自動運転バスへの期待が集まる背景には全国的な路線バスの減便・休止があります。国土交通省によると、18年度の全国の乗合バス輸送人員は延べ43億人で、1970年代の101億人と比べると約4割まで減少。バス事業者の約7割は赤字経営の状況にもあります。
 政府は交通弱者対策の一環で、バスなどの「自動運転移動サービス」を進め、2022年度頃には遠隔監視のみの無人自動運転移動サービス、25年度をメドに全国40カ所以上でのサービス展開をめざしています。
 公明党は、誰もが移動に困らない社会の実現をめざし、バスを含む自動走行車の開発・普及に力を注いでいます。16年11月には秋田県仙北市で行われた国内初の自動運転バス公道実験を党国交部会のメンバーが視察するなど各地の実証事業を支援。2020年6月、政府に提出した「骨太の方針」に関する提言でも自動走行車の実用化を強く訴えています。

■人通り多い公道での運行は画期的/東京大学生産技術研究所・須田義大教授の話し
 従来、自動運転バスは公園内の道路や歩道のある道路での実証実験が多かった。今回は、歩道と車道を区別する境界ブロックなどがなく、人通りも多い公道での定時運行という点で画期的だ。地域住民や関係企業、自治体などが連携して実現させた点も高く評価している。自動運転に必要な道路交通法や道路運送車両法の改正などでは、公明党が輩出する国交相や与党が推進役を果たしてくれた。
 今後、安全システムがさらに進歩すれば、オペレーターが不在でも、1人のスタッフで複数のバスを遠隔監視して運行できるようにもなる。人件費の縮小は新たなビジネスモデルにつながり、自動運転バスの開発はさらに促進されるだろう。普及に向けては、スマートフォンで目的地への公共交通などをつなぐ次世代移動サービスの仕組み「MaaS」に組み込むことなどが重要だ。(2021年1月8日付け公明新聞記事より引用)