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 立憲民主や共産、国民民主、日本維新の会などの野党が物価高騰対策として「消費税率の引き下げ」を訴えています。しかし、法改正などで実施に時間がかかり、今、直面する物価高への対応として役に立ちません。それに、近く税率が下がるとなれば、買い控えによる消費低迷も招きます。そもそも、国会の会期末に野党が提出して廃案となった「消費税の引き下げ法案」の施行日は、来春(令和5年)4月1日でした。
 消費税率を5%から10%に引き上げた増収分は、基礎年金の国庫負担や幼児教育・保育の無償化といった社会保障に活用されています。にもかかわらず野党は、引き下げで生じる十数兆円の減収分について、現実的な代替財源を示しません。
 識者は「一度下げた税率を戻すことができるのか。その間、消費税収を充てている年金の国庫負担分などはどうするのか」(16日付「読売」で菊池馨実・早稲田大学法学学術院教授)などと厳しく指摘しています。
 立憲は財源に「国債を発行する」と強弁します。しかし、借金で将来にツケを回さぬよう、消費税率を10%に引き上げる社会保障と税の一体改革を進めたのは民主党政権。それを担った議員らで結成された立憲が、逆に引き下げを掲げるとは本末転倒で、無責任です。思い出してみて下さい。消費税率10%への引き上げは、2012年、民主党政権が「社会保障の充実、強化のための財源は、もはや将来世代にツケ回しできない」と自民、公明両党に呼び掛け、社会保障と税の一体改革を決めはずです。公明党は軽減税率を提案、実現させました。しかし、その民主党政権を担った議員らが中心の立憲民主党が、今は消費税減税を叫び、その代替財源として、将来世代にツケ回しする「国債の発行」を明言しているのです。自己矛盾であり、無責任極まりありません。これは、明らかな選挙目当てのパフォーマンスです。
令和4年度の消費税の使い方
 また、れいわの山本代表は、「消費税はそもそも社会保障費以外にも使われている」と言っていますが、何の根拠もありません。そもそも、消費税の収入については、消費税法第1条第2項に「地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、 制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充 てるものとする」と、明記されています。令和4年度予算によると、消費税収入は国分が17.4兆円、地方分が7.3兆円の合計24.7兆円です。一方、社会保障費の合計は45.3円(年金13.4兆円、医療12.1兆円、介護3.6兆円、子育て3.1兆円、地方分13.1兆円)です。消費税で賄っても20.6兆円不足し、一般会計、国債発行などで充当しています。消費税が別の目途で使用されていると強弁するのなら、国を訴えるべきでしょう。
 さらに、消費減税の財源を、企業の内部留保への課税強化に求める主張があります。企業の利益の蓄積である2020年度末の「内部留保」484兆3648億円でした。2012年度以来、9年連続で過去最高を更新しています。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて企業の経常利益は減少していますが、景気の先行きが不安定となる中で設備投資などに慎重となった結果、内部留保が積み上がったとみられます。内部留保は売上高から人件費や原材料費などの費用を差し引き、更に法人税や配当を支払った後に残った利益を積み上げたものをさします。企業の貸借対照表には「利益剰余金」として計上されています。内部留保金への課税は、法人税の支払った後の利益にさらに課税するものであり、明らかに二重課税となります。内部留保金が増える要因は二つ。第一に新たな投資に対する不安と、第二にコロナやウクライナ情勢、大規模災害など不確実な状況への対応のためです。この内部留保に課税すれば、企業の健全な経営にブレーキを掛けてしまいます。内部留保金を社会に還元するためには、課税施策のような“北風制作”ではなく、設備投資や給与アップなどに繋げる、いわば“太陽政策”こそが重要です。