茨城県の感染者数
 10月1日、茨城県をはじめ全国9都県に出されていた新型コロナ感染症の緊急事態宣言が解除されました。(図は茨城県の感染者数の増減)

■ワクチン2回接種は全人口の約6割に、アメリカの接種状況を上回る
 新型コロナウイルスワクチンの接種は、2回接種を終えた割合が全国で59.8%、65歳以上は89.3%(NHK10月1日集計分)に達しています。茨城県は56.22%、65歳以上は89.91%となっています。当初難しいとみられていた1日100万回接種は、7月6日に164.1万回と達成できており、コロナ感染第5波収束の大きな要因になったと考えられます。
 懸念されていた副作用については、8月22日時点でファイザー製ワクチン接種後の死亡は1076件、100万人接種当たり19.1件です。モデルナ製ワクチン接種後の死亡は17件で100万人接種当たり1.6件でした。専門家の評価は「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できない」とされています。

■ワクチンの高い感染と重症化予防効果
 ワクチンの効果に関しては、9月8日に厚労省から「新型コロナウイルス感染症に対するワクチン等の効果の推定」が報告されました。それによると、65歳以上の感染者数を7、8月の2か月間で11万人弱抑制し、死亡者を8400人程度抑制していると推計されています。
 また、新型コロナ感染陽性者の年代別の致死率も報告されており、1〜5月の90歳以上の致死率は15.07%でしたが、7月は5.64%まで低下しており、ワクチン効果が認められています。
感染者のワクチン接種経歴
■茨城県内で感染確認された人の97%は、ワクチンの接種がまだか2回目の接種後14日未満までの人
 一方茨城県は、7月1日から9月25日までに、県内で感染が確認された1万3430人について、ワクチンの接種状況をまとめました。その結果、ワクチン接種がまだか、もしくは不明の人が1万1005人で全体の82%、1回しか接種を終えていないか、2回目の接種後14日未満だった人が1966人で15%、2回目の接種後、14日以上たっていた人が459人で3%となっています。
 また、重症になった107人では、接種がまだか、もしくは不明の人が88人で82%、1回しか接種を終えていないか、2回目の接種後14日未満だった人が18人で17%、2回目の接種後14日以上たっていた人が1人で1%となっています。
 つまり、感染した患者の内、ワクチンを2回接種して2週間以上経過した人は3%。重症化した人は1%に止まっているということでした。
(円グラフは、7月1日〜9月25日の感染者のワクチン接種経歴)

■若年層の感染拡大、ブレークスルー感染
 新型コロナ感染症第5波は、感染者数の増加や現役世代の死亡率の上昇、自宅療養者の増加や療養中の死亡が報道されています。茨城県では感染者数が2月5日に5千人、6月10日に1万人、8月28日に2万人と急増しました。特に、ワクチン未接種の若年層の増加が目立ちました。
 ワクチンを接種しても感染してしまう、いわゆる「ブレイクスルー感染」に関して、英国での追跡アプリを使った研究で、2回接種終了し7日以降に感染した方は97万1504例のうち2370例(0.2%)。多くは無症状か軽度の症状で、特に60歳以上の高齢者の方が若年者より重症化しない傾向であると報告されています。

■ブースター接種は、感染を10分の1、重症化を20分の1程度に軽減
 今後の再拡大に際して検討されているワクチンの3回目接種(ブースター接種)は、大きな議論を呼んでいます。ワクチン接種が進んでいるイスラエルから113万人を超えるデータからの論文が9月15日に発表されました。イスラエルではデルタ株の流行拡大に伴い、7月30日から2回接種を完了した60歳以上を対象にブースター接種が承認されました。2回接種の群とブースター接種を受けた群で比較すると、ブースター接種群は感染を10分の1、重症化を20分の1程度にすると報告されています。
 日本では、接種後どの程度経ったら追加接種するかや対象者をどうするか、などは今後の課題ですが、3回目の接種を検討しています。

■抗体カクテル療法で95.2%が「軽快」
 また、新規治療法として登場した「抗体カクテル療法」に関しては、9月9日の東京都新型コロナ感染症モニタリング会議で、420例の投与後の経過を分析したところ。「軽快」と判断された患者は400例(95.2%)と明らかにこその効果を発揮しました。発症から4日以内の投与が効果的であることが報告されています。自宅療養者(往診)や医療機関・宿泊療養者(外来)へ早期投与ができる体制を整備し、次に備える必要があります。

■経口治療薬の研究進む
 さらに、コロナ治療薬の開発も進んでいます。
塩野義製薬は、開発中の新型コロナウイルス治療薬について、最終段階の臨床試験(治験)を12月に終了させ、今年度中の供給開始を目指すと発表しました。年度内に最低100万人分を用意する生産体制を整える計画です。
 治療薬は、ウイルスの増殖を抑制する軽症者や無症状者向けの飲み薬です。感染初期に1日1回、5日間自宅などで服用することで重症化を防ぐ効果が期待されています。
 アメリカの製薬大手メルクは、開発中の新型コロナウイルスの増殖を抑える薬について、最終段階の臨床試験で入院や死亡のリスクをおよそ50%低下させる効果がみられたと発表しました。メルクが開発中の「モルヌピラビル」は、新型コロナウイルスの増殖を抑えるための飲み薬で、現在、発症初期の患者が重症化するのを防ぐ効果を確かめる最終段階の臨床試験が行われています。
 同じくアメリカのファイザーは、新型コロナウイルス治療薬をめぐり、濃厚接触者に対する予防効果を調べる大規模な中・後期臨床試験(治験)を始めたと発表しました。治験は発症したコロナ感染者と同居する18歳以上の健康な人々が対象。最大2660人が参加し、開発中の抗ウイルス薬「PF―07321332」、エイズウイルス(HIV)感染者の治療に用いられる「リトナビル」を投与し、有効性や安全性を確認します。

茨城県内市町村のワクチン接種状況
■第6波に向けてウィズ・ウィルスの生活を
 新型コロナ感染症は、この冬に向けて第6波の到来も危惧されています。インフルエンザ感染症との同時拡大の懸念されています。
 今後も気を緩めることなく、マスク、手洗い、うがいを行い人流を増やさない、ウィズ・ウィルスの生活を送りたいと思います。
(一覧表は、茨城県内市町村のワクチン接種状況)