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 8月24日東京電力は、東電福島第1原発の敷地内にたまった処理水の海洋放出を開始しました。
 放射性物質トリチウムを含む処理水の保管タンクを減らし、政府と東電は福島復興に向けて今後30年程度にわたる廃炉作業に取り組みます。原発事故から12年余りを経て廃炉に向け、一つの節目を迎えました。
 東電は24日午前、トリチウム濃度が基準値を下回ったことを確認し、午後1時3分に作業員が海洋放出するためのポンプを起動させました。放出後、東京電力ホールディングスの小早川智明社長は福島第1原発で取材に応じ、「廃炉が終わるまで風評を生じさせないという決意と覚悟の下、対応に当たる」と表明しました。
 処理水は、2011年の原発事故で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の冷却などで生じた汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理し、大半の放射性物質を取り除いた水です。しかし、ALPSでは水素の一種のトリチウムは取り除くことが出来ず、処理水を貯蔵するタンクを1000基余り作り、その中に貯めていました。放出しなければ24年2月以降に満杯になる見通しとなっています。
 今回、国の安全基準の40分の1(1リットル当たり1500ベクレル)未満になるように大量の海水で薄め、約1キロ沖合から海へ放出することになりました。1000基超の貯蔵タンクの内、今年度はタンク約30基分に相当する約3万1200トンを4回に分けて放出する予定です。放出で空いたスペースは、燃料デブリの取り出しや保管などをするための敷地に充てる計画です。

 政府は2021年4月、2年後をめどに海洋放出を開始する基本方針を決定しました。その後、国際原子力機関(IAEA)による包括報告書などを踏まえて、地元自治体や漁業関係に理解をもとめてきました。
 8月21日、岸田首相と会談した後、全漁連の坂本会長は「IAEAの国際的な安全基準に合致するという包括報告書や、安全性における漁業者や国際社会への説明、これを通じて科学的な安全性への理解は私どもも深まってきた。しかし、科学的な安全と社会的な安心は異なるものであって、科学的な安全だからと言って風評被害がなくなるわけではない。現に風評被害は起きている」と話しました。

 処理水に海洋放出については、政府が国際的な目を入れた上で安全性を保ち、人や環境への影響がほとんどないことを確認し,その情報を発信し続けることが重要です。その上で、漁業者への支援では風評を生まないようにすべきです。風評が起こった場合は、きちんと対応し、漁業者が、なりわいとして漁業を継続できるようにしなければなりません。

海水中のトリチウム濃度は基準値の100分の1程度、捕獲した魚のトリチウム濃度は検出限界値未満
 東京電力は、8月24日放出開始の2時間後から原発周辺の海域の10地点で海水を採取するモニタリング調査を行いました。それぞれのトリチウム濃度の分析結果を25日公表しました。それによると、1リットルあたりの濃度は4.6ベクレル未満から8.1ベクレル未満で、東京電力が設定した検出できる限界の値の10ベクレルよりも低い値でした。これは、放出を停止する基準の700ベクレルよりも大幅に低い値となっています。
 また、水産庁は、原発周辺の海域で捕れた魚のトリチウムの濃度を分析した結果、8月26日検出できる下限の濃度を下回り、「不検出」だったと公表しました。水産庁は、今後1か月程度、毎日、原発の10キロ圏内で捕れた魚に含まれるトリチウムの濃度を分析し、公表することにしています。