高知県佐川町
 仕事を通じて何度か訪れた経験はある高知県。しかし、私たち夫婦が二人で旅をするのはこれが初めて。台風が接近する中での2泊3日でしたが、幸運にも強い雨風に遭うこともなく、素晴らしい旅となりました。

牧野富太郎の生地・高知県佐川町
 最初に訪れたのは、NHKの朝ドラ「らんまん」で有名になった牧野富太郎の生地である佐川町(さかわ・ちょう)です。朝ドラの人気にあやかって訪れたこの町は、県内でも屈指の酒どころとして知られています。町には美しい白壁の蔵が立ち並んでおり、土佐漆喰の美しさや激しい風雨に備える知恵から生まれた水切り瓦など、歴史と自然の美しさが調和した風景が広がっていました。

牧野富太郎記念館 
 牧野富太郎は、佐川町の出身であり、日本植物学の発展に多大な貢献をしました。彼は明治時代に日本各地を探検し、数多くの植物を発見・分類しました。その功績から、「日本植物学の父」と称されるほどの偉大な人物です。佐川町は彼の実家が酒造業を営んでいた場所でもあり、牧野富太郎が自然の中で育った経験が彼の研究に大きな影響を与えたのだと感じました。
 佐川町では、牧野富太郎にゆかりのある場所を訪れました。彼が生まれ育った場所や彼の学問に関する資料が展示されている施設や、幕末維新を駆け抜けた志士たちの遺墨がある町立博物館青山文庫など、歴史的な建造物も見学しました。牧野や明治維新の時代を切り拓いた先人の情熱と、佐川町の魅力が交差する場所で、歴史と自然の息吹を感じながら心豊かな小さな旅を楽しむことができました。
牧野植物園
自然との共生・牧野植物園を堪能
 翌日は、高知市にある「牧野植物園」を訪れました。この植物園は、牧野富太郎の業績を顕彰するために開園されたものです。1958年に高知市の五台山に開園され、約8ヘクタールの広大な敷地には3000種類以上の野生植物が四季折々の美しい景色を創り出しています。
 ここは、人と自然の関係を大切にした安らぎと憩いの空間で、園内は四つのエリアに分かれています。まず最初に訪れたのは本園エリア。五台山の自然環境を活かした多様な植物が育っています。ここで見ることができるのは、博士ゆかりの野生植物や、3000種類以上の四季折々の植物たちです。5月下旬のこの時期には、ヤクシマアジサイやヒメアジサイなどが見ごろを迎えていました。


 その後、南園エリア、牧野富太郎記念館エリアを巡りました。それぞれのエリアには、季節やテーマに応じた多様な植物が育てられ、訪れるたびに新しい発見や感動があります。
 自然の中での散策を楽しんだ後、締めくくりには、園内のカフェで一息つきました。そこから見える緑豊かな風景と、そこに生息する多種多様な植物たちを眺めながら、この日の訪問を振り返すと、なんとも言えない充実感と満足感に包まれました。

牧野植物園
 牧野植物園は、単に美しい植物を眺めるだけでなく、植物と人間、そして自然との関わりを深く理解することのできる場所です。この日の訪問を通じて、牧野富太郎博士の偉大な業績と、彼が築き上げたこの植物園の価値を改めて感じることができました。そして何より、多種多様な植物が織りなす美しい風景を目の当たりにし、四季折々の自然の営みを感じることができたことが、最大の収穫でした。

モネの庭<水の庭>
モネの世界観に没入・北川村「モネの庭」マルモッタン
 午後からは、高知県東部の北川村にある「モネの庭」マルモッタンを訪れました。この庭園は、印象派の巨匠クロードモネがフランスのジヴェルニーで作り上げた「モネの庭」を再現したものです。 2000年に開園され、北川村の発展と交流の一環として作られました。北川村はかつて工業団地誘致を目指していましたが方針転換。北川村「モネの庭」マルモッタンでは、クロード・モネが愛し育んだ庭園の美しさを守りながら、訪れる人々に心地よい時間を提供しています。マルモッタンでは、環境問題についても取り組んでいます。極力、農薬など使わず、人のチカラで病虫害から花・木を守ることで次世代に悪影響を残さないように努めています。また地域への貢献を深め、地域とともに発展していく場所として、教育や地域産業への取り組みも進められていました。
 まず、モネの愛した睡蓮が咲く庭<水の庭>を散策。太鼓橋や藤棚・柳に竹、浮世絵の影響を受けたモネの日本を感じる庭は晩年彼をひきつけて止まないものでした。
 光と、それによる水の反映、時間により移り行く色彩。その風景は多くの作品として生まれました。モネの絵画の中でも代表作となった「睡蓮」。咲き始めたそのスイレンが咲く池でモネの描いた風景との出会いの場です。

モネの庭<<ボルディゲラの庭>>
 水の庭をひとまわりして、<ボルディゲラの庭>へ。2020年に、地中海の乾いた世界観、その輝きを表現するために、かつてあった「光の庭」が全面リニューアルされたものです。<水の庭>とは全く違った空間に、少し驚きさえ感じました。ひときわ高い場所にある「リヴィエラの小屋」からの眺めは格別です。歩き疲れた身体をクールダウンするにはもってこいの場所です。

モネの庭<花の庭>
 そして、最後は<花の庭>に。花の庭は、季節の花たちが彩り、バラのアーチやノルマン囲いの造形と、花壇ごとに花色を変えたり、混植にして取り合わせを楽しめるようになっています。バラのシーズンが終わり、少し残念でしたが、庭を守り、作っている方々の作業する姿などが見られ、楽しいひとときを過ごしました。


 訪れた旅行者として、私たちは牧野植物園やモネの庭で自然の美しさに触れ、植物の息吹を感じることができました。高知県の旅は、牧野富太郎やクロード・モネの偉大な業績をたたえつつ、自然の美しさに触れることで、新たな発見と感動が私たちの旅を彩りました。