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 1月1日に発生した令和6年能登半島地震では、死者245人、住家の全壊8,195戸、半壊15,342戸、一部損壊53,419戸(4月16日現在)という大きな被害が出ました。私は、3度にわたり延べ10日間被災地を訪れ、被災者の住環境の整備や防災情報のスムーズな提供のために現地調査を行ってきました。
2月2日〜5日:石川県庁、珠洲市、輪島市、志賀町、内灘町
3月2日〜4日:石川県庁、珠洲市、輪島市、七尾市、中能登町、志賀町
4月12日〜14日:珠洲市、輪島市、七尾市、のと里山空港、志賀町
 この現地調査を踏まえて、建設型仮設住宅に関する現状と課題について中間報告いたします。 
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  • 工期の短縮や被災者の居住性の確保のため移動式仮設住宅の活用が拡大している
    ムービングハウスやトレーラーハウスなどの移動式住宅は、今回の能登半島地震で224戸整備されています(4月16日現在)。輪島市のキリコ会館多目的広場に建設されたムービングハウス仮設住宅は、1月12日に着工し1月31日に完成しました。今回の被災では最も早く震災発生から1ヶ月以内に入居が始まりました。入居者の評価も高く、今後の仮設住宅でも積極的に活用されるべきです。
    ただ、ムービングハウスにせよ、トレーラーハウスにせよ災害発生前(平時)に制作し備蓄していく必要があり、供給できる最大量は500戸前後と言われており、今後その備蓄戸数の拡大が大きな課題となっています。

  • ◎集会施設が設置されていない仮設団地が多い
    入居者の孤立化を防ぎ、コミュニティを活性化するためには集会施設(集会所・談話室)などの整備は必須です。狭い仮設住宅の敷地により多くの仮設住宅を建築しようとしたためか、集会施設が設置されていない仮設団地が目立ちます。後付けでも集会施設を早急に整備すべきです。

  • ◎入口に風除室が設けられていない仮設住宅がある
    能登地方の冬の住環境は厳しく、特に強風、降雪に対する対策は充分に行わなくてはなりません。

  • ◎洗濯機が外置きの仮設住宅がある
    能登地方の冬の住環境は厳しく、特に強風、降雪に対する対策は充分に行わなくてはなりません。外置きの洗濯機などは,地域の環境を無視した設計です。

  • ◎風呂に追い炊き機能がない仮設住宅がある
    東日本大震災の経験から風呂の追い炊き機能は必要とされてきました。いまだに、追い炊き機能が付けられていない風呂の仕様が散見されます。

  • ◎外部物置の設置が望ましい
    仮設住宅は押し入れ等の収納スペースが著しく不足しています。仮設住宅に隣接して外置きの物置を設置することが望ましいと提案します。

  • ◎双方向タイプの見守り装置(緊急通報システム)の導入を検討すべき
    単身高齢者世帯には、ICT技術を応用した双方向タイプの見守り装置の導入を検討すべきです。冬期だけではなく、夏期においてもエアコン等の空調機器の使用が奨励される中、行政や地域の見守りが行き届かず孤立化する入居者が懸念されます。また、海岸や土砂崩れなどが想定される場所に立地している仮設団地もあり、防災情報を速やかに伝達する必要があります。例えば、輪島市マリンタウン周辺に立地する仮設団地群には早急に導入すべきです。

  • ◎1Kタイプの仮設住宅建設は望ましくない
    例えば、七尾総合市民体育館グラウンドに建設中の仮設団地は、木質パネル工法となっています。今までの仮設住宅にない仕様で日本モバイル住宅協会が監理しています。1Kタイプは22.41m2の広さしかなく、押し入れ等も設置されていません。1人用としての基準は満たしていますが実際に被災者が快適に居住できる仕様か大いに疑問です。そもそも、1Kタイプの仮設住宅は計画すべきではありません。

【調査した移動式仮設住宅】
輪島市キリコ会館・マリンタウンの仮設住宅
輪島市キリコ会館・マリンタウンの仮設住宅
七尾市能登島の仮設住宅
七尾市能登島市民センター仮設住宅
志賀町旧JA志賀富来支店駐車場
志賀町旧JA志賀富来支店駐車場