日本維新の会のHP
 7月10日の参院選の投票まで、今日も入れてあと4日間。ウクライナ危機、物価高、コロナ禍、少子高齢化対策など各党の政策論争もヒートアップしています。
 議員を退職した私にも、複数のマスコミ関係者から現場の感覚の取材があります。その中で、話題に上るのが、「日本維新の会」の動向です。大阪を中心とする関西圏とは違い、ここ茨城では、今までの国政選挙ではほとんど話題に上っていませんでしたが、この参院選では、その存在が大きくなっているようです。立憲や国民、共産、社民などの野党の存在が薄くなっている状況の中で、相対的に維新への注目が集まっているのかもしれません。
 しかし、私は個人的には維新の伸張に大きな懸念を抱いています。
 ここでは、維新の不祥事体質、安全保障、社会保障の3点から、維新への懸念を具体的に述べてみたいと思います。
 
 まず、日本維新の会(大阪維新の会)の不祥事体質です。
 日本維新の会の参議院比例区候補が、栃木選挙区に維新から立候補予定の新人女性について「顔で選んでくれれば1番を取る」などと発言して問題となりました。「女性蔑視」「外見差別」との批判が上がっています。さらに、6月5日、千葉県柏市の柏駅前で行なわれた街頭演説では、維新の会による教育改革の成果をアピールする中で、元代表の橋下氏の出身地について「差別を受ける地区」だったと言及し、その学習環境や両親の仕事などについても語ったと報道されています。週刊ポスト紙の報道によると、部落解放同盟中央本部は、「予断と偏見で出身地について話しており、差別を助長する内容となっています。仮に橋下さんが了承していたとしても、許される内容ではない差別発言と考えます」とコメントしています。
 こうした一連の問題発言を受けて、6月28日、日本維新の会の松井一郎代表は、龍ケ崎市での街頭演説で、舌禍の比例代表候補について「たまに口を滑らせて、メディアから総たたきにあっている」と言及。「人間誰しも口を滑らせることはある。でも、これからは気を付けてくださいね」と語ったとされています。
 こうした人権意識の低さや、党の責任者自体が簡単に容認してしまう体質こそが問題であると指摘せざるを得ません。
 ツイッターの「#維新は不祥事のデパート」とのハッシュタグには、多くの投稿が寄せられ、不祥事の具体例が報告されています。
 「日本維新の会不祥事マップ」なるものも存在し、盛んにリツィートされて拡散されています。日本維新の会は、その所属議員を教育し統制する能力に欠けていると断ぜざるを得ません。
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 第2に、危険な安全保障政策です。
 日本維新の会は3月3日、「ニュークリア・シェアリング(核共有)」の議論を政府に求める提言を、林芳正外相あてに提出しました。また、ロシアのウクライナ侵攻を受け、「核共有による防衛力強化等に関する議論を開始する」ことを求め、「核保有国による侵略のリスクが現実に存在する」とし、対国内総生産(GDP)比2%の防衛費増額を要求しました。
 前日の役員会で確認した当初の提言案には「非核三原則の見直し」も議論すべきだとの文言が盛り込まれていたといわれています。しかし、各方面からの批判の声が上がったことを受け、同日夜、幹部が協議し削除した。「核を持たない国は核保有国による侵略のリスクが高い」という文言も削りました。
 その後、参院選のマニフェストでは、かなり曖昧な表現になったものの、「日本の安全保障に対する不安を根本的に解消するため、将来にわたり戦争を起こさず、国民の生命と財産を確実に守るための『積極防衛能力』を構築する。防衛費のGDP比2%への増額、最先端の技術革新を踏まえた防衛力の整備、憲法9条への 自衛隊の存在の明記などを行った上で『核拡大抑止』についてもタブーなき議論を行う」と謳っています。維新の言う『積極防衛能力』の定義は、具体的に説明されていませんが、憲法で定める専守防衛とはなじまない発想であると心配します。
 さらに、『核拡大抑止』という表現は、非常に危ない響きがあります。一般的に「拡大抑止」とは、自国だけでなく、同盟国が攻撃を受けた際にも報復する意図を示すことで、同盟国への攻撃を他国に思いとどまらせることを指します。「基本抑止(Basic deterrence)」が、自国の国民や領土に対する核抑止であるのに対し、「拡大抑止」は同盟国への核・通常攻撃を抑止することです。拡大抑止は一般的に、「核の傘」とも呼ばれるが、厳密には、拡大抑止には「核拡大抑止(Extended nuclear deterrence)」と、通常戦力による「通常拡大抑止(Extended conventional deterrence)」があるとされます。米国は同盟国である日本や韓国に対し、核を含む「拡大抑止」の提供を約束していまが、日本が「核拡大抑止」を議論するとはどういった意味なのか不明です。核共有=非核三原則の見直しを言い換えただけのように思えます。非核三原則堅持は、日本の安全保障の根本でなくてはなりません。

 三点目の矛盾だらけの社会保障政策です。
 維新の会は、参院マニュフェストの中で「消費税減税、ガソリン減税、中小企業減税、社会保険料減免、高速道路料金の減額などを最優先で実現する。消費税の軽減税率は、現行の8%から段階的に3%に引き下げ、その後は消費税本体を2年を目安に5%に引き下げる」と言っています。あの悪夢の民主党政権の政権の公約とうり二つです。行政改革、統治機構改革、国と地方の役割の見直しで、財源を確保するといいますが、具体策は示されず、絵に描いた餅に過ぎません。
 さらに、荒唐無稽なのが、ベーシックインカムの導入です。今回、日本維新の会が導入を検討しているベーシックインカムの支給額は、月6万円(高齢者は8万円)だといわれています。この金額で、基礎年金や生活保護を全廃すると言っているのです。そもそも国の年金の会計と一般の社会保障の財源は厳密に分けられています。年金の会計も一般会計もガラガラボッチャンにして、ベーシックインカムに以降することはできません。さらに、北欧等で行われているベーシックインカムの社会実験も、その財源は消費税(付加価値税)です。消費税を5%に、軽減税率を3%に引き下げて、ベーシックインカムの財源をどこから捻出するのか、荒唐無稽の作り話に過ぎません。

 難問山積の中、自民・公明の与党の政策を批判し、国民に聞き心地の良い政策を語ることは簡単です。しかし、その内容を、私たち国民をよくよく吟味しなくてはなりません。