日立電鉄の存続問題で、茨城県を訪れている岡山電気軌道の礒野省吾常務は、9月14日、日立市役所と県庁を訪れました。
 「日立電鉄線を存続させる市民フォーラム」(西村ミチ江座長)のメンバーが案内して、常陸太田市に協議の再開を申し入れたことを説明するとともに、日立電鉄の経営状況の資料の提供を要望しました。これには、日立市では根本茂助役が、県では福田敬士企画課長が対応しました。
 また、県庁内でマスコミ各社の取材に応じました。なぜ岡山の鉄道会社が茨城の電鉄線存続に関心を持つのかとの質問に「市民と一緒に街づくりを進めていく、全国の地方鉄道に関してもできるだけ応援したいというのが当社の方針だ。岡山でもRACDAと一緒に街づくりをやってきた。鉄道を街づくりに生かそうという市民が純粋な思いなら、事業者として純粋にやるところがあっていい。なかなか信じてもらえないが、そういう事業者がいることを分かって欲しい。全国の地方鉄道が頑張れば、それは岡山の将来の利益にもつながるだろう」と答えました。
井手県議も岡山電軌と意見交換
 井手よしひろ県議も14日昼、県議会内で磯野常務と面会し、意見交換を行いました。
 そのなかで、「日立電鉄、日立市、常陸太田市、県の四者協議の席上、是非、岡山電軌にも参考意見を述べていただきたい」と、磯野常務に要請しました。また、岡山電軌が参入の是非を検討できるよう、必要な資料の公開を日立電鉄に求めていくことを約束しました。
読売新聞茨城県版(2004/9/14)
【ちん電】経営指標の必要性強調 岡山電軌常務 日立市、県を訪問
 日立電鉄の廃止問題で、岡山電気軌道の礒野省吾常務は十四日、日立市役所と県庁を訪れ、常陸太田市に協議再開を申し入れたことを説明するとともに、鉄道運行引き継ぎの可否を検討するためには、経営指標分析が必要不可欠との考えを重ねて示した。
 「日立電鉄線を存続させる市民フォーラム」(西村ミチ江座長)のメンバーも同席し、経営指標情報の提示や存続の可能性検討に向け、行政側も最大限努力するよう求める緊急要請書を提出した。
 礒野常務は、来県の目的について、「日立電鉄の現場と地元の存続への熱意を見るため。現時点で引き受けるかどうかは白紙だ」とした上で、鉄道運行を引き継いだ場合の従業員の労働条件や給与水準などを示すためにも、電鉄からの経営情報提供が必要との立場を説明した。一方、来年四月からの運行引き継ぎについては、「従業員を新規に全国公募する場合は、研修に十か月は必要で、四月からの引き継ぎは難しい」との見解も示した。
 これに対し、日立市の根本茂助役は「市としては現実的手法として代替バスをしっかりやっていきたいという立場は変わらない。しかし、常陸太田市と岡山電軌の協議には我々としても重大な関心を持っている」と答えた。
 県庁で応対した福田敬士企画課長は、県と国、日立、常陸太田市、日立電鉄で構成する実務者会議の場で、岡山電軌と市民フォーラムからの申し入れについて話し合うと返答した。

読売新聞茨城県版(2004/9/14)
岡山電軌常務に聞く
 岡山電気軌道の礒野省吾常務は十四日、訪問先の県庁で読売新聞などのインタビューに答え、日立電鉄の経営指標が提示されれば事業引き継ぎを検討する用意があること、地方鉄道存続には住民、行政、事業者の三位一体の取り組みが不可欠であることなどを語った。

常陸太田市に協議再開を申し入れたきっかけは。
 市民フォーラムから直接電話をいただいたが、以前から日立電鉄の廃止問題はホームページで見て関心を持っていた。岡山市のRACDA(路面電車と都市の未来を考える会)という市民団体からも紹介を受け、「ぜひ力になって日立電鉄と常陸太田市に提案をしてほしい」と熱心に依頼された。鉄道存続を願う市民の方がそこまで一生懸命なのに、企業として放っておくわけにはいかない。我々は無借金経営の実績がある。我々が経営したらこうなるという数値や方法を提案させてもらいたい。

岡山電軌が運行を引き受ける可能性はあるか。
 まだ全く白紙の状態だ。経営指標がないと具体的な検討に入れない。日立電鉄が赤字部門を切り捨てて、事業の態勢を整えたいというのも、同じ鉄道事業者としてよくわかる。あまり我々が前に出ていくのは、本意ではない。ただ、利害関係のない市民団体から熱烈な思いが伝わってくるので、何とかお手伝いできないかと思う。

電鉄線存続は難しいと思うか。
 現時点ではなかなか厳しいと思う。関係者の気持ちがちょっとバラバラのような気がする。県、日立市、常陸太田市がまとまって、市民や地元の皆さんが我々を受け入れてくれるのであれば、どんどん検討する。協議が再開できるかは常陸太田市からの返事待ちだ。

なぜ岡山の鉄道会社が茨城の電鉄線存続に関心を持つのか。
 市民と一緒に街づくりを進めていく、全国の地方鉄道に関してもできるだけ応援したいというのが当社の方針だ。岡山でもRACDAと一緒に街づくりをやってきた。鉄道を街づくりに生かそうという市民が純粋な思いなら、事業者として純粋にやるところがあっていい。なかなか信じてもらえないが、そういう事業者がいることを分かって欲しい。全国の地方鉄道が頑張れば、それは岡山の将来の利益にもつながるだろう。

地方鉄道はどこも赤字を抱えて苦しいが、存続させるには。
 事業者だけでなく、市民、行政と三位一体で取り組まないと、地方鉄道は残っていかない。「上下分離」方式にしても、よそから来て経営すればうまくいくというものではない。あくまで地元が主体となって頑張らないといけない。