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 茨城県内では今年1月以降、高齢者施設で集団感染が疑われる事例が10件以上報告されています。関連の感染者は職員も含めると計300人を超え、施設内で療養中に亡くなる感染者も相次いでいます。
 厚生労働省によると、同一の場所で2人以上の感染者が出た高齢者施設は、2月22日時点で1061件に上り、この2カ月間で2倍以上に増加しました。医療機関や飲食店など施設別の内訳で、高齢者施設が最も多くなっています。
 厚労省の助言組織・新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは2月24日、「高齢者施設でのクラスター発生事例も継続」との分析を公表し、警戒を呼び掛けています。
 高齢者は重症化しやすいため、施設側はマスクの着用や室内の換気、消毒の徹底、面会の制限など感染防止に細心の注意を払っています。それでもなおクラスターが発生しています。入所者はもちろん、感染リスクに直面しながら仕事を続けている職員らを守るための取り組みを、一段と強化すべきです。

職員に定期的なPCR検査を実施
 具体策の一つが、職員に対するPCR検査の徹底です。
 高齢者施設でのクラスターは、一人の職員の感染から他の職員や入所者に広がっていくケースが多い。PCR検査によって、感染者を早期に把握することは重要です。
 このため政府は2月4日、緊急事態宣言が延長された10都府県を対象に、職員への検査を集中して行うよう通知しました。また、自治体の中にも独自に職員への検査を複数回実施する動きがあります。

感染拡大を抑えるために最新の知見を共有
 感染者や感染した疑いのある人が出た場合に備え、感染拡大を抑えるための手だてについて、最新の知見を共有することも欠かせません。
 約1万1000の高齢者施設が加入する「全国老人福祉施設協議会」は、感染の疑いがある人への▽日常的なケア方法▽病院までの搬送の仕方▽感染の危険性がある部屋や通路などを区分けする「ゾーニング」——などの解説動画を無料で配信中です。感染症専門医が監修しており、ぜひ参考にして感染対策を強化していただきたいと思います。
 政府は都道府県に対し、医師らによる支援チームを編成して高齢者施設に派遣するよう求めています。それぞれの施設の実情に応じた適切な助言で、高齢者施設のクラスター対策を支える必要があります。

介護従事者もワクチンの優先接種を
 さらに茨城県は、2月25日までに、4月以降の高齢者への接種の際、高齢者施設の入所者と職員を優先する方針を決めました。県内でも高齢者施設でクラスター(感染者集団)の発生が相次いでおり、職員の感染リスクを抑え、重症化しやすい高齢者の感染防止につなげるのが目的です。
 国は接種の順番で医療従事者を最優先とし、次いで65歳以上の高齢者、3番目に基礎疾患のある人や高齢者施設従事者を位置付けています。ただ、高齢者施設の職員については条件付きで高齢者との同時接種も認めています。高齢者向けの優先接種の県内対象者は約84万人。県はこの中でも、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの入所施設の利用者を優先し、加えて、同種施設で働く職員(約4万人想定)も同時期の接種を目指します。
 県は既に施設優先の方針について、接種を担う市町村に協力を依頼しています。今後、施設側に接種を希望する職員リストを作成してもらい、市町村が接種券や予診票を発行します。施設に入所している高齢すの多くは、入所している施設で集団接種を受けると想定されています。同時に、職員にもワクチン接種を行うべきです。

クラスターが発生した介護施設は積極的な情報発信を
 また、クラスター対策の一環として情報の公開も一定のルールを定めるべきです。
 損保ジャパン・リスクマネージメント・レポートNo.213の「高齢者施設における新型コロナウイルス感染症 一事例にみるクラスタ一発生後の経過と対応一」によると、事例で取り上げた施設においては、少ないところでも4日に1回の割合で、自らのホームペー ジにて感染状況とその対応状況を逐一公表していたと報告しています。
 その公表内容は施設によって様々ですが、ヾ鏡者数、感染確認日、感染者の属性(利用者・職員など)、濃厚接触者数、濃厚接触者の属性(利用者・職員など)、感染者との接触方法・関係等、4鏡の発生場所、ご鏡が確認された経緯(発熱症状等)、ジ〆困亮診状況(検査結果(○人中○人陽性)、受診計画(○日○人、△日○人等)、施設内の対応状況(隔離対応、介助方針、感染対策等)、併設施設の運営方針○日まで休止等)、 施設再開の予定日、収束宣言(あるいは経過観察の終了報告)などが、掲載されていました。
 情報発信の目的は、正しい情報や感染拡大防止に対する取組みを伝えることで、利用者やその家族、その 他関係者に不要な不安を抱かせないこと、デマや誹誇中傷を防止することであります。自ら情報発信することで、施設を特定され風評被害を助長するなどのリスクが懸念されます。しかし、入所者家族や地域住民に対して、真摯に対応している姿勢を表明することは、かえって利用者や就業を希望する人などに信頼感、安心感を与えることが期待されます。
 風評被害から利用者、職員を守るためには、情報発信と併せて誹誇中傷へのけん制も必要となります。自治体などの権威のある機関に対して、不当な扱いの禁止と感染症の発生状況等について適切に発信をしてもらうことも重要です。情報発信については、その都度、発信内容を決めるのではなく、あらかじめ発信する内容と範囲を決めておくことが重要です。情報公開マニュアルを整備する必要があるでしょうし、事業者団体などで統一されたフォーマットを検討する必要があります。