バングラデッシュ
 1月7日、バングラデッシュの第12回総選挙が行われました。私は、県議会議員現職時代、日本とバングラディッシュの友好協会の活動を通じて知り合い、長年親しくお付き合いしている方の紹介で、この総選挙の投票監視団(Election Observers)の一員として、バングラデッシュに1月5日から1月9日まで、ダッカに滞在していました。
 高い経済成長を続け、日本でも繊維製品の輸入や労働力の供給先として注目されるバングラデシュ。不正が繰り返されているとして野党側が総選挙をボイコットを表明し、不完全な形で行われた今回の選挙でした。
 選挙前日には、ダッカ市内で通勤電車が放火されるなど、混乱も起こりました。300ある小選挙区のうち、1つは再選挙に、もう一つはいまだに結果が出ていません。
 ハシナ首相が率いるアワミ連盟は、222議席を獲得し5度目の政権を維持しました。投票率は40%で、マスコミはこの低い投票率では選挙の信頼性がないのではと報道しています。
 およそ1億2000万人の有権者が登録しているバングラデシュの総選挙の投票は、現地時間の7日午前8時から始まり、有権者が次々に投票所を訪れ票を投じていました。投票は午後4時まで行われ、即日開票されました。日本のような期日前投票や不在者投票、郵便投票の仕組みはありません。国外に住む有権者の投票機会も確保されてはいません。
 私たち日本人の感覚からすれば、主要野党が候補者を立てないだけではなく、この短時間で当日4割の人が投票する選挙は、驚きともいえます。
 公正な選挙を担保するために、各国からも選挙監視団が派遣されました。日本も渡辺正人元大使を団長とする選挙監視団を派遣しました。
 私たちの国際監視団は、アメリカ、イギリス、インド、日本など16カ国24名で構成された、いずれの政府機関にも属さないNGO組織です。
外国人選挙監視団
【選挙当日の投票所視察の概要】
 1月7日の選挙当日、私たちの監視チームは8か所の選挙センターを視察しました。移動した距離は60キロ以上にのぼり、昼食をとる暇もありませんでした。
 こうした状況でしたが、バングラデッシュの有権者の選挙に臨む熱い心と選挙の公平さを担保しようと努力する投票所の役員の必死さを見て、疲れを忘れるほどでした。
 A投票所(titumir college)、B投票所(batmoli homes)で、C投票所(vikarunnesa)では、選挙の基本的な仕組みを検証しました。顔写真入りの入場券は、日本でも実現していない不正投票を防ぐ素晴らしい仕組みでした。親指へのマーキングは、日本では抵抗がある人もあるかもしれませんが、二重投票を防ぐための有効な手段です。政党別にアイコンを定めて、候補者を選択できる投票システムはわかりやすく、正確性が高いと考えられます。日本では、漢字とひらがなで記載しますが、誤字や脱字が発生すると開票時に非常に難しい判断と案分票が発生します。選挙の簡便性や正確性を実現するためには、スタンプを候補者名(またはアイコン)に押すバングラデッシュのシステムは優れているかもしれません。バングラデッシュの二重三重の不正投票を排除しようとする取り組みは大いに評価に値します。こうしたバングラデッシュの投票法は、世界的な基準をクリアした公正公明な仕組みだと評価できます。
 ただし、投票所管理に大きなマンパワーが必要なことはマイナスポイントです。D投票所(engineering institute girls school)やE投票所(komlapur school)では、投票を待つ長い列ができていました。よりスムーズに投票が完了できる方法を模索する必要があるでしょう。例えば、日本では有権者名簿の検索のためネットを活用した検索システムが稼働しています。
 E投票所やF投票所(cotton mills high school)では、高齢者や障害者の配慮について重点的に視察いました。2階以上に投票所が設置されており、エレベーターなどは設置されていないために、投票に至るため大変ご苦労されている姿を複数確認しました。警備に当たっている警察官が、お年寄りの手を引いて2階に上がる心温まる姿も見ましたが、できるだけ階段を使わなくても済む投票所を用意すべきだと思います。
 G投票所(Adrsha high school shirajdikhan)、H投票所(shiradikhan high school Munshigonj)では、投票所の役員の気配りややる気の度合いなどを注目して視察しました。投票所内では、有権者の氏名の確認に真剣に取り組む姿を確認しました。投票用紙とスタンプを渡す際には、親切に有権者に投票方法を説明しているのを確認しました。投票率の途中経過を確認しながら、投票率の向上のために取り組む投票所の責任者の意識の高さを確認しました。「この投票所は投票率が40%を超えました」と自信をもって答える投票所責任者の声に、今回の選挙が成功裏に終わることを確信しました。
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【総括と提案】
 今回の選挙の仕組みは一定以上の基準に達しており、不正や間違いが起こりにくいシステムでした。今後のバングラデッシュの未来と国民の生活向上につながる有意義な選挙であったと評価します。
 その上で、一部マスコミなどが指摘する40%と投票率について、個人的な提案をしたいと思います。選挙の理想は、有権者全員が投票を行い、自らの手で国の方向性を決めることです。しかし現実には、100%の投票率を望むことはできません。選挙委員会としては、より広範に投票機会を確保する必要があります。
 そのためには、投票日の前に事前に投票できる制度を設けるべきです。例えば、日本には「期日前投票」という制度があります。投票日の衆議院では10日前から、参議院では18日前から投票が可能です。日本において、近年の投票数は投票日当日と期日前の投票数がほぼ同じぐらいになっています。
 さらに、すべての国民の投票機会を与えるために、バングラッシュ国外にいる有権者にも投票機会を確保すべきです。障害や病気によって施設や病院に入所・入院している有権者のために、不在者投票や郵便投票の制度も検討すべきです。
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