ドローン技術の進歩や画像処理技術の向上、そしてAI(人工頭脳)の劇的な発展によって、人間のコントロールなしに自律的に、敵の兵士や施設を攻撃できる武器が実用化されようとしています。
 トルコの軍需企業・STM社製のドローン「カルグ2」は、顔認識システムを装備し、特定の個人を探し出すことができるといわれています。STM社の YouTube チャンネルには、複数の カルグ2が編隊を組んで運用する動画が掲載されています。GPSが機能しない環境でもドローンが自律的に探知・捜索から攻撃までの任務を遂行できる機能が実装されています。AIにより光学、赤外線センサーなどでターゲットを特定・攻撃できる上、最大20機ほどの編隊を組んで飽和攻撃を仕掛けることも可能です。
 2021年3月に発表された国連安全保障理事会のリビアに関する専門家パネルの報告書によると、2020年にカルグ2がリビアで人間の標的を追跡し、攻撃したとされています。これまでも、世界中の戦場で無人兵器が使われてきていますが、「ヒトを攻撃する」ことの最終判断には人間が行ってきました。ところが、ついにAIが自律的な判断でヒトを攻撃したとみられるケースが、公的な場で初めて報告されたことになります。
STM社製のドローン「カルグ2」
 AIなどの新興技術を組み込んだ機械が自らの判断で標的を選択し、攻撃する兵器を「自律型兵器システム」(LAWS)と呼びます。
 今年7月、グテーレス国連事務総長は「新たな平和への課題」の中で、人の制御や監視なく機能し、国際人道法の下で使用できない自律型兵器システムを禁止する法的拘束力のある文書について、2026年までに交渉をまとめることを求めました。
 現在行われている国連総会第一委員会においても、幾つもの国から自律型兵器または自律型致死兵器の問題が提起されています。さらに、オーストリアが国連総会で自律型兵器システムに関する初の決議案を提出しています。

231021tenjikai
ニューヨークで「自律型兵器システム」の問題への理解を深める展示
 この問題を、わが事として危機感を持てるよう制作された展示会が、ニューヨークで開催されることになりました。
 「自律型兵器システム」の問題への理解を深める展示「オートメーティド・バイ・デザイン(仕組まれた自動化)」が完成し、その開幕イベントが10月13日、国際ネットワーク「ストップ・キラーロボット(SKR)」、アムネスティ・インターナショナル、SGI(創価学会インタナショナル)の共同主催により各国の外交官、国連関係者、市民社会の代表を招いてアメリカ・ニューヨーク市内で行われました。
 「デジタルによる非人間化」「自動化による危害」という広がりのある視点から、その極端な例として「キラーロボット」とも呼ばれる自律型兵器システムの現状を紹介しています。自律型兵器がいかにして立ち現れてきたか、古代から近代に至る歴史をたどるほか、機械による標的の選別がいかに不正確で非人間的な結末をもたらすかを示すなど、若い世代にもアピールする内容となっています。
SGIのインスタグラムにリンク
 自律型致死兵器システムの使用、開発を抑制しようとする運動を世界中に広めることが重要です。日本でも、今回の展示会のような企画が一刻も早く実現することを期待します。