下妻市役所新庁舎
 エネルギー消費量の実質ゼロを目指す建築物、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」。2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指し、政府がZEBの普及拡大を進める中、茨城県下妻市は5月8日に、ZEB化した新庁舎を開庁いたしました。「省エネ」と「創エネ」で、年間エネルギー消費量を78%削減するのが特長となっており、行政が先導する試みとして、大きな注目を浴びています。
 新庁舎は鉄骨造りの地上4階建てで、延べ面積は8526平方メートル。高いエネルギー削減率を実現するため、「省エネ」と「創エネ」を組み合わせています。年間の削減率78%のうち、53%は庁舎の断熱性向上のほか、高効率な空調設備やLED照明設備の導入による省エネで、残り25%は発電能力合計280キロワットの太陽光パネルを用いた創エネで達成しています。年間発電量は推定約28万キロワット時と見込まれています。
 また、新庁舎は防災拠点としての設備も備えています。災害時に庁舎機能を維持できるよう非常用発電機や5000リットルの地下オイルタンクを設置したほか、免震構造を採用しています。
 総事業費は約51億円。そのうち、建築物のZEB化支援を目的とした環境省の補助金約5億3000万円を財源の一部に充てています。
 温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出量は、事務所や商業施設など「業務部門」からが日本全体の約2割を占めています(21年度)。その削減に向け、ビルのZEB化は大きな役割を担っています。
 ZEBは、省エネ性能が高い建築物にお墨付きを与える、国土交通省が主導する第三者機関の認証制度です。国で定めた基準値と比較したエネルギーの削減量に応じて4段階のランクに分けられます。75%以上削減の基準を満たす新庁舎は、県内の庁舎として初めて2番目に高いランクの「Nearly ZEB」の認証を受けました。
 行政の率先した取り組みから、民間建築物のZEB化への波及を目指す政府は、21年8月に示した方針の中で、国、地方自治体が新築する建物において、徹底した省エネ対策や再生可能エネルギー導入などを促しています。
 一方、下妻市は2021年1月に「ゼロカーボンシティ宣言」を表明。同年6月にはSDGs推進条例を制定するなど、地球環境を守る活動を続けてきました。 
新庁舎のZEB化に関しては、公明党の塚越節市議が2021年3月の定例会で「Nearly ZEB」の認証取得を目指すよう提案。同年6月の定例会では、環境省の補助金活用を訴えていました。