茨城県つくば市の五十嵐立青市長は、2期目の任期満了後の退職金支給額を、市民によるインターネット投票で決定するという前例のない試みを発表しました。
この取り組みは、2024年11月に2期目の任期が終了する際に行われ、退職金の金額を市民が評価する市長の行政運営の点数に基づいて算出するものです。
■ネット投票の背景と目的
五十嵐市長は、2016年の初当選時に退職金廃止を公約に掲げ、1期目の退職金を月額給与1円として計算し、実質的に22円のみを受け取りました。しかし、この取り組みには市民から賛否両論が寄せられ、一部からは「成果を上げているなら全額受け取るべきだ」という意見もありました。このような市民の意見の分かれ方を受けて、五十嵐市長は2期目の退職金について、市民の評価を直接反映させる方法を模索し、今回のインターネット投票による決定を提案しました。
■ネット投票の仕組みと市議会との関わり
この投票は、つくば市が提供する「つくばスマートシティアプリ」を利用して行われます。15歳以上の市民で、「署名用電子証明書」の機能が付いたマイナンバーカードを持つ者が対象となり、市長の4年間の行政運営を0点から100点満点で10点刻みで評価します。その平均点に基づき、退職金の額が決定されます。0点の場合は22円、100点の場合は約2000万円となります。
ネット投票は10月27日に予定されている市長選挙後の11月1日から11日の間に実施される予定です。投票結果に基づく退職金の算出には、ブロックチェーン技術を活用して投票の改ざんを防ぎ、秘密投票の確保を図ります。
これに先立ち、市は9月の定例市議会にこの制度導入のための条例案を提出しており、可決されれば全国初の試みとなります。
■意図と期待
五十嵐市長は、この取り組みを通じて市民が自分の1票の重要性を実感し、民主主義のプロセスにより積極的に参加することを促進したいと考えています。また、インターネット投票の導入が進む中で、今回の試みがその技術と制度の信頼性を確立する一助となることも期待されています。
この試みは、単に退職金を決定するだけでなく、政治家と市民の距離を縮め、市政への関心を高める意義深い一歩となります。
ただ、提案が激戦が想定される市長選の2ヶ月前という時期に行われたことには、選挙対策との批判もあることは事実です。まずは、つくば市議会の対応が注目されます。