危機管理型水位計
 公明党の時局講演会で、竹内しんじ参議院議員は“危機管理型水位計”について、その導入に至る経緯を語りました。
 危機管理型水位計とは、川の水位が上昇した時に水位情報を提供する水位計で、川の水位が上昇した時のみ、10分毎の観測データを送信し、インターネットのホームページ(「川の水位情報」)でリアルタイムに公開されます。水位が上昇していない時は1日に1回だけデータが更新されます。
 機能を水位上昇時に限定することにより、小型化・軽量化が図られ、設置コスト従来型に比べ格段に低く抑えられています。また、インターネット経由でデータが一元的に管理、配信されますので、パソコンやスマホ、タブレットなど様々な端末から閲覧することが出来ます。
 写真は日立市茂宮川の市道橋につけられた危機管理型水位計です。
 ラッパのような部分から電波(マイクロ波パルスレーダ方式)を発信し、その電波が水面で反射する時間を計測し、水位を測ります。豪雨や降雪、強風下でも正確かつ安定した水位計測が可能で、メンテナンスが容易という特徴があります。
 一定の水位を超過すると、10分に一度画像を撮影し、インターネット経由でデーターを配信します。
危機管理型水位計の配置箇所
日立市付近の河川情報HP
https://x.gd/GPvjV
“危機管理型水位計の整備についての国会の議論”
参議院国土交通委員会 平成30年4月5日(2018年4月5日)

○竹内しんじ参議院議員
 中小河川における水害対策についてお伺いします。
 近年の気候変動等に伴い、各地において豪雨災害が多発しております。昨年7月に発生した九州北部豪雨では、氾濫した福岡県朝倉市内の14の中小河川で水位計が設置されていなかったことなどで避難の遅れや被害の拡大につながったという、その理由の一つとして挙げられております。
 中小河川を管理する地方自治体にとって、この一般的な水位計というのは、設置費用が1台当たり1千万円以上掛かり、メンテナンスや通信費用などが必要となることから導入が困難、難しいとされてきました。
 国土交通省は、このような豪雨災害の発生を踏まえ、中小河川の緊急治水プロジェクトを取りまとめておりますが、このプロジェクトでは、土砂、流木による被害対策、再度の氾濫発生の危険性がある河川の改良に加えて、洪水時の水位監視のための低コスト水位計の設置に取り組むとしており、2017年度の補正予算でも措置がなされております。
 そこで、このプロジェクトで取り上げられている低コスト水位計とはどのようなもので、従来の水位計に比べてどの程度コストが削減されているのか、まずお伺いいたします。

○国土交通省水管理・国土保全局長:山田邦博
 今回新たに開発をいたします低コスト水位計は、危機管理に特化し、洪水時にのみ観測するとともに、最新のIoT、ICT技術を活用した通信手法や汎用部品を採用することで大幅にコスト低減とダウンサイジングを図ったものでございます。
 直近5年間に都道府県が設置した水位計約300基について調査したところ、一基当たり平均約1500万円の費用が掛かっていましたけれども、今回、10分の1以下の価格への低減を目指し開発を進め、現在では民間側からは更に100分の1程度まで低減したものも提案されているところでございます。
 水位情報が十分でない中小河川におきまして人的被害が発生していることを踏まえ、国といたしましても、平成29年度補正予算等も活用し、この低コストの危機管理型水位計の普及に全力で取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

○竹内しんじ参議院議員
 今御答弁いただいたように、100分の1という数字も出ておりましたけれども、この水位計の設置コストがかなり削減されているのは自治体等にとってもかなりの朗報だと思うんですけれども、しかし、もう一点、維持運用コストという面もあるんですね。
 これまでの水位情報というのは、水位計を設置した管理者である国や地方自治体がこのデータを収集して、それぞれのホームページに公開されています。これらの水位情報を住民の方々や関係者にも有効活用していただくために、利便性の向上ということも重要であります。
 先月の3月19日には、国土交通省と地方自治体が連携して、危機管理型水位計運用協議会が設置をされました。この協議会では、危機管理型水位計によるこの観測データを一括で処理して、今年6月から管理者の区別なく近くの河川水位情報をスマートフォンなどでも見れる、こういうシステムを運用する予定となっていると聞いております。
 この運用協議会では、どのように統合運用を行って、どのような利点が期待されているのか、また、住民の避難等に際してどのような活用が期待できるのか、お伺いいたします。

○山田局長
 今回設立いたしました危機管理型水位計運用協議会におきましては、危機管理型水位計のデータを一括処理、配信、表示するため、仕様を共通化いたしまして、システムを統合運用することとしております。
 現在、都道府県等が管理をしております約5200基の水位計について調査したところ、通信システム経費として一基当たり年間約18万円の費用が掛かっていましたけれども、システムを統合、標準化し、1基当たり約2万2000円で運用を開始する予定でございます。このように、通信システム経費を大幅に低減することにより、水位計のより一層の普及を支援してまいりたいと考えているところでございます。
 また、一括処理により管理者の区分なく身近な場所での水位計が確認できるとともに、水位表示も氾濫までの高さに統一されており、住民にとって分かりやすい情報とすることとしています。水位に関する情報が増えることによりまして、市町村による避難勧告等の発令がより的確になるとともに、スマートフォン対応のシステムも構築することにより、住民が身近な河川の水位情報を把握し、より的確に避難行動を行うことが期待されているところでございます。

○竹内しんじ参議院議員
 次に、中小河川対策について、石井大臣は現地調査、視察などを重ねられておりますけれども、今後の対策の推進に関する大臣の御決意をお伺いいたしたいと思います。

○石井啓一国土交通大臣
 議員から御紹介をいただいた危機管理型水位計につきましては、先般、実証実験を行っている現場を視察をいたしまして、実証実験の結果を踏まえて、全国の自治体に普及していくべきとの認識を強くしたところでございます。
 御指摘の中小河川対策につきましては、危機管理型水位計の設置に加えまして、土砂・流木対策、再度の氾濫防止策など、おおむね3年間で実施すべき対策を中小河川緊急治水対策プロジェクトとして取りまとめまして、平成29年度補正予算でその全体費用の約6割、平成30年度予算で約1割を計上したところでございます。
 これらの対策につきましてはスピード感を持って対応することが重要と考えておりまして、流木の捕捉効果の高い透過型砂防堰堤の整備や河川の掘削などの工事に順次着手をしているところであります。
 今後とも、中小河川緊急治水対策プロジェクトに位置付けた対策ができる限り早期に完了できるように努めてまいりたいと考えております。