
■歴代の2位の想像を超えた雨量
6月2日から3日にかけての大雨で、取手市双葉地区では4日午後まで水が引かず、浸水被害は床上浸水が324棟、床下浸水が240棟に上りました。国土交通省の雨量計では、双葉地区のある旧藤代町の6月2日から3日にかけての24時間降水量は230ミリで、市内歴代2位の記録となりました。気象庁のデータでも、上流のつくば市で6月1か月間の平均雨量(131.8ミリ)の倍以上の雨が2日間で降りました。
双葉地区は水田に囲まれ、東西南側の三方を小貝川と牛久沼に挟まれた地域です。その地形のため、雨水は地区内2か所のポンプ場(計5機)でくみ上げて南側の用水路「大夫落(だいぶおとし)排水路」に流し、さらに南東側の新川第一、第二排水機場を通じて小貝川に放出しています。しかし、今回の大雨では、上流から大量の雨水が流れ込んだ影響で、末端の新川機場の排水が追いつかず、機場に接続する用水路や周囲の田んぼからあふれた水が流れ込んだのが一番の要因です。
読売新聞の地方版の記事によると、山口大の山本晴彦名誉教授(環境防災学)も、浸水要因については「内水氾濫の典型事例だ」と述べています。
双葉地区は1964年頃から「新川団地」として低平地を宅地造成してきました。これまでも度々浸水被害が発生していました。取手市によると2012年度から2021年度の間に、通報のあった双葉地区の浸水被害は計82件にも達しています。地区の治水、排水整備は市の長年の懸案となっています。市では既存ポンプの改修や見回り強化など、都度細かい対策を施してきましたが、今回の大洪水を契機に、総合的、抜本的な対策を取っていくべきと考えます。
先述の山本名誉教授は、用水路沿いに擁壁を造って水を地区内に流入させないことや、末端の新川機場の排水能力を劇的に上げるなど、「治水、排水の複合的な視点に立ち、ハード面での抜本的な整備が必要だ」と指摘しています。
また、ソフト面での対応も必要です。取手市は、双葉地区に対する避難指示の出し方を見直す方針です。6月3日午前4時に市は土砂災害警戒区域(15地区)へ避難指示を出しました。しかし、双葉地区は対象外で、小貝川の水位も避難判断水位に達していませんでした。一方で、市には内水氾濫を想定した避難指示の基準がなく、現場の消防が自主的に避難を呼びかけ、地区の住民57世帯90人がボートで救助される事態となりました。市は今後、土砂災害警戒情報を見るだけでなく、豪雨や地形の影響をより考慮に入れた避難指示の基準を作ることを検討しています。
そもそも、水害が多発している双葉地区には、雨量や浸水高を計測する公的な施設がありません。効果的な避難指示を出すための客観的なデータが必要です。その上で、地域の特性をより理解し、それに基づいた適切な避難指示や浸水予防対策が必要です。
また、こうした避難情報を確実に地域住民に伝えるシステム作りも必要でしょう。限られた地域ですので、ICT技術を活用した防災情報の伝達システムの導入が不可欠です。

牛久沼の水位上昇と八間堰の改修工事
双葉地区の洪水被害との関係は
取手市双葉地区の洪水被害と牛久沼の水位の関係性に注目が集まっています。牛久沼の水位が上がり、その影響で双葉地区の冠水にも拍車をかけたのではないかという見方です。
特に、牛久沼から小貝川につながる県の八間堰(はっけん・ぜき)改修工事が、浸水被害を拡大したのではないかといわれています。
八間堰は今年3月までの工事期間が7月に延長されました。県は、過去5年間の牛久沼の推移を基にして 排水路と矢板を設置していました。
現在の八間堰水門は、1971年に一級河川谷田川の牛久沼最下流部に設置された施設であり、 市街地部などへの洪水被害の軽減及び牛久沼周辺の農業用水の水利用を目的とした、治水と利水の両面の機能を有する重要な役割を担っています。
今回の工事は、水門の設置から50年以上経過しており、老朽化に伴う破損などにより適切な管理ができなくなる恐れがあることから、既存のゲートを新たなゲートに交換するものです。ゲートの交換の際に作業箇所に水が入り込まないよう、水門の前後を鋼製の矢板で締め切り、 水門の横に仮排水路を設けて河川の水をバイパスさせる構造でした。
