8月8日、世界205カ国・地域から約1万1000人のアスリートが参加した「第32回夏季オリンピック東京大会=TOKYO2020」が、無事閉幕しました。
 東京では新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が続く中で、開催された試合がほぼ無観客という異例の開催となりました。運営面でも、森喜朗前会長が女性蔑視発言で直前で交代。開会式、閉会式の演出責任者も女性蔑視発言、過去のいじめ問題、ホロコースト揶揄したコントなどが原因で辞任をせざるを得なくなりました。
 さらに、テレビ放映権などの兼ね合いで日本の高温多湿の真夏に強行された大会に、コロナ禍での隔離空間と相まって、出場した選手の多くは心身ともにコンディション調整は困難を極めたに違いありません。

 しかしこうした逆境を見事に乗り越え、鍛え抜かれたアスリートが躍動する姿は、見る者を魅了し数々の新記録も誕生しました。コロナ禍の世界に希望と感動を届けてくれた約1万1000人の選手全員に拍手を送りたいと思います。
 自国開催のオリンピックで、日本は史上最多となる58個のメダルを獲得(金27、銀14、銅17)しました。過去最多だった16年リオ五輪の41個を超え、大会中は7月24日の競技初日から一日も途切れること無く最終日の8日まで毎日、メダルを量産しました。メダル獲得総数のランキングでは、アメリカの113個(金39、銀41、銅33)、中国の88個(金38、銀32、銅18)、ROCの70(金20、銀27、銅23)、英国の65(金22、銀21、銅22)に続く数字です。金メダルでは、アメリカ、中国に次ぎ世界3位に位置しました。
 「開催できて本当によかった」が正直な感想です。

 近代五輪の父・クーベルタンが提案した「より速く、より高く、より強く」という五輪のモットーに、今回のオリンピックから「共に」という言葉が加わりました。人類の団結でパンデミックの試練を「共に」乗り越えるとのメッセージが含まれているという。
 大会の実施には、かつてない困難な状況下で助け合い、アスリートが輝く舞台を支えたボランティアをはじめとする関係者の献身と尽力がありました。
 「復興五輪」の理念の下で、東日本大震災の被災地は野球、ソフトボールなどの開催地となったほか、メダリストに贈られた「ビクトリーブーケ」には岩手、宮城、福島3県の花が使用されるなど貢献をした。地方での事前キャンプで、ほとんど地域住民との交流のなかった海外アスリートを心を込めて声援をお送ったボランティアの姿がありました。協議を終えて大会会場を去る、各国の選手団を暗くなるまで手を振って見送るボランティア役員の姿には感動を覚えました。
 一方、競技が終われば共に寄り添い、国境を超えてたたえ合うアスリートの清々しい姿には特に感銘を受けました。逆境の中での東京五輪は、共に団結して挑めば困難を乗り越えることができるとの「希望のメッセージ」を世界中の人々に送ることが出来たのではないでしょうか。
 また、競技を終えた直後のインタビューで、「感謝」の気持ちを伝える選手が多かったことも象徴的でした。彼らの発言には「(オリンピックを)開催してくれてありがとう」との言葉がりました。 
 オリンピックの1年延期、コロナ禍の孤独や不安、中止への恐れなど、アスリートは複雑な心の葛藤を抱きながらも諦めず、未来の勝利を信じて練習を重ねてきた。圧倒的な「陰の努力」の積み重ねは、五輪という“ひのき舞台”へとつながり、私たちに大きな希望と勇気を与えてくれました。

 オリンピックの新たなモットー「より速く、より高く、より強く、共に」について、IOCのバッハ会長は次のように開会式で語りました。「新しい宣誓に込められた、連帯、差別のないこと、ドーピングのないスポーツ、包摂と平等というオリンピックの価値に対してのコミットメントに対し、感謝を申し上げます。我々はより速くいくほかありません、より高く目指すほかありません、より強くなるほかありません。連帯して、ともに立つならば。これが、IOCが、オリンピックのモットーを私たちの時代に適応させた理由です。より速く、より高く、より強く、ともに。この一体感は、すなわち、パンデミックの暗いトンネルの終わりにある光です。パンデミックは私たちを分断しました。お互いに距離をとらせます。愛する人から離れることすら求めます。この分断は、このトンネルをとても暗くしました。しかし、今日、あなたが世界のどこにいても、私たちはこの瞬間を共に共有することで団結しています。聖火は、この光をより明るく輝かせます」と。一義的にはパンデミックをスポーツの力で乗り越えるとの宣言です。
 と同時に、「より速く、より高く、より強く、共に」とは、「新しい宣誓に込められた、連帯、差別のないこと、ドーピングのないスポーツ、包摂と平等というオリンピックの価値に対してのコミットメントに対し、感謝を申し上げます。我々はより速くいくほかありません、より高く目指すほかありません、より強くなるほかありません。連帯して、ともに立つならば。これが、IOCが、オリンピックのモットーを私たちの時代に適応させた理由です」ともバッハ会長は述べています。
 日本にとって、『連帯、差別のないこと、ドーピングのないスポーツ、包摂と平等というオリンピック』ということばに注目したと思います。先にも述べた準備段階での様々なトラブルの根源は、差別や包摂、平等という概念の希薄さがもたらしたものでした。その日本の未熟さを世界にさらけ出し、荒療治せざるをえなかったのが今回の東京オリピックでした。
 さらに、東京オリンピックはジェンダーやLGBTの課題も大きく進みました。
 1964年の東京オリンピックが、日本が経済的に経済的に世界の先進国の仲間入りを果たした大会で会ったとすると、東京2020は多様性のなかで「ともに」との価値観を日本人が共有出来るようにあった大会であったと評価されるよう期待します。

 閉会式、聖火が消えた国立競技場に「ARIGATOU」との文字が浮かび上がりました。選手、ボランティア、すべての大会関係者に感謝の言葉を贈りたいと思います。