利用客の減少で、売り上げが落ち込み累積赤字が増大。経営努力を重ねても今後、赤字はかさむ一方で、安全運行が困難と判断しました。同線を廃線した場合、代替えにバス運行を計画し、通勤・通学の足を確保するとしています。
日立電鉄は、1993年に164億5000万円あった売り上げは、2002年に95億3000万円まで減少し、累積赤字は約53億円に達しました。
電鉄線もマイカー普及などにより、10年間で乗客が年間約390万人から177万人に減少。乗客などの運輸収入は約6億円から3億3000万円にまで落ち込みました。人件費などのコスト低減を図ってきましたが、設備投資や固定資産税などは変わらず、ここ10年間の累積赤字は約4億円に上ります。
鉄橋や枕木などの鉄道施設の老朽化も激しく、国土交通省の指示で、安全性緊急評価を実施した結果、今後5年間の安全運行維持の設備投資は、県などの負担金を除いても、年間1億8000万円が必要とされています。売り上げが減少する中、投資負担の回収見込みは立たず、乗客を預かるには、安全な運行ができない状態にまで陥っています。
こうした結果、鉄道事業からの撤退を判断。今後、2月の取締役会で廃止届け出の議決を行い、3月にも臨時株主総会を開いて、日立電鉄線廃止を報告。3月末までに国交省に届け出する予定です。
●地域住民や利用者は廃止反対署名運動を展開
一方、廃止にむけて既定の路線を進める会社側に対して、利用者や地域住民は不満を募らせています。
電鉄線沿線の住民は、通勤通学になくてはならない日立電鉄の唐突な廃止計画に反対し、署名運動を展開しています。特に、大沼駅や水木駅を抱える「大沼町コミュニティー推進委員会」では、1.国、県、市などとの連携のもと、鉄道部門存続に向けての真剣な取り組みを行うこと。2.地域住民や利用者に対して説明責任を十分に果たし、積極的な情報公開に努めること。3.万一の廃止にあっては、代替えの公共交通機関の確保を責任を持って行うこと。の3点を会社側に求める署名を集めています。
1月30日には、地域住民だけではなく、広く電鉄利用客にも賛同を得るために、大沼駅頭などでの署名活動を計画しています。
地域住民にとって、この地域がバスなどの公共交通機関がほとんどないため、電鉄線の廃止の影響は甚大で、お年寄りなどの交通弱者にとっては、病院、福祉施設への通院や日常品の買い物などに支障をきたし、死活問題になると言っても過言ではありません。利用者や住民の声を無視した廃線の議論は、厳に慎むべきです。
反対署名の趣旨文
日立電鉄は、日立市鮎川町と常陸太田市山下町を結ぶ地域住民の足として、通勤や通学に欠くことのできない交通機関として永らく親しまれてきました。
しかし、昨年十月二三日に、平成十七年三月をめどに、廃止する方向で関係機関と話し合いたい、との見解が貴社より示されました。
貴社の説明によると、鉄道部門は昭和三年の開業以来、単体ではほとんど利益を計上したことがありませんでした。安全に対する設備投資が過大で、合理化や効率化にも限度があり、他部門の収益で、鉄道部門の赤字をカバーしてきました。現状では、年間売り上げ三億円の内、二億円程度が設備改善に必要とされています。昨年度は、経常損益で八千万円の赤字を計上し、今年度は上半期で五千万円の赤字となっています。県や国などから設備近代化の補助金を一億円強受けていますが、輸送の安全を確保するのが、財務的に限界にきているとされています。このため、平成十七年三月をもって、鉄道部門を廃止することが具体的に検討されているものです。
貴社の厳しい経営状態は理解できるものの、一年間に百七十七万人以上が電鉄線を利用し、特に、朝夕の通勤通学については、正になくてはならない交通機関です。また、当地区のように、バスなどの公共交通機関がほとんど無い地域において、お年寄りなどの交通弱者にとっては、病院、福祉施設への通院や日常品の買い物などに支障をきたし、死活問題になると言っても過言ではありません。
このような現状に鑑み、私どもは、多くの地域住民の署名を添えて、以下の要望をいたします。貴職にありましては、要望の主旨をご理解いただき、適切なご対応を何卒よろしくお願い申しあげます。
要 望 事 項
- 国、県、市などとの連携のもと、鉄道部門存続に向けての真剣な取り組みを行うこと。
- 地域住民や利用者に対して説明責任を十分に果たし、積極的な情報公開に努めること。
- 万一の廃止にあっては、代替えの公共交通機関の確保を責任を持って行うこと。
日立電鉄株式会社 取締役社長 松場 卓爾 殿