矢板の流量の設定根拠は、牛久沼の直近5カ年の最大水位を勘案し、毎秒70立方メートル程度を目標として設定しており、 洪水時には水が仮排水路だけでなく、矢板の上部を越えて下へ流れる仕組みでした。
県では、専門家を含めた検証委員会を立ち上げることにしています。工事における矢板締め切りや仮排水路の設計内容の再確認だけでなく、雨量等の気象状況、周辺河川の水位、牛久沼をはじめとした河川の堤防の高さ、 周辺の水門の操作やポンプの稼働状況など、様々な要因を整理した上で総合的に検証していく必要があります。
現在は、今後の大雨に備えて緊急措置を優先しており、越水箇所への土の設置による応急対策に加えて、国の排水ポンプ車の配備や矢板の高さを低くする措置によるう牛久沼の水位を下げるなどの対策を実施しています。
先述の山本名誉教授は、用水路沿いに擁壁を造って水を地区内に流入させないことや、末端の新川機場の排水能力を劇的に上げるなど、「治水、排水の複合的な視点に立ち、ハード面での抜本的な整備が必要だ」と指摘しています。
また、ソフト面での対応も必要です。取手市は、双葉地区に対する避難指示の出し方を見直す方針です。6月3日午前4時に市は土砂災害警戒区域(15地区)へ避難指示を出しました。しかし、双葉地区は対象外で、小貝川の水位も避難判断水位に達していませんでした。一方で、市には内水氾濫を想定した避難指示の基準がなく、現場の消防が自主的に避難を呼びかけ、地区の住民57世帯90人がボートで救助される事態となりました。市は今後、土砂災害警戒情報を見るだけでなく、豪雨や地形の影響をより考慮に入れた避難指示の基準を作ることを検討しています。
そもそも、水害が多発している双葉地区には、雨量や浸水高を計測する公的な施設がありません。効果的な避難指示を出すための客観的なデータが必要です。その上で、地域の特性をより理解し、それに基づいた適切な避難指示や浸水予防対策が必要です。
また、こうした避難情報を確実に地域住民に伝えるシステム作りも必要でしょう。限られた地域ですので、ICT技術を活用した防災情報の伝達システムの導入が不可欠です。

牛久沼の水位上昇と八間堰の改修工事
双葉地区の洪水被害との関係は
取手市双葉地区の洪水被害と牛久沼の水位の関係性に注目が集まっています。牛久沼の水位が上がり、その影響で双葉地区の冠水にも拍車をかけたのではないかという見方です。
特に、牛久沼から小貝川につながる県の八間堰(はっけん・ぜき)改修工事が、浸水被害を拡大したのではないかといわれています。
八間堰は今年3月までの工事期間が7月に延長されました。県は、過去5年間の牛久沼の推移を基にして 排水路と矢板を設置していました。
現在の八間堰水門は、1971年に一級河川谷田川の牛久沼最下流部に設置された施設であり、 市街地部などへの洪水被害の軽減及び牛久沼周辺の農業用水の水利用を目的とした、治水と利水の両面の機能を有する重要な役割を担っています。
今回の工事は、水門の設置から50年以上経過しており、老朽化に伴う破損などにより適切な管理ができなくなる恐れがあることから、既存のゲートを新たなゲートに交換するものです。ゲートの交換の際に作業箇所に水が入り込まないよう、水門の前後を鋼製の矢板で締め切り、 水門の横に仮排水路を設けて河川の水をバイパスさせる構造でした。
矢板の流量の設定根拠は、牛久沼の直近5カ年の最大水位を勘案し、毎秒70立方メートル程度を目標として設定しており、 洪水時には水が仮排水路だけでなく、矢板の上部を越えて下へ流れる仕組みでした。
県では、専門家を含めた検証委員会を立ち上げることにしています。工事における矢板締め切りや仮排水路の設計内容の再確認だけでなく、雨量等の気象状況、周辺河川の水位、牛久沼をはじめとした河川の堤防の高さ、 周辺の水門の操作やポンプの稼働状況など、様々な要因を整理した上で総合的に検証していく必要があります。
現在は、今後の大雨に備えて緊急措置を優先しており、越水箇所への土の設置による応急対策に加えて、国の排水ポンプ車の配備や矢板の高さを低くする措置によるう牛久沼の水位を下げるなどの対策を実施しています。