珠洲市正院小学校仮設住宅
 今日から5月。能登半島地震から4ヶ月が経過しました。震源地となった石川県では30日現在、水道などインフラの復旧が急ピッチで進められているものの、約3780戸が今も断水しています。避難者はホテルや旅館など2次避難なども含め4604人に上っています。
 私が主宰する地方創生戦略研究所は、防災減災対策の充実のため5年前から活動を続けていますが、能登半島地震の仮設住宅の整備に関して、3度にわたり現地調査を重ねてきました。現地の地方議員、被災自治体の首長や行政担当、仮設住宅の建設業者そして被災した住民の皆さまから生の声をお伺いして、現地調査報告書をまとめました。
 国会議員を始め、茨城県内市町村の首長、防災関係者、地方議員、防災士の方々に配布しています。
志賀町仮設住宅の談話室
 今回の現地調査で、特に強調したのは2点。集会場(談話室)の整備と防災情報の伝達システムの整備です。
 4月26日、地域コミュニティーの回復へ、仮設住宅の敷地内で食事や入浴などの介護・障がい福祉サービス提供を可能とするサポート拠点の設置に対して、予備費支出が認められました。大変素晴らしい決定だと思います。しかし一歩進めて、小規模な仮設団地も含め、すべての仮設住宅に集会室または、談話室などの設置も望むところです。
 志賀町の旧JA志賀富来支店駐車場における仮設住宅団地には、トレーラーハウス2棟を並べた談話室が設置されておりました。仮設住宅は、狭小のためお客様が見えても仮設の中で対話することも出来ないため、住民の方はこの談話室を我が家の応接間のように活用されていました。トレーラーハウスがまるで喫茶店のような造りになっていることもあり、とても素晴らしい憩いの場となっていました。
 珠洲市正院小学校グランドの仮設住宅団地では、ボランティアによる「お茶の会」が開かれていました。数人のご婦人が車座になって、歓談する光景が見られました。
能登町では、プレハブ協会が建設した仮設団地(能登町藤波23−1−1)に、後付けで木造移動式住宅(ムービングハウス)の集会場を建設しました。
 集会室・談話室などの整備には、トイレ、シャワー、水回りなどが完備し、設置の容易なムービングハウスやトレーラーハウスの活用が、合理的だと考えます。
 一仮設団地一集会室・談話室の設置を早急に実現すべきだと主張します。

輪島市キリコ会館多目的広場仮設住宅
 防災情報伝達システム、見守りシステムの導入も急務です。輪島市や珠洲市の仮設住宅は海沿いに立地し、いずれも津波浸水想定区域内に位置しています。県の担当者は、「県と市で地域のコミュニティーを維持しやすい場所を探したが、他に建てられる土地がなかった。津波のリスクは両市と相談済みで、警戒や避難の体制を構築するなどソフト面で対策を講じる」と、こうした仮設住宅の立地について説明しています。しかし、現状では「ソフト面での対策」の検討は始まっていません。津波などの情報を仮設住宅の住民にいち早く伝達するシステム構築が必要です。
 3月末現在で、能登半島地震における「災害関連死」災害弔慰金申請者は、輪島市30人、能登町8人、志賀町4人、穴水町1人の43人に上っています。今後の仮設住宅入居者の中での災害関連死が増加する懸念があります。
 東日本大震災では、岩手、宮城、福島3県の仮設住宅で独り暮らしをしていて亡くなった人が341人に上りました。ほとんどが震災に伴う「孤独死」とみられています。65歳以上の高齢者が全体の約6割を占めていました。
 こうした関連死・孤独死を減少させるためには、「見守りシステム」や「緊急通報システム」の導入が必要です。ICT技術(インターネット)を活用した、利用者に使い勝手の良い、当該自治体にも負担が掛からないシステムが重要です。
 たまたま、富山市内では「見守りシステム」「緊急通報システム」の社会実験が行われていました。「クレバーメディア+マゴスピーカー」というシステムです。こうした事例を参考に、導入コストが割安で、速やかに導入できる実績があるシステムをすぐに導入すべきです。

スマホ使えない高齢者に情報を…福井市殿下地区でスピーカーシステム試験導入 緊急時は安否確認機能も 
2024年1月29日福井放送ニュース

福井市の殿下地区で去年(2023年)12月から様々な情報を音声で伝えるスピーカーが高齢者の住宅に設置されていて、29日も設置作業が進められていました。スマートフォンが使えない人でも最新の行政情報を知ることができ、緊急時の安否確認機能も備えています。(1月29日)
設置が進められているのは最新のスピーカーシステム「マゴスピーカー」。29日は70代の夫婦が住む家に市の職員らがスピーカーを設置しました。
携帯電話回線を使い、普段は地域の行事情報などが、緊急時には避難に関する情報などが音声で伝えられます。
動作試験では大音量で「福井県嶺北地方で地震が発生しました住民の方は安全な場所まで避難してください」とのメッセージが流れました。
また、安否確認の機能も備わっていて、助けが必要な場合は位置情報が自動で送信され、メッセージを録音することもできます。
人口のおよそ6割が高齢者という福井市の殿下地区。これまで情報を伝えてきた有線放送の設備が古くなり、スマートフォンなどを使いこなせない高齢者にどのように情報を伝えるかが課題となっていました。
住民は「今の有線放送よりよっぽどいい。携帯ももうほとんどわからないから使わないので、とっても簡単で安心しました」
市や自治会では去年12月から試験的に導入を始めていて、高齢者の住宅などに設置し、本格導入に向け検証を進めます。