いよいよ新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が具体化します。
 ワクチンの発症予防効果は、95%といえあれています。この数値について河野太郎ワクチン接種担当相は、首相官邸のホームページに公開した動画で「いつものインフルエンザワクチンの有効率が40〜60%と報告されていることを考えると、高い効果とされています」と説明しています。

■発症者95%減の結果も/海外データ重症化、発熱・せき防ぐ
 新型コロナウイルスのワクチンを接種した場合、重症化や発熱・せきなどの発症を防ぐ効果が海外では明らかになっています。また、ワクチン接種が進めば、重症者や死亡者を減らし、医療機関の負担が減ることも期待されます。
 日本で近く承認の可否が判断される米ファイザー社のワクチンは、16歳以上の4万人超が参加した臨床試験(治験)で「95%の有効性」が示されました。これは、接種した集団での新型コロナ感染症の発症者が、接種しなかった集団の20分の1(95%減)だったことを意味しています。65歳超では94%超の有効性でした。なお、日本でも海外の治験データに基づき、ファイザー製は16歳以上への接種となっています。
 他に日本が供給の契約を結んだ海外メーカーでは、米モデルナ製の有効性は94%。英アストラゼネカ製は、1回の接種で約76%、2回の接種で約82%の有効性があるとの分析結果が、2月3日に発表されました。
 一方、コロナワクチンの効果の持続期間は、まだ十分明らかになっていません。人口の一定割合以上の人が免疫を持つことで、免疫を持たない人も間接的に感染から守られる「集団免疫」の効果があるかどうかも、分かるまでには時間がかかると考えられています。このため、ワクチン普及後も、3密の回避や手洗い・マスク着用などの感染防止策は引き続き必要です。
 変異株については、一般論としてウイルスは絶えず変異しており、小さな変異でワクチンの効果がなくなるわけではありません。その上で、各メーカーは対応を進めており、ファイザー社は、自社ワクチンで、変異した新型コロナにも作用する抗体が作られたとの実験結果を発表しています。
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■急性アレルギーに備えて終了後、会場で経過観察
 新型コロナワクチンは他のワクチンと同様に、何らかの副反応(副作用)が起こる可能性がゼロではありません。しかし、国内外の臨床試験の結果に基づき、有効性や安全性などの厳格な審査をクリアして初めて承認されます。その上で、コロナワクチンの承認・接種開始後に政府は、先行的に接種を受けた人の健康状態の調査を行うとともに、副反応の評価を行う審議会を高い頻度で開くなど、体制を強化して対応に万全を期す方針です。
 厚生労働省が昨年末の審議会に提出した資料などによると、海外ワクチンでは、重大な安全性の懸念は認められなかったとされています。治療を必要としたり、障がいが残ったりするほどの重いケースは極めてまれと言えます。ただ、接種後に接種と因果関係がないものも含めて、接種部位の痛みや、頭痛、倦怠感(だるさ)、筋肉痛などが一定数の人で見られました。小児や妊婦については、現時点では十分なデータはありません。
 日本で近く承認の可否が判断される米ファイザー社製に関しては、打った場所の痛みが66〜83%の人に、2回目の接種後の38度以上の発熱が11〜16%の人に生じたと報告されています。

 インフルエンザなど他のワクチンと同様に代表的な副反応として、接種後の急性アレルギー反応「アナフィラキシー」が挙げられます。先行して接種を始めた米国では、ファイザー社製を接種後、100万人に5人程度起き、そのうち74%が接種後15分以内、90%が接種後30分以内に症状が現れたと報告されています(1月18日時点)。
 こうしたこともあり、日本では「接種後に会場で一定時間様子を見て、万が一、アナフィラキシーが起こっても、医師や看護師が必要な対応を行う」(河野太郎ワクチン接種担当相)ことになります。
 また、接種により健康被害が生じ、医療機関での治療が必要になったり、障がいが残ったりした場合には、予防接種法に基づく救済として、医療費や障害年金などの給付を受けることができます。

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■2月15日に正式承認、17日から医療関係者に先行接種開始
 厚生労働省は、米製薬大手ファイザー社が申請した新型コロナウイルスワクチンを15日に正式承認し、政府は17日にも接種を始める想定で調整を進めています。厚労省の資料によると、接種は大きく3グループに分けて、「医療従事者ら→高齢者→その他の人」の順で行われます。費用は無料です。接種回数は2回の見込みで、ファイザー製の場合、1回目の3週間後に2回目を接種します。
 最初に、国立病院機構などの医療従事者1万〜2万人程度が対象の「先行接種」が始まります。その後は、その他の病院や診療所、薬局、訪問看護ステーションの職員、自治体でコロナ対策業務に携わる職員、感染者らを搬送する救急隊員や海上保安庁職員、自衛隊員ら370万人程度への「優先接種」となります。

 一般の人の接種を担うのは市区町村で、まず重症化リスクの高いとされる65歳以上の高齢者(1957年4月1日以前生まれ)3600万人程度を対象に、4月1日以降に始まります。高齢者施設などでも実施され、その職員も同時に接種することが可能です。
 高齢者の次は、未接種の高齢者施設職員と持病のある人を優先に、全員が対象になります。持病の例として、慢性の呼吸器の病気や、心臓病(高血圧含む)、腎臓病、肝臓病、糖尿病、血液の病気などが示されています。この中には、基準(BMI30)を超える肥満の人も含まれます。

■市区町村からクーポン届いたら予約し会場へ
 接種は、住民票がある市区町村(住所地)の掛かり付け医や大型医療機関、体育館などの会場で受けます。対象者には、市区町村から案内と接種券(クーポン券)が届きます。厚労省の接種総合案内サイトなどから接種を受けられる場所を探し、電話やインターネットで予約。当日は接種券と運転免許証や保険証など本人確認書類を持って会場へ行きます。
 やむを得ない事情がある場合、接種を受ける医療機関のある市区町村に郵送などで申請して「届出済証」の交付を受けて持参すれば、住所地以外で受けられます。病院や施設に入院・入所中の人、持病のある人が主治医の下で接種する場合などは、届け出不要です。