5月24日、同僚の市議会議員の紹介で、企業として「さい帯血」の凍結保存を行っているステムセル研究所(東京都港区新橋)を訪問、同社の役員で慈恵医大名誉教授の大野典也先生から説明を受け、同研究所の施設を実際に視察させていただきました。
(写真は施設を案内する慈恵医大名誉教授大野典也先生)
 さい帯血は、妊婦と赤ちゃんを結ぶ「臍(へそ)の緒」の中に含まれる血液のことで、白血病や再生不良性貧血などの血液の病気の治療法として、骨髄移植と共に移植医療に使われ、多くの貴い命を救っています。
 日本では、日本さい帯血バンクネットワークが公的なバンクとして、さい帯血の分離や検査、保管を行っています。
 公的バンクでは、さい帯血を提供する人は、そのさい帯血を他の患者さんが使う事を前提としており、提供時に費用は掛りません。反面、私的バンクは、将来の自分自身や近親者の病気治療や新たな再生医療への使用を前提に、有料で長期間にわたってさい帯血を保存するものです。(ステムセル研究所は、10年間の保存で126,000円の費用が掛ります)
 私的バンクは歴史が浅く、実際に移植の実績もないために、国内では評価が定まっていないことも事実です。また、日本さい帯血バンクネットワークが、私的バンクの課題を巡って「警告書」(2002年8月23日)を公開しています。
 しかし、海外では、私的バンクの移植実績も増え、様々な研究が急速進んでいる中で、医療の一分野としてその有用性が認知されてきています。
 今回、ステムセル研究所を訪問して、大野先生よりの説明では、「さい帯血の分離や検査、凍結保存に関する同研究所の設備は、公的バンクの設備よりむしろ進んでおり、米国の最新基準をクリアしている」とのことでした。
 私的バンクは、バンク間の保管料の違いや、処理や管理方法の違い、さい帯血という遺伝子レベルでの個人情報をどのように保護して行くか、そもそも企業である以上、倒産や廃業などの経営的リスクにどう対応するか、さい帯血の売買などという倫理的な問題をどう考えるかなど、数多くの課題があります。
 こうした課題を見据えて、利用者は私的バンクの利用について、自からが判断する必要があります。
 行政機関や医療機関は、そうした利用者の判断を支援する仕組みや私的バンクの運営基準の整備などを真剣に検討する時期に入っていると実感しました。
(写真はさい帯血を凍結保存している液体窒素冷凍タンク)