25022deepseek
 茨城県の大井川和彦知事は、2月19日の定例記者会見において、中国の新興企業「DeepSeek(ディープシーク)」が開発した生成AIについて、県内の業務用パソコンからのアクセスを遮断していることを明らかにしました。これは、個人情報や機密情報の漏洩リスクに対応するための措置であり、2月7日付けで実施されました。

広がる中国製AI「ディープシーク」への懸念
 「ディープシーク」の生成AIは、その高い性能が評価される一方で、個人情報を含むデータが中国国内のサーバーに保管される点が懸念されています。このため、国内外で利用を制限する動きが加速しています。すでに三重県、鳥取県、横浜市などの自治体でも同様の措置を講じており、韓国政府も外交部、国防部、産業通商資源部などの省庁でアクセスを遮断しました。また、オーストラリア、日本、台湾などでも「ディープシーク」の利用制限が進んでいます。
 さらに、「ディープシーク」はその回答が中国政府により干渉を受け、客観性に乏しいとの指摘もあります。例えば、
  • 天安門事件や香港の民主化運動に関する質問に対し、中国政府の公式見解と一致する回答しか得られない。
  • チベットやウイグルの人権問題に関しても、中国政府に配慮した内容となることが多い。
  • 一部の政治的な話題に対しては、意図的に回答を回避する傾向が見られる。
  • 日本固有の領土である尖閣諸島について、中国の主張に沿い「中国領」と回答される。

 このような事例は、「ディープシーク」が中国政府の方針に影響を受けやすいことを示唆しており、利用者が得る情報の信頼性に関しても慎重な検討が必要です。
茨城県の対応と今後の展望
 大井川知事は会見で、「我々も同じような懸念を共有しており、県職員が使用する業務用パソコン約9,000台からのアクセスを遮断した」と述べました。これにより、現在、県のシステムでは「ディープシーク」を利用することができなくなっています。
 政府機関や自治体だけでなく、企業の間でも「ディープシーク」使用の是非が問われています。韓国ではIT大手カカオが業務目的での「ディープシーク」利用を禁止し、通信大手LGユープラスも同様の措置を講じています。こうした動きは、AIの発展と同時に、データセキュリティの重要性が増していることを示しています。

AI技術の活用とリスク管理の両立が課題
 生成AIの活用は業務効率の向上や新たな価値創出につながる一方で、情報管理のリスクを伴います。韓国の行政安全部が中央省庁や地方自治体に向けて発出した通達では、「ディープシーク」に限らず、 アメリカの「OpenAI」が開発した「ChatGPT」などの生成AIについても慎重な対応を求めています。
具体的には、生成AIに個人情報を入力しないことAIが出した結果を無条件に信頼しないこと、などが指摘されており、適切な管理が求められています。
 茨城県が「ディープシーク」へのアクセスを遮断したことは、AI利用に関するセキュリティ対策の一環として評価されます。一方で、生成AIの活用自体を止めるのではなく、安全な運用ルールを整備し、リスクを最小限に抑えながら技術を活用することが求められています